第七十話 冬休み最終日①
明日からいよいよ新学期。
休み中の宿題はジェラルド様やノア様に分からない所を教えてもらいながら何とか終えることが出来た。
休み限定のノア様とモリス先生の家庭教師も終了した。でも、モリス先生には異世界のこと等も相談したいので、週末に不定期で家庭教師を続けてもらうことになった。
お母様とメイは、私がお父様にモリス先生の授業は続けてほしいと懇願しているのを見て、ノア様よりモリス先生の方が好きだったのね!と揶揄ってきたりした…。お父様も口には出さなかったけれど、何やら同じようなことを思っているようだった…。
…どこからどう見たら私がモリス先生を慕っているように見えるの!?怖がっているようにしか見えないでしょう!?
そんな噂の彼が、明日から新学期が始まり、会う機会も減るので、今日の午後に私の様子を見に来られるらしい。先生は多分得体の知れない私を監視する為に来られるだけなのだけど、両親始め、執事や侍女達は何か勘違いしているようだ…。
…皆の生ぬるい視線を感じる…。
昼食後に部屋で寛いでいると、モリス先生が来邸された。いつもの応接室に案内する。
今日はお話するだけと思っていたのだけど、ご丁寧にまとめの筆記テストまで持参されていた。
…げっ!?…何てこと…!?
不意打ちのテストに動揺している私を見て、モリス先生は楽しそうな満足気な表情をされていた。
…先生って、やっぱり意地悪よね…。
休み中に頑張った甲斐があって、テストは88点だった。
…まずまずの点数で良かった…!
間違えた所を復習してから、書店での出来事や、夢の話を先生に相談した。
先生は私が書店で買った本を手に取り、眺めておられる。
「私には何も書かれていないように見えるが、本当に読めるのか?」
「はい、読めます。『異世界探訪記』と書かれていて、内容は日記のようです。新任教師だった男性が目覚めると、自分が読んでいた小説に登場するいじめられっ子のライアンという少年に転生していたところから始っています。彼が苦労して、この世界でも教師になった過程が書かれています。彼はこの世界で結婚して子も儲けているようですが、元の世界に帰れたかどうかは分かりませんでした…。」
「……そうか。それでその本が置いてあった書店の主人は君と話したそうにしていたんだな?」
「……はい。悪い人には見えませんでしたが、怖くて本が読めないと嘘をついてしまいました…。」
「それでは、その書店に今から一緒に行ってみようではないか。」
「…………へ?!今からですか?!」
「そうだ。街へ行く服装にすぐ着替えなさい。私も用意してくる。」
そう言うと、先生は転移魔法でサッと姿を消してしまわれた。
驚いて、暫くぽかーんとしてしまったが、ハッと気づき、「メイー!!メイー!!」と慌てて侍女のメイを呼んだ。
読んで下さって、ありがとうございました!