第五十三話 冬休み⑥王立図書館
今日は予定が無かったので、護衛のルーカスとイライジャと共に王立図書館へやって来た。
図書館は四階建でかなり広い。一階は小説や雑誌が数多く揃えてあり、カフェも併設されていて明るい雰囲気だ。
「わぁ!素敵なところね!私、しばらくここにいたいから、貴方達も好きな本を読んで好きに過ごしてもらってもいいわよ?」
「いえ。私達はお嬢様の護衛ですので側は離れません。」
…この親子…真面目なんだから…。…一人で探したいのに…。
…まぁ、いいわ。
…転生に関するものだから、魔術系の所にあるかしら…?
「…魔術系の本はどこにあるかしら…?」
「魔術系の本でしたら三階フロアにあります。お嬢様は魔術のお勉強をされるのですね。」
ルーカスはにこにこと微笑んでいる。
「詳しいのね。よく来るの?」
「はい。私は読書が好きなんです。」
ルーカスは体格がかなり良いので、筋トレが趣味で読書なんて興味がないのかと思っていたけど、人は見かけによらないのね…。
「イライジャも読書が好きなの?」
「私も読書は好きです。最近は侍女のメイに勧められて恋愛小説も読んでいます……。」
顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに『恋愛小説』と言う強面の大男を見て、吹き出しそうになった。
でも二人とも物静かで落ち着いているので読書も似合わなくはないわね。
三階フロアに行くと、モリス先生のような重厚な黒マントを羽織った魔導士らしき人達や、学者風の方々が沢山おられ、一階の雰囲気とはかなり異なっていた。
…転生…転生…。
…禁呪法…。
…見つからない…。
かれこれ二時間以上探しているが全く見つからない……。
「お嬢様はどのような魔術書をお探しなんですか?」
「あっ?!いや…あの…この間モリス先生から私の魔力が歪と言われたので、変わった魔力とかあるのかなぁと思って…。」
…これ位言ってもいいよね?!
「…それなら、四階にあるかもしれませんね…。しかし四階は魔法省からの入出許可証がいるのです。許可証が出るのに数日はかかりますから今日は諦めるしかありませんね…。」
…重要な本は許可証がいるのね…。
「そうですか…残念です。それじゃあ、せっかくなのでカフェでお茶して帰りましょう!」
私達は一階のカフェに向かった。
途中、思いがけない……というかあまり出会いたくない人物に出会ってしまった。
「ビアンカ嬢、ご機嫌麗しゅう存じます。」
そこには、重厚なマントを羽織り、もの凄く整った顔で微笑むモリス先生がいた。
…げっ!!
…しかも先生笑っている…怖っ!
「ご機嫌麗しゅう…先生…。」
「今日はどうなされたのですか?」
「あっ、いえ…少し調べ物に…。」
しどろもどろになりながら答える。すると横からルーカスが、
「お嬢様は魔術書を探しに来られたのですが四階フロアに入れず、また日を改めようとしていた次第でございます。」
…!?ちょっとルーカス!よけいなこと言わなくていいから!!
「……ほぅ……四階に……。」
先生から射抜くような視線が浴びせられる。
……もう無理……耐えられない……!
「それでは先生……。」
そそくさと帰ろうとした際、先生が口を挟まれた。
「私と二人なら入れます。護衛の方には暫く待っていてもらわねばなりませんが、それでも宜しければ行かれますか?」
…先生と二人で…?!
「どうですか?」
にやりと笑みを浮かべられる先生。
…怖いんですけどっ!?
「許可を取るには魔法省だけでなく王宮にも出向かねばなりません。そして許可がおりるまでには何日もかかるでしょうね。」
…そんなぁ…。
…先生はお父様が信頼を寄せている方…。きっと大丈夫よね…?もし異世界人ってバレても殺されないよね?!だって私何も悪いことしてないもの!!
「……先生……宜しくお願いします……。」
読んで下さりありがとうございました。