第四十九話 冬休み③殿下が公爵邸へ来られた!
「お嬢様、そんなに待ち遠しいのですか?」
窓の外を見ながらソワソワしている私の姿を見て、侍女のメイがイライラした様子で聞いてくる。
今日はジェラルド様が公爵邸へ来られるのだ。毎日会っていたのが、休みに入り会えなくなって妙に寂しかった。……というか、冬休み中に勉強も頑張りたいので、分かりやすく教えてくれるジェラルド様に会えないのはかなりの痛手だった。
「お嬢様の命を守って下さったのは感謝していますが、あんなひどい婚約破棄をされた方ですので私はまだ受け入れられないです……。」
メイは複雑な胸中のようだ。
その時、公爵邸の前に豪奢な馬車が到着した。
「……来られた!」
私は急いで玄関へと向かった。
「お嬢様!?走らないで下さい!」
護衛とともに公爵邸に入られた殿下を母とともに迎えた。久しぶりに会った殿下は相変わらず王族のオーラを放ち、美しかった。
「お招きいただきありがとうございます。」
……眩しいっ!
ジェラルド様の美しい笑顔に皆一瞬見惚れてしまった。この間の登山の際に命がけで私を守ってくれたことから、私を含め、両親、使用人達の印象が最悪なものから好印象へと変わっていた。
「ジェラルド様、こちらへどうぞ。」
私は応接室へと案内した。公爵邸の応接室は庭側がガラス張りになっており、明るく、美しい花々がよく見える。
「久し振りに来ましたが、変わらず美しいですね。」
「いえ、王宮にはかないませんわ。」
……転生してからまだ一度も王宮に行ったことはないけど、豪華だろうな……。ビアンカはきっと頻繁に行っていただろうな……。
「また王宮にも来てほしい。ビアンカが気に入っていたバラ園も変わらず綺麗だよ。」
美しいバラ園!?見てみたいけど、王宮なんて中身庶民の私には敷居が高すぎるわ。無理無理!
「…………はい。また機会があれば……。」
「ビアンカならいつでも大歓迎だから、休暇中に遊びに来てほしい。」
…え?休暇中に?それは遠慮したいわー。
「………………はい。また行かせて頂きます。……………ジェラルド様、私分からない問題があって、ジェラルド様を待っていたんです。これなんですが……。」
「分からない問題はどこ?」
話を逸らしてしまったのに、ジェラルド様は嫌な顔一つせず、質問を聞いて下さり、教えて下さった。
…やっぱり分かりやすいわ!
ジェラルド様の簡潔明瞭な説明に感心していた時、
「お嬢様、ご主人様がお帰りになりました。」
「え?!お父様?」
…こんなに早くに帰られることはなかったのに、ジェラルド様がいらっしゃるからかしら?
私達が勉強しているところへお父様が来られた。
「殿下、我が家へようこそおいで下さいました。ここへ来られるのは久し振りですね。登山の際は娘を救って下さり、ありがとうございました。再度お礼を言わせて頂きます。……ところで、2人は勉強していたのですか?」
「はい。殿下に勉強を教えて頂いていたんです。」
「………殿下に家庭教師みたいなことをしていただいていたのか?」
お父様の表情が険しくなった。
「殿下は公務もあるし、お忙しいんだよ。家庭教師が必要ならこちらで用立てするから、殿下にそのようなことを頼むのはやめなさい。」
……確かにそうね。一国の王子様を家庭教師みたいに扱っていたわ……。
「宰相閣下、私からお嬢様を誘ったのです。一緒に勉強したいのです。どうか続けさせて下さい。」
「……殿下。殿下はこのようなことに割く時間はありません。今は大事な時です。特に長期休暇中は公務に専念して頂きたい。ビアンカは家庭教師をつけます。」
「それでは週に一度でいいのでお嬢様と会う時間を下さい。ビアンカ、ビアンカはどう思う?」
ジェラルド様は必死に懇願されている。
……私は…別にどちらでもいいけど……。
「私は…殿下がお忙しいのであれば無理には……。」
「宰相閣下!?今まで以上に公務を頑張りますので、お嬢様と会える時間を与えて下さい!」
「………………ビアンカはどうなんだ?殿下にお会いしたいのか?」
「…………私はどちらでも………………。」
「ビアンカ!?今度は珍しいお菓子を持ってくるから!学習の要点もまとめてくるから!」
私の言葉を遮り、ジェラルド様が必死に訴えてきた。
…珍しいお菓子?!学習の要点?!それは魅力的だわ……。
「お父様、私も殿下に会いたいです。」
「………………うむ。そうか………。それなら週に一回会いなさい。そのかわり殿下は公務に、ビアンカは勉強に励むように。それにしても、随分と仲良くなったのだな?」
…確かに。あんなこと(婚約破棄)されたのに許すなんておかしいよね?!でも実際婚約破棄はされたけど、それは転生前の本物のビアンカが体験したことであって、私は助けられた体験しかしていないから今一つジェラルド様を憎めないのよね……。
……でも再婚約だけは無理……。良いお友達でいたいわ……。
「はい。良いお友達になりました。」
笑顔でお父様にはっきり『お友達』と伝える私を、ジェラルド様は複雑な表情で見つめられていた。
その後、皆でお茶を飲み、他愛のない話をして楽しい時間を過ごした。
そして別れ際、ジェラルド様に登山で助けて頂いたお礼をお渡しした。白いハンカチに王家の紋章にも使われている百合の花を金と銀の糸で刺繍したものをお渡しした。刺繍は転生前から時々していた為、割と得意でもある。
「これ、ビアンカが作ってくれたの?」
「はい。お礼が遅くなり申し訳ありません。心を込めて作らせて頂きました。気に入って頂けるか……。」
「凄く嬉しいよ!大切にする。ありがとう!」
そう言ってジェラルド様はハンカチを大事そうに胸にしまわれた。
…喜んでもらえて良かった!
読んで下さり、ありがとうございました!




