第四十三話 勉強会にて
翌日、登園するとラグエル様と殿下も来られていた。
「あのオールの湿布と、オールの煎じ薬がよく効いて、入院しなくてもよくなったんだ。」
「顔の傷もあと少しで消えそうだろう?」
二人とも笑顔で元気そうだ。
アラン様も先生方も元気そうだが、マーガレット様が見当たらない?
「マーガレット様はどうされたんですか?」
「ああ、マーガレットは男爵家に帰っているので休みだよ。試験には戻ってくるだろう?」
冒険した後なので休息は必要よね?私も今日は休みなさいと何度も言われたもの……。
「あっ、そうだ!ラグエル様、試験までは医務室の仕事を免除して頂いたんです!またご迷惑でなかったら一緒に勉強して頂けませんか?」
「そうなんだ!良かったね。勿論いいよ!今日の放課後、図書室へ行こう!」
ラグエル様は笑顔で了承して下さった。
「君達そんなことしていたの?!勉強会なら、僕も混ぜてよ?」
「えっ?!殿下も?!」
明らかに嫌な顔をされるラグエル様。
殿下は私に近付き、私の両手を握って、
「ビアンカ?僕はトップを目指している。試験に出そうな重要なところも把握しているから、役に立つと思うよ?」
ものすごく魅力的なことを言われた。
「殿下…!よろしくお願いします!!」
「チッ…………………!」
不服そうに舌打ちするラグエル様と、得意気にふふんと笑われている殿下。優秀な二人に囲まれて勉強出来るなんて嬉しいわ!
「そうだ!アラン様にも声をかけなくちゃ!」
「「………は?!!アランまで来るの?!」」
二人が同時に叫ばれた直後、新たにもう一人参加希望者が現れた。
「私もご一緒させて下さいませ!」
ラグエル様に恋するミッシェル・クライム様だった。
今回の勉強会は大勢になってしまったわ。大丈夫かしら……?
※ ※ ※ ※ ※
放課後、図書室の一角に集まった。
私の隣に殿下とアラン様が座り、正面にはラグエル様とミッシェル様が座られた。
ミッシェル様は始終ラグエル様の顔を見ておられるが、勉強は大丈夫なのだろうか……?
「ビアンカ?こことここは暗記して、この部分は何度か計算練習して慣れておく方がいいね。」
いつもはラグエル様に付きっきりで教えてもらっているのだが、今日は殿下が主に教えて下さっている。
……何これ?!殿下の教え方驚く程分かりやすいんですけど…?!
さすが文武両道の完璧人間だわ!私のペースに合わせて下さるし、説明が簡潔明瞭で分かりやすい!
殿下が家庭教師して下さっているみたいで、何だか贅沢だ。
その時ふと、真剣に文字を追われている殿下の横顔が目にとまった。
殿下の側に座って、横顔をまじまじ見るの初めてだけど、この方本当に綺麗な顔をしているわ…。金髪のサラサラした髪から覗く瞳はスカイブルーで、顔のパーツ全てが精巧に整っていて…。シャツから覗く腕は程よく筋肉がついて力強そうだし、今顔に少し残っている傷も何だかギャップがあるというか、ワイルドさも加わったというか……。登山してから殿下の責任感のあるところや、優しいところも知れて、初めと随分印象が変わってしまったわ…。
じっと横顔に見惚れていると、殿下が気付いてこちらを見つめ、「どうかした?」と尋ねて来られた。
「いえ…何でもありません。傷が早く治るといいですね……。」
「…………………………………。」
暫く何も言わず、見つめ合ってしまった。
「……こんな傷、どうでもいいよ。それよりビアンカの可愛い顔に傷がつかなくて良かった…。」
そう言うと殿下は私の左頬にそっと手を当て、何か言いたげな表情をされた。
その時、
「待った!!殿下何をしていらっしゃるんですか?脱線しています!そろそろ席替えを…………。」
とラグエル様が声をあげたところで、ミッシェル様が言葉を遮り、
「ラグエル様はまだここにいて下さいまし!私まだ分からないところがありますのよ?!」
と、ラグエル様の腕を掴まれた…否、絡ませた?
何だか喪女の私は見てはいけないような光景だわ…!?恥ずかしいっ!?
私は両手で顔を隠しながらも、隙間からその光景をしっかり見てしまった。
読んで下さり、ありがとうございました!