第四十二話 お父様との会話
「ビアンカ、気になる殿方が出来たのは本当か?」
夕食の席でお父様が尋ねてきた。
……やっぱりきた……!
「いいえ、そのような方はいませんわ!今回とても素敵な騎士様に護衛して頂いたので、ほんの少しだけ戸惑ってしまって、それをお母様とメイに揶揄われただけですわ!」
そう言いながらメイを睨んだ。メイはそそくさと陰に隠れてしまった。
「……ほう。……素敵な騎士様とはヘンリー副団長のことかな?」
父は至極真剣に聞いてくる。
……そんなこと真剣に聞いてくるのやめて下さい。……よけいに恥ずかしいです……。
「はい。とても素敵な方でした。」
「ヘンリー副団長は実力もさることながら、あの容姿だ。かなり人気があるぞ。隣国の王女殿下も気に入られているご様子だ。」
……隣国の王女殿下!?さすが……。
「…………………………………………。」
……あの、お父様……?勝ち目のない、可哀そうな子を哀れむような目で私を見るのはやめて下さいませんか…?
そこでお母様が口を挟まれる。
「ねぇ、ビアンカ?メイがもう一方言っていなかったかしら?褐色の肌の活発そうな方……。」
……あっ!それはノア様………!
…ノア様…あの甘すぎる告白をして下さった……。
「…………………………………。」
「まあ!ビアンカ!顔が真っ赤よ?!」
お母様は私の様子に初め驚かれたが、その後両手を口に当てて笑いを堪える仕草をされた。
…お母様!?やっぱり揶揄っていらっしゃるわね?!
「褐色の肌の活発な……?……ああ、もしかしてノア・ウォルトマンか?あれはまだ二年目だが、かなり優秀だぞ?ライバルが増えない内に婚約を打診しておくか?」
……………………は?!
婚約なんて考えられないわ?!まだ一度しか会ったことがなくて、好きかどうかなんて分からないし……。それに私、喪女な上に異世界から来たのよ?!この世界にいつまでいれるか分からないし……。
「お父様、ノア様は確かに素敵な方ですが、私自身がまだ婚約は考えられません…。」
「………やはりそうか……。」
王子殿下と婚約破棄して間もないしな……と、残念なような?嬉しいような?何とも言えない表情をされていた。
試験が終わったら、私自身の転生についても調べてみよう!王立図書館なら何か分かるかしら?!何だか中途半端で、どう生活したらいいか分かりませんもの……!
「……ところでジェラルド王子殿下とはどうなんだ?今回、一緒に行ったんだろう?顔に少し怪我をされていたが、すぐに跡も残らず消えるだろうと言われていたが…?」
「……あの傷は私を庇って出来たものなんです。一時は意識も無くなられていました。でも殿下は私を責めたりせず、反対に私を気遣ってくれるばかりで……とてもお優しい方だと知りました。あと、ラグエル様も私を庇って下さって、胸に大怪我をされました。彼も私を責めたりせず、私を心配して下さっています。治癒魔法と薬草で治られましたが、もし治らなかったらと思うと…怖くて仕方ありません…。私は皆様の足手纏いでしかなく、迷惑をかけてばかりでした……。」
お父様は私の話をじっと聞いて下さっていた。
「……そうか……ビアンカを庇って……。二人には礼をしないといけないな……。……あの王子もなかなかやるじゃないか!」
「騎士様も私を抱き抱えて歩いて下さったり……。今回、本当に体力や魔法力が無いことを痛感いたしました。これからは精進してまいりたいと思っております。」
肩を落としながら言う私に、お母様は「女の子なんだからそんなに無理しなくても……。」と言われ、お父様は「思うように頑張ってみなさい。」と励まして下さった。
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