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第三十八話 喪女に愛の告白は耐えられません



 「やっと下山出来た!」


 「今回は本当に大変だったな!」


 順調に下山し、夕方前に麓の村に到着することが出来た。ここで休憩と食事をとり、その後、学園へ戻る予定だ。


 この村は山脈の麓にある為、朝晩の寒暖差が激しく、厳しい気候だ。しかし、その分山の恩恵も受け林業や農業も盛んだ。登山客の為の宿には食堂もあり、かなり美味しいと評判で、食堂目当てに来る客も後をたたない。王都に比べ人々は素朴で、長閑な雰囲気にはとても癒される。


 騎士様達は預けていた愛馬と再会し、背中を撫でたり話しかけたりされている。


 「立派な馬ですね!」


 白馬の背を撫でておられるヘンリー様に声を掛けた。


 「綺麗だろう?私の相棒の『アン』だ。」


 アンはヘンリー様の顔を何度も擦り上げている。


 …女の子なのね。美しいヘンリー様の愛馬が白馬…似合いすぎる…。


 「ビアンカ様、ヘンリー様は疲れていらっしゃるのよ?あまりベタベタするのは良くないわ。」


 マーガレット様がすかさず割って入られた。


 …マーガレット様ったら、完全にヘンリー様に夢中ね…。ヘンリー様もお疲れなんだから、マーガレット様こそ遠慮されたらいいのに……!


 「マーガレット様こそ、ヘンリー様から離れて差し上げたら如何かしら?私達は先生方のところへ戻りましょう?」


 「私はヘンリー様の側にいます。ビアンカ様だけお戻りになって!」


 マーガレット様の勝気な表情が妙に腹立たしい…。あんなに殿下に纏わりついておられたのに、何なのかしら?


 ヘンリー様を挟んで二人で言い合っていると、


 「…ヘンリー副団長はやっぱり人気がありますね…。」


 何故か寂しそうなノア様がやって来られた。食事が出来たので呼びに来て下さったらしい。

 

 「さあ、戻って食事にしようか!」


 ヘンリー様に促され、私達は宿へ向かって歩き出した。マーガレット様は相変わらずヘンリー様に引っ付いておられる。……暑くないのかしら?


 私は少し元気のないノア様と並んで歩いた。


 「ノア様も馬を連れてきていらっしゃいますか?」


 「はい。会って下さいますか?」


 「はい!是非!」


 私達は食堂へ行く前にノア様の馬舎へ寄った。


 俺の馬はこの草を食んでいる子です。まだ若いけど、賢い牡馬です。『ナイトハルト』という名前です。」


 ノア様の馬は艶のある黒毛の牡馬だった。草を懸命に食べており、時折ノア様に向かってヒヒン!と快活に鳴いてみせる。


 「ノア様に似て、活発そうな子ですね!」


 ノア様は「そうかな?」と恥ずかしそうに笑われた。その笑顔がとても素敵で、思わず見入ってしまった。

 

 「………………………………………………。」


 「……ビアンカ様はヘンリー副団長のような落ち着いた男性がお好きなんですね?」


 ……………………へっ?!


 「……ヘンリー様は確かに素敵ですよね……。」


 ……何だろう……?


 「……俺はどうですか?ビアンカ様から見て、俺は男として魅力はないですか?やっぱりヘンリー副団長には敵いませんか?」


 ノア様は真剣な眼差しで私を見つめられる。


 …………………!?


 「……ノア様もとても素敵だと思います……。」


 ……恥ずかしくて語尾が小さくなってしまった……。


 「本当に?!」


 ノア様は私の両肩をガシッと掴んで、「本当に?!」と何度も聞かれる。


 私は勢いに押されながら、コクリと頷いた。


 「それじゃあ、俺にもチャンスはあるよね?」


 ……………………!?


 「……俺はビアンカ様に一目惚れした。」


 ………………………!?


 …………なっ、何てド直球な…………!!


 「あの……私まだ好きとか嫌いとかよく分かりません……。ごめんなさい……。」


 もう中身は十分大人だけど、喪女過ぎて好きとか嫌いとか本当に分からないっ……!!!


 「……………………………………………。」


 「……そう…。それじゃあ、俺は君にとって魅力的な男性になれるよう努力する。君が俺しか考えられないよう、君の心の中を俺で一杯にしてみせるよ……。」


 ノア様は私をぎゅっと抱きしめて、決意のような言葉を言われた。


 ……甘さ過剰で倒れそう……。


 「……………………………………………。」


 ………?何か、すーっと吸い込むような音がする……?


 ……!?またノア様が私の匂いをかいでる!?



 と、そこへ怒鳴り声が聞こえてきた。


 「コラ!変態!!」


 「なかなか戻ってこないと思ったら!!離れろ!!」


 バシッ!!バシッ!!


 ラグエル様と殿下が急いで駆け寄り、ノア様を叩かれる。


 遅れてヘンリー様と騎士様達も来られ、ノア様は袋叩きにされた……。


 そしてそのまま騎士様達に連行されて食堂へ……。


 ……ノア様、大丈夫かしら……?


 「ビアンカ様、ノア様に変なことされませんでしたか?大丈夫でしたか?」


 「……はい。何もされていませんわ。」


 そう言う私は絶対顔が赤いはず…!?


 「……そう、それならいいけど…。」


 「俺達も食堂へ行こう。お腹すいたー!」


 私達は走って食堂へ向かった。


 ……ノア様……これからノア様の顔、恥ずかしくてまともに見れそうにないわ………。


 


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