第三十五話 またやってしまいました……
湿布を貼り終えた後、二人の側でごろんと横になった。元々庶民だから何も気にならないけど、生まれながらの令嬢だったら、こんなはしたないことできないだろうなぁ…………。
かなり疲れていたので、横になった途端、睡魔が襲ってきた。そしてそのまま深い眠りについた…………………。
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…………………………………………………………!?
目を開けると、ラグエル様と殿下のドアップが……!?
「わぁ!!」
慌てて飛び起きた。
「……ビアンカ様の寝顔、可愛すぎ………。」とラグエル様が赤い顔で手を口に当てている。
「無防備な姿で寝て……駄目だよ。もっと気をつけないと…。でも、もう少し見ていたかったなぁ。」と残念そうな顔をされている殿下。
…私、また皆に寝顔見られてた………!?
…恥ずかしいっ!!…また口開いていなかったかし
ら……?!
……あれ?……二人とも体大丈夫なの………?!
「傷の具合はいかかですか?」
二人を上から下まで見ながら尋ねた。
?何だかとても元気そう…………?
「それが、痛みが無くなったんだよ!?先生の治癒魔法や、アランの湿布、それからこのオールの群生地で休んでいたこと等が功を奏したのかなぁ?」
ラグエル様は体を大きく動かして見せて下さる。
「僕の顔も見てくれるかい?まだ少し跡が残るけど、殆ど良くなってるだろう?」
殿下は顔を近付けて嬉しそうに見せて下さった。
もう暫くアラン様の湿布を続ければ完全に傷跡が消えそうだわ…!
「すごい!!すごい!!本当に良かった……!」
私は感極まって声を出して泣いてしまった。
このまま、二人が良くならなかったらどうしよう……殿下の顔の傷が残ってしまったらどうしよう……不安で一杯だったが、二人の元気な姿を見て、憂いが一瞬で歓喜へと変わった。
止めどなく流れる涙を二人は優しく手で拭ってくれた。
「……ビアンカ………。」
「………ビアンカ様…………。」
そして、私をそっと抱きしめてくれた……。
二人の吐息と体温に包まれると、とても安心した。
もう二度とあんな思いしたくない……。
そこへ、オールの採取を終えた皆が戻って来られた。
「ビアンカ、やっと起きたか!もう10時だぞ?」と、呆れたように言われるダグラス先生。
「えっ?!もう10時?!」
「またお口をポカンと開けていらっしゃいましたよ。可愛かったです。」と笑われるアラン様。
……やっぱり……口開いていたのね……。
「男に囲まれたところで何の躊躇もせず大の字で寝るなんて……やっぱり将来大物になるかもな!」と苦笑いする先生方と騎士様方。
「…………………………………………。」
……もう、これ以上は何も言わないで…倒れそう…。先程までの殿下達との感動の場面はどこへ……?
と、そこへとどめの一言が降り注ぐ。
「ビアンカ様?!あなたどういうおつもり?!私達皆で薬草採取しておりましたのよ?!あなただけずるいですわ!?」
……あのマーガレット様にまで言われるとは……。
……何で私こんなに寝てしまうんだろう……!?情けないわ………。
ドン底に沈み込んでいると、ヘンリー様が歩み寄って来られた。
「……大丈夫ですよ。マーガレット様も木陰で休んでおられただけです。貴方は女性ですから、休まれて当然です。気になさらないで下さい。」
耳元で優しく声をかけて下さった。
そしてヘンリー様は優しく微笑み、片目をまばたかれた。
ーーズッキューーーン!!!
……また、大人の色気にやられた………!!
……耳元で囁かれ、美しいお顔でウインクされてしまった………!!
私は胸を手で抑え、呼吸を整えた。
殿下やラグエル様も「ビアンカは僕達の看護をしてくれていたんだ。気にしなくていいよ。大体、御令嬢が山にいるだけで凄いことなんだから!」と、励ましてくれた。
……何て優しいの?!
じーんと感動していると、そこへイル先生の号令が響き渡った。
「さあ!そろそろ下山するぞ!暗くなる前に麓の村につきたい。急ぐぞ!」