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第二話 初めての登園



 目が覚めると、自室のベッドに寝かされていた。

 母親と侍女、白衣を着た白髪混じりの赤髪の男性に囲まれている。


 「魔力は乱れていますが、精神的なものだと思われます。血圧も安定しましたし、血液検査も異常はありません。徐々に回復するでしょう。」と、男性が話す。おそらく公爵家の医師だろう。


 「ビアンカ、大丈夫?」


 母親は目に涙を溜めて私の手を両手で握りしめている。


 どうやら私は馬車の中で気を失い、登園せずに自宅へ戻ったらしい。


 「…はい…ご心配をおかけしました。」


 「今朝から様子がおかしいと思っていたのよ…。やっぱり昨日、あんなことがあったものね…。昨日は『絶対、殿下を取り返してみせる!』なんて意気込んでいたけど…。」


 「…………………………………。」


 どうやら今日は殿下に婚約破棄を言い渡された翌日だということが分かった。ということは私は今、学園に来て半年たった頃で15歳。これから令嬢への嫌がらせを過激化する時ね…。


 でもどうして私がこの小説の公爵令嬢になっているの?!小説を読み終えた後、アランはどうなった?とか、話を変えたいとか色々思いながら眠ってしまったけど…。


 それでこの世界に来てしまったの?


 もしかして、リアルな感じで体験しながらシナリオを変えろっていうの??


 大体、処刑される令嬢になるなんて、怖すぎるんですけど…。

 それにリアル過ぎて元の世界に帰れる気がしないんですけど…。


 ーー私はこれからどうしたらいいの?



※ ※ ※ ※ ※

 


 あれから、5日間も部屋に籠っている。

 母親は退学したらいいと言ってくれているが、父親は公爵家の娘である為、学園は卒業してほしい思いがあるようだ。


 ……それと、全く元の世界に戻れる気配はない…。

 

 ストーリーを変えることが出来たら元の世界に戻れる?

 それとも一生このまま?!


 逃げてばかりじゃ何にも解決しない。


 自分自身ビアンカもアラン様も救うことも出来ない。


 取り敢えず、行動を起こさねば。


 嫌がらせをしなければ、そしてあの恐ろしい禁呪法さえしなければ、処刑まではされないだろう…と思う(国外追放はあるかもだけど)


 勇気を出して


 学園へ行こう!そして最悪のシナリオを回避しよう!

   

 決心し、両親に伝えた。母親は心配していたが、父親は喜んでいた。

 

 2日間で入学説明書や教科書を一通り読み込んだ。

 難しいけれど、毎日予習・復習をすれば何とかなるかも。


 そして、8日目に私は侍女達に支度をしてもらい、学園へ行くことになった。


 只、支度は奇抜ではなく、ナチュラルにとお願いした。


 あの攻撃力半端ない姿はマイナスしかないしね…。


 侍女達はとても喜び、いつもよりやる気満々で支度をしてくれた。


 そして出来上がった私は、絶世の美少女だった。


 艶やかなロングストレートの金髪。吸い込まれそうな緑の瞳に長い睫毛。小さな鼻と愛らしい唇。整った容姿を引きたてるよう薄化粧が施されている。華奢な体に、白い肌。儚く、庇護欲を唆るような姿だった。


 ビアンカって、とんでもない美人だわ!!


 侍女達は「お嬢様、本当にお綺麗です!」と喜んでいた。良い仕事をしたと満足気でもあった。


 ダイニングへ行くと、既に席についていた両親が目を丸くして驚いた。そして、今まで見た中で一番の笑顔を見せてくれた。


 「…まあ…まあ…ビアンカ…。本当に似合っているわ。」


 「ビアンカ!頑張るんだよ!」


 2人は席を立ち、私の元へ駆け寄り、手を握りながら「綺麗だ」「似合っている」「無理するなよ」等と何度も褒めたり、労ったりしてくれた。側にいる侍女達や執事も目を細めている。


 やっぱり皆、あの悪魔のような外見は嫌だったのね。

 それに、婚約破棄されてから初めての登園に気を遣ってくれているんだわ。


 いつもより和やかな朝食を終え、登園する為に馬車へと乗り込んだ。以前は無表情だった御者や護衛達が微笑んで、温かくエスコートしてくれた。学園へ行くのは不安と恐怖で一杯だが、両親をはじめ、使用人達の温かさに触れ、胸が熱くなっていた。


 「さあ、行って来ます!」


 気合いを入れる為に大きな声を出した。

 

 「ビアンカ、はしたないですよ。」と直ぐさま母に嗜められた。母は笑いを堪えていた。「はい、気を付けます。」と笑顔で返事した。



読んで下さりありがとうございました。

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