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青葉峠の六地蔵!  作者: 境陽月
お地蔵様、都会へ行く
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六地蔵様、揃い踏み!

二人の部下が歪んだ笑みを浮かべて地面を蹴り突進してきました。

対する六平太たちは互いの錫杖を交差させ通せんぼしています。

ですが、そんなものではおそらくは空手有段者であろう護衛の攻撃を防げるはずがありません。

そう考えて加奈は叫びます。


「危ない、二人とも!どいて……」

シャン!


激突寸前の両者の間に棒状の何かが投げ込まれてきました。

護衛二人組みは慌てて飛び下がり、加奈も一旦構えを解いて激突は避けられました。

投げ込まれたのは一本の錫杖、六平太たちが持つのと同じものでした。


「やれやれじゃあ、いきなり暴力沙汰とはいかんのぉ」

「しかも双方やる気満々、全然正当防衛になっとりませんなあ」


錫杖の飛んできた方に顔を向けると、そこには子供と見紛うほど小柄な人物が二名。


「あ、壱乃じーちゃん!五助!」


六平太の声に老人と小太りな男が手を振っています。

錫杖は五助と呼ばれた男が投げたようです。


「チッ、余計な奴がしゃしゃりでやがって。しかも二人も」


悪態をつく社長は内ポケットから携帯電話を取り出しました。

増援でも呼ぶつもりなのでしょう。


「おい、俺だ。大至急、若ぇモンを二十人ばかりまわ……あ?ありゃ?」


確かに握っていたはずの携帯電話がありません。

手の中から消えてしまったのです。

その時、後ろから声をかけてきたものがいました。


「お探し物はこれですか?」

「だ、誰だ!」


驚いて振り返った社長は怒鳴りました。

いつのまに忍び寄ったやら、別の小柄な男が二人不機嫌な目で社長を見上げておりました。

携帯電話はその一人、僧侶姿の男がストラップをつまんで社長の目の前にぶら下げておりました。

反射的に携帯を奪い返そうとした社長の手を作業服姿のもう一人がピシャリと錫杖で打ち据えました。


「三蔵に四郎も助けにきてくれたんか?」


六平太の嬉しそうな声に僧侶姿の三蔵は微笑み、作業服姿の四郎は怒っているみたいにそっぽを向きました。


「やあ、六平太。ちゃんとお留守番してましたか」

「ケッ、助けにきたわけじゃねえぞ」


依然殺気立つ地上げ屋たちと食堂の看板娘を、緊張感のまるでない六人が囲むように立っていました。

看板娘の親たちは構えこそ勇ましいものの固まっちゃってるし、カッコつけの翔一君はアスファルトの上でノビたまんまです。

誰もがどう動いたものか迷っている間に、六人の最年長とおぼしき爺さん、壱乃がヒョコヒョコと社長に近づいてきました。


「あんたが親分さんかね?」

「お、親分だぁ?社長といえよ、このジジイ」

「そりゃすまんかったの。ま、とにかく今日はこれでお引きなされ」

「ジジイ、俺に命令する気……」

「いやいや、そんなつもりは。ただ、ほれ。ようく見なされ」


両手を広げる壱乃の背後に人だかり、騒ぎを聞きつけて隣近所のお店や商店街の外から集まってきた野次馬で結構騒ぎが大きくなっていました。


「これ以上騒ぎになるのはあんたにとってもよくないと思うんじゃがな?」

「…………チッ!」


社長は黙って悔しそうな顔をすると、車に乗り込みました。

部下二人も後に続きながら悔し紛れに加奈に脅しをきかせようとしましたが、逆にアカンベされて顔を怒りで真っ赤にしながら黙って乗り込みました。


「おらおら、邪魔だ。どけどけ、貧乏人ども!」

「やかましい、二度と商店街の敷居をまたぐな!」


取り囲むギャラリーを押しのけてリムジンは走り去り、加奈は持ち出してきた塩を走り去る車に投げつけていました。

残された見物人たちも『今日の見世物は迫力あったな』などとお喋りしながら散っていきました。


「ところでねぇ、加奈さんとやら」

「ん、なに?おばあちゃん」

「これ、どうしようかねえ?」


不二バアが指差すこれ、路上に大の字になって気絶しているカッコつけ男、翔一はまだ目を覚ます様子がありませんでした。

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