CP8 アルス=スレインの場合
CP8 アルス=スレインの場合
俺の名前は山田尊。今年で49歳のでぇベテラン中年だ。
ああ、異世界転生して、悪役令嬢とつるみてぇ。
自分で言うのもなんだが、かなりのこじらせ具合のいい歳をした中二病だ。
つける薬なぞ、ある訳ない。あったら、とっくにまともな人生を送っているだろう。
ふん、人にはそれぞれ生き方がある。なので、こんな生き方も悪くない俺はそう思っている。
しかし異世界という素晴らしい場所があるなら是非とも行ってみたい。
ウハウハでチートな人生の第二幕を送ってみたい。
なーんて、俺は阿保か・・・。
布団に潜り込み、俺は目を閉じる。
明日も変り映えのない平凡な毎日に備えて。
現実の毎日を送るんだ。
「おはよう、起きて」
俺は眠い身体を起こし、声のする方を見る。
ちょっとだけ世界が変わったように感じた。
俺の新しいはじまりがはじまる。
おわりのはじまりの前に、もしかして・・・BLを期待した皆!
俺は女性が好きなノーマルなオールドタイプの人間さ、ニュータイプにはなれない、オールドなおじさんさ、でも多少は興味があるかもしれない・・・いや、ないかもしれない。
という訳で、この世界を選んだ俺とアルス編のスタートだ。
「おはよう起きて、あ・な・た」
ぱふっ、ぱふっ。
顔面に至高の柔らかさが、のしかかる。
尊はそのマシュマロおっぱいに頬擦りをする。
「おはようサマンサ」
尊は妻に挨拶をした。
「おはよう、あなた」
サマンサが濃厚なチューをしてくる。
尊は初代?ぱふぱふ娘サマンサと結婚し、夫婦となっている。
二人の仲はいたって良好だ。
魔王を倒した激闘から、早、10年の月日が経っていた。
そんなある日の夜、メルダールの町に闇に蠢く二つの影があった。
尊とアルスである。
半年に一回だけの二人の秘密。
それは、ぱふぱふを堪能し、それを肴にお酒を酌み交わす事だ。
今日は7代目となるぱふぱふ娘の披露日となっていた。
これは見逃せない。
期待に胸を膨らませる二人。
「なぁ、アルス、今日はどんな出会い(おっぱい)が待っているんだろうな」
「兄貴!そりゃ、もう、げしょげしょですぜ」
今のアルスに勇者の威厳は微塵もない。
わくわくしながら二人は長蛇の列に並ぶ。
そして、ついにその時は訪れた。
見れば男装の麗人だった。
尊は麗人を目の前にして固まる。
「げっ!男」
「ためしてみるかい」
ぱふっ、ぱふっ、ぱふっ。
「と思ったら、天国っ!」
2分後、アルスも天に召された。
二人は肩を組み、なじみの酒場へ行く。
入るなり、店のおかみが渋い顔をしていた。
ほどなくして、バケツに強烈な度数の濁り酒がテーブルに置かれる。
「今日は、早急にフィニッシュしろというのか」
尊は憮然とする。
「兄貴にこんな酒を飲まそうッて言うのかッ!」
アルスはチンピラ風の柄の悪さになっている。
おかみはクイッと顎を向ける。
尊とアルスは視線の先に凍り付く。
酒場内の奥のテーブルで、ローラ、アリス、マルスの勇者家族、それにサマンサと愛息尊大が仲良くパスタを食べていたのだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人は顔を見合わせる。
「・・・つけられていたか」
「どうする?兄貴」
「まずいな」
「ああ」
「バッくれようか」
「どのみち捕まる」
「だな」
「兄貴」
互いに頷くと、二人は即座に両家族へ土下座した。
しばし沈黙があり、突然ローラがカラカラと笑う。
「二人ともいいのよ。たまにハメを外すぐらい。でも、ちゃんと行先は言ってよね。突然、二人がいないから心配だからってアリスが二人を探そうってね」
「ねって・・・お母さんが言ったんでしょ」
アリスは苦笑いをする。
「そうだ」
マルスが同調する。
「あなたも好きね」
と、サマンサは笑う。
「お父さんは、やっぱりお父さんだ」
なぜか、誇らしげに言う尊大。
尊とアルスは顔を見合わせて笑った。
そう、今日も尊家族も勇者家族も元気なのです。
「こんな話でいいの!」
アルスは思わず叫んだ。
いいんですっ!
今回はアルスです。
コミカルに描いてみました、ローラ編が申し訳なかったので。
尊と勇者アルスの関係性は、こんな感じで続いていくと思っとります。
それでは、次回もよろしくお願いします。