CP10 大団円
俺の名前は山田尊。今年で44歳のでぇベテラン中年だ。
ああ、異世界転生して、悪役令嬢とつるみてぇ。
自分で言うのもなんだが、かなりのこじらせ具合のいい歳をした中二病だ。
つける薬なぞ、ある訳ない。あったら、とっくにまともな人生を送っているだろう。
ふん、人にはそれぞれ生き方がある。なので、こんな生き方も悪くない俺はそう思っている。
それだけで十分だ。でも、足りない。満たされない。むくりともたげる負の感情、俺はつい溜息をついた。
読み終わったラノベ「異世界召喚されたら、そこは悪役令嬢のハレムだった。~勇者俺様!皆の者、ひざまづけ!チートな俺のハッピーライフ♡」を枕の横に置いた。
ベッドに身を投げ横たわる。
なにが異世界だ。悪役令嬢だ。ハレムだ。勇者だ。チートだ!
俺が知る現実世界には何一つないものだ。
人はないものに憧れる。
ふと、頭に浮かんだ。
異世界転生してみてぇ。
でも転生の王道は、一度この世界で死ぬもんな。
そこのところは、俺は古い人間なので納得出来ない。
死んだら終わりだろ。次なんてあるはずがない。そう思ってしまう。
しかし異世界という素晴らしい場所があるなら是非とも行ってみたい。
ウハウハでチートな人生の第二幕を送ってみたい。
なーんて、俺は阿保か・・・。
布団に潜り込み、俺は目を閉じる。
明日も変り映えのない平凡な毎日に備えて。
現実の毎日を送るんだ。
「おはよう、起きて!」
女性たちの声がする。
俺は眠い身体を起こし、声のした方を見た。
ちょっとだけ世界が変わったように感じた。
俺の新しいはじまりがはじまる。
魔王、マドーを倒した、二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者たち。
みんなはこの平和の訪れたメルギルドの地に残ることを選んだ。
そんなある日、カフェパレスの五周年を祝し、あの伝説のイベント「第二回タイムサービス+乙女王決定戦」が開催されようとしていた。
パレス前には、一時間も前からお客の長蛇の列が並び、さながらドラクエ3の発売日のようだった。
興奮冷めやらぬ男達に混じって、わずかだが熱烈な女性ファンの姿も見られる。
ローランドの城下町はかつてないほど活気づき、便乗商法や非公認グッズを販売するなど、異様な盛りあがりを見せていた。
宴が開始された。
タキシード君が、自慢の蝶ネクタイを調整する。
整った。
パチンと指を慣らす。
スポットライトが当たる。
「レディースアンドジェントルマン、ボーイミーツガール。大変お待たせいたしました。これより、第二回、タイムサービスあーんど!乙女王決定戦を開催いたします」
ええ声のアナウンスに、お客は拳をあげ雄叫びをあげる。
「エントリー№1、私、成長しました今、蕾が花開く時、アリスさんの登場です!」
アリスは魔法学校の制服を着て登場する。
周りの一部は見慣れている姿とあって、えーという感じがあったが、
「だって、恥ずかしいんだからね」
の、アリスの一言で、
「うぉー」
と、男どもの雄叫びがあがった。
「続きまして、我がローランドが誇る美しき花、そして走る暴走機関車、ローラ様だっ!」
ローラは白いドレスに白い翼をつけ、女神の恰好で現れる。
老人が叫ぶ。
「ワシを天へ連れて行っておくれ」
ローラはばきゅん(銃を打つまね)ポーズを決める。
老人は卒倒した。
「わが、カフェパレスに咲く向日葵、黄河の登場だっ!」
「へへっ」
黄河は沖南高校のブレザー姿で登場する。
一人のオタクが何度も頷き、
「うん、アリアリのありだな」
と、呟く。
「さあ、こちらはパレスに咲くスミレ蕉蝉だぁい!」
蕉蝉は顔を真っ赤にしながら、青いビキニ水着で登場する。
男達は色めきだち、歓喜の涙を流す者まであらわれる。
「これっこれっ!」
「よっ、四番。マーメイドクィーン」
「すれんだあ、ドリームクラブっ!」
「中花に咲くブルーラフレシア!」
何人かの親衛隊らしき男達が、ボディビル会場さながらに例え合戦を繰り広げる。
「おまたせいたしました。第一回のなんちゃって覇者、パレスが誇る桃の花、花々さんの入場です。チェキュウ!」
花々はピンクのパジャマ姿で、ごろごろと前転をしながら登場してきた。
度肝を抜かれるお客たち。
「おいっ、よく見ろ!」
「あっ、あれは!」
「前回は赤ちゃん・・・ま、まっ、さか!」
「そう、あれは卵じゃ」
先程まで卒倒していた老人が、自慢のあごひげを撫でながら遠い目をして言った。
「・・・えー、気を取り直して、東方より朗報来る!十六夜さんっ!」
十六夜は丈の短い、スカートを恥ずかしそうに抑えながら、ナース姿で登場した。
眼鏡の女性が手を振っている。
「定番、だがそれがいい!」
十六夜らぶの鉢巻きをした女性も頷き、同調する。
「この荒廃した世界に舞い降りた一人の天使也、実に乙」
「さぁ、七人美女の大トリを飾るのはヤマタイの女王、壱与さん、ここに女王再び降臨すっ!」
壱与は久しぶりに女王の巫女衣装に身を包んだ。
「もえー」
男が鼻血を出し、搬送される。
「たまんねっす」
一方、男の号泣が止まらない。
ついに審査へと入る。
熱気冷めやらぬステージ上で、みんなは結果を待ち固唾を飲む。
お客は手に汗を握る。
タキシード君に封筒が手渡される。
(ん?)
タキシード君は首を傾げる。
「えー、おまたせいたしました。では、栄えある№1は!た・け・る!タ・ケ・ル!カフェパレスのオーナー尊ですう!」
お客は唖然とする。
マハラジャの衣装を身に着け颯爽と尊は、みんなの前に進み出る。
尊は手招きをして、アルスを呼ぶ。
アルスは恥ずかしそうにステージにあがる。
みんなが揃い、アリスは、すーっと息を吸い込むと、
「せーの!」
「二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者の物語ありがとう!」
みんなは揃えて言う。
笑顔が広がった。
ありがとう。
おしまい
ありがとう本編一万PV達成。(この作品は本年度のホラー作品に掲載しています)
俺の名前は山田尊。今年で44歳のでぇベテラン中年だ。
ああ、異世界転生して、悪役令嬢とつるみてぇ。
自分で言うのもなんだが、かなりのこじらせ具合の中二病だ。
つける薬なぞ、ある訳ない。あったら、とっくにまともな人生を送っているだろう。
ふん、人にはそれぞれ生き方がある。こんな生き方も悪くない俺は知っている。
それだけで十分だ。でも、足りない。満たされない。むくりともたげる負の感情。
俺は読みかけのラノベ「異世界召喚されたら、そこは悪役令嬢のハレムだった。~勇
様!皆の者、ひざまづけ!チートな俺のハッピーライフ♡」を枕の横に置いた。
ベッドに身を投げ横たわる。
なにが異世界だ。悪役令嬢だ。ハレムだ。勇者だ。チートだ!
俺が知る現実世界には何一つないものだ。
人はないものに憧れる。
ふと、頭にそんなフレーズが浮かんだ。
異世界転生してみてぇ。
でも転生の王道は、一度この世界で死ぬもんな。
そこのところは、俺は古い人間なのか納得出来ない。死んだら終わりだろ。次なんてある
はずがない。そう思ってしまう。
しかし異世界という素晴らしい場所があるなら是非とも行ってみたい。
ウハウハでチートな人生の第二幕を送ってみたい。
なーんて、俺は阿保か・・・。
布団に潜り込み、俺は目を閉じる。
明日も変り映えのない平凡な毎日に備えて。
現実の毎日を送る。
のはずだった・・・。
待ってくれ、俺はまだ眠たいんだ。
まだ起きたくない・・・あとPVで一万突破だ?知るか!
これを書く頃には、達成していて本当はPV一万回突破ありがとうの番外編するはずだっ
たって・・・じゃあ、あとちょっと待てばいいじゃないか・・・えっ、作者が待つことが出
来ない?知らねぇよ。
あいつマルチエンディング編で、これにて完結なんちゃらって言っていたよな・・・よく、
舌の根も乾かない内に番外編なんて考えついたな、一万回ありがとうがしたい?はっ、まだ
足らないだろう、達成してないだろう・・・・・・えっ、ここから興味を持った方に読んで
もらって達成するって・・・・ほんとまわりくどい奴だなぁ。
でも、そういうの嫌いじゃないぜ。
そうか、しゃあねぇなあ、じゃあ、俺たちの出番だな。
でも、これホーラ―だろ・・・俺、苦手なんだよな。
これは沖縄を舞台にした物語である。
登場人物
山田尊・・・44歳独身。沖南高校の歴史科教師。
山田十六夜・・・21歳。尊の妹、女子大生。
山田壱与・・・17歳。沖南高校三年生、黄河の親友。
知念黄河・・・17歳。沖南高校三年生、壱与の親友。
花々・・・29歳。タピオカドリンク店長。
蕉蝉・・・22歳。タピオカドリンク店員。
アルス=スレイン・・・32歳。尊と気が合う。自称フランスから来た謎の外国人。
地元糸満で喫茶「パレス」を経営している。
ローラ=スレイン・・・31歳。アルスの妻。
アリス=スレイン・・・9歳。沖南小学四年生。
二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者のおまけ物語
「にいにい起きて」
十六夜の元気な声がする、それから階段をのぼる音が聞こえ、
「ほら、壱与も起きて」
妹を起こす声がする。
尊は半身を起こし、頭をかいた後、腹をかく。
「早くしないと、遅刻しちゃうわよ」
二人は寝ぼけ眼をこすりながら、朝食をとる。
尊は新聞に目を通す。
「ちょっと、にいにいやめてよ。食べながら新聞見るの」
「朝の情報は、きっちり仕入れないと」
「ったく」
「ふわー」
壱与は欠伸をする。
「壱与、口、口動かしなさい」
「ふわあい」
「ったく」
「にいにい!箸止まってる」
尊は、十六夜のお説教を手で制し、新聞の記事をじっと読む。
「ゆいレールで数々の怪事件起こる」
記事内容を目で追いながら、アーサ汁に手を伸ばす。
お椀がつるっとすべって中身をぶちまける。
「こらっ!」
十六夜はおかんむりだ。
尊は肩をすくめ、新聞をおりたたみ、こぼれた汁をふきんで拭いた。
CP1 かつて世界を救った者たち
尊は軽自動車のタントを家の前までまわす。
大きな欠伸をしながら、壱与は助手席に乗り込むんだ。
「んじゃ、いってきます」
尊は窓を開け、軽く手をあげる。
「いってきます」
壱与は、目を閉じたまま、背を深く椅子にもたせ、またひと眠りしようとしている。
「はい、いってらっしゃい」
十六夜は兄と妹を見送る。
車は小さなクラクションを一つ鳴らし、走り出す。
彼女は大きく伸びをし、家に戻る。
今日の大学の講義は午後からなので、スマホ片手に優雅に朝寝としゃれ込んだ。
車は学校へと進む。
「おい、壱与、目さませ」
「ふあい」
「お前、朝までゲームし過ぎだ。今年、受験だってのに・・・」
「は~あ、前は女王で試験なんかなかったもん」
「それは言わない約束、郷に入ったら郷に従えだ」
「うー」
「ほい、ここで降りろ」
「えー別にいいじゃん。兄妹で登校しても」
「・・・なにかと学校受けがよくないし世間体がある。それに一般の思春期の女の子ならば、
普通は嫌がるんだけどな」
「うちは普通じゃありません」
「まあな、とにかく降りた、降りた」
「ほーい」
いつものように人通りの少ない道の脇に車が止められると、壱与は渋々降りる。
「じゃあな、お姫様」
「おっす、ひめっち」
後ろから声がした。
クラスメイトの知念黄河が、手をあげてやって来る。
「あっ、こーちゃん」
壱与は振り返り、にこりと笑う。
「おっす、たけっち」
「・・・たけっちじゃないだろ。先生だろ」
「そうだった。たけっち」
黄河はニヤニヤと笑っている。
「ったく・・・じゃ、二人とも後でな」
「ああ」
「じゃね」
二人は手を振り、尊は片手を上げると車を走らせた。
十六夜は目を覚ますと、学校へ行く準備をする。
11時に友人の暁守里が彼氏翁長由利の運転する車
で迎えに来る。
3人は瀬長島のウミカジテラスで、講義の開始時間まで暇をつぶすことにした。
振り返ると、そこには青い海と広がる空がある。
開放感のあるこの場所で、おしゃれなお店を見て回った後、三人は行きつけのタピオカド
リンク屋でお茶をする。
店の扉を開けると、空調が利いていて涼しい、店内はいつものように盛況だ。
「あっ、いざちゃん、いらっしゃーい」
顔なじみの店長花々が厨房から顔を覗かせる。
「花さん、今日もよろしく~」
「ゆっくりしていってね」
「はい」
店員の蕉蝉がカウンターへやって来る。
「注文は?」
無表情で三人に尋ねる。
「私、ミルクティー」
と、十六夜。
「私も」
守里。
「俺はマンゴータピオカとサンドイッチで」
と、由利。
「あいよー、花さん、ミルク2、マン1、サンド1」
「はい」
蕉蝉も厨房へ消えて行った。
ほどなくして、カウンターに戻ってきた彼女は、無造作にドリンクとサンドイッチを置い
た。
「相変わらず無愛想ね。蕉蝉さん」
十六夜はトレイにドリンクを入れながら言う。
「悪かったわね」
腕組みをして言う蕉蝉に十六夜は肩をすくめる。
「いえ」
三人は、テラスにでて、海を見ながらドリンクを飲んだ。
「いらっしゃい」
アルスの声がする。
店の中は閑散としている。
「相変わらず繁盛してないなぁ」
尊はカウンター端のマイ席に腰を掛ける。
「悪かったな、タケ」
「マスター冷コー」
「あいよ。ママお願い」
「はーい」
奥からローラがやって来る。
「あらっ、タケいらっしゃい」
「いらっしゃいました」
「ふふふ」
「ママ、ちょっとアリス迎えに行ってくる」
アルスは尊にウィンクをすると、カウンターを出る。
「はーい」
背中越しにローラは言う。
カランコロンとカウベルが鳴る。
「どうした?」
「最近、物騒でしょ。念の為よ。アリスを小学校までお迎えに」
ローラは尊の目前にアイスコーヒーを置く。
「ああ、ゆいレールの」
グラスが汗をかいている。
氷が溶け、グラスが鳴いた。
「そう」
ローラはゆっくりと頷いた。
尊はストローで、コーヒーをかき混ぜた。
CP2 迫る影
アリスは友達と別れ歩きだした。
ここから先は自宅の喫茶店まで、およそ徒歩五分一人で帰る。
アリスは自ら秘密の道と称した狭い路地を駆けだす。
建物との間が、子どもの身体やっと通れるぐらいのすれすれの所を潜り抜け、
狭い道に出た。
「おじょうちゃん」
背後で声がする。
アリスが振り返ると、黒マントを着た男が立っていた。
「あなた誰?」
「おじちゃんかい、おじちゃんは、ただの変態それとも怪人どっちに見える?」
「こっちが聞いているんですけど」
「正解は・・・へ」
アリスは黒マントが台詞を言い切って、マントをはいでストリートキングになる前に、懐に飛び込み、彼の無抵抗な股間を蹴りつけた。
ジャストフィットアタック、アリスは黒マントのスティックを折った事を確信した。
「ぐふふふ」
普通の男子ならば、のたうち回るほどの衝撃の蹴りをお見舞いしたはずだが、黒マントが平然としていて、どことなく気持ちよさそうにしているのにアリスは悪寒を覚えた。
「正解は・・・変態・・・ではなくホントに怪人でした」
怪人黒マントはマントを広げる。
黒マントは大きく広がり、アリスを覆った。
彼女は目を覆う。
変態ではないと言ったのに、彼のマントの下は全裸だったのだ。
「おじょうちゃん、二人っきりだね」
マントに覆われた世界は、どこまでも広がる薄暗い闇だった。
「しょうがないなー」
アリスはランドセル(天使のリュック)を降ろすと、がさごそと中を漁る。
全く動じず驚かない、小学生に怪人は唖然とする。
「あった、あった」
アリスはマジックハンドを取り出す。
「よーし、おしおきすっからね」
アリスの目が光った。
「おじょうちゃんは、いったい・・・」
「私?私はただの勇者だよ!せーのっ!」
アリスはマジックハンドを振りかぶる。
その時、
「アルスブレイク!」
アルスは黒マントを覇者の剣で切り裂いた。
闇の世界が切り裂かれ、元に戻る。
黒マント喉元に、アルスは剣をつきつける。
「アリス、無事だったか」
「おしおきするところだったのに」
「無事で良かった。さて、変態」
「私は変態ではない!怪人黒マント!」
「よく、そんな姿で言えるな。生まれたての子豚のような、よくそんな素○ンで、よくもそんな〇かむりで、人前で晒しているのにもかかわらず、上クリ(上野クリニック)にもいかずに、のうののうといけしゃあしゃあと・・・」
「うわーん」
アリスはマジックハンドを巨大化させ、泣きじゃくる黒マントを捕まえた。
「お父さん、この人どうしよう」
「この変態怪人に聞きたい事がある」
「じゃあ、家に連れて帰る?」
「ああ、おい変態怪人、お前に聞きたい事がある。正直に吐いた方が身の為だぞ」
「・・・ごっ、拷問するのか・・・」
怪人は嬉しそうにアルスを見つめている。
「とんだ変態ヤローだ」
「アリス」
「ほい」
アリスは、マジックハンドを怪人ごとリュックに詰め背負った。
二人は手をつないで、家路につく。
喫茶パレスにて。
ローラの鞭がしなりをあげる。
「とっとと吐いた方が身の為だよ」
「ああ、女王様」
怪人は恍惚の表情を浮かべる。
「一体、なんだこれ?SMショーか・・・嫌いじゃないけど」
尊は呆れかえっている。
「最近、沖縄で起こる不思議な怪事件、お前達の仕業か」
「あ・ぁ・あ・ぁ・ああああ」
怪人は興奮しまくっている。
「吐け!」
ビシッ!
「もっと」
ビシッ!
「そこっ!」
ぴたっ、ローラは鞭打ちを止める。
「あーなんでやめるの。分かった言うから、言うからもっとしてっ!」
「なんだこいつ」
尊は呆れかえっている。
「アリス、いい子だから、マルスと一緒に二階に行っていなさい」
アルスは子供たちに退出を促す。
「はーい」
「じゃあ、答えてもらおうか」
アルスが本題に入る。
「いやん、女王様がいいっ」
「・・・ローラお願い」
エンジンがかかってきたローラは、怪人の薄い髪の毛を掴むと、引っ張り上げ顔を近づける。
「早く、言いな。そしたら、もっと気持ちよくしてやる。このみじめなオス豚っがっ!」
「おお」
尊とアルスは彼女の迫真の演技にぞくっと震える。
怪人は観念しつつも、目を輝かせ、
「今日は満月の夜。俺たちの王がゆいレールに乗って現れる」
「なんだとっ!」
「もっと、おねがいしまっス!」
「うるさい!」
ローラのグリーンガムの鞭が火を吹く。
CP3 出陣
「確か、ここだったな」
尊はバールを持ち、畳の一部分を指さす。
巫女姿に着替えた十六夜と壱与は頷いた。
「まさか、こんな日が来るとは」
十六夜は呟く。
「そう・・・ね」
畳をバールであけ、床板をずらすと、尊はスコップに持ち替え床下の土を掘り進める。
カツンと物が当たる音がする。
それから丁寧に掘り進めると、土師器の壺が現れた。
新聞紙の上に、壺を置きそっと中身を取り出す。
そこには鏡、勾玉、折れて柄だけの剣が入っていた。
尊は剣を持つ。
十六夜は勾玉を。
壱与は鏡を持った。
しばらくして、
「ごめん、ごめん、遅くなった」
黄河が方天画戟を背中に背負ってやって来た。
「ひと暴れしようぜ」
にかっと笑う。
「ああ、さぁ、行こう」
四人はレンタカーのハイエースに乗り込み、喫茶パレスへ仲間を迎えに行く。
「やっぱり、しっくりくるな」
アルスは鎧兜に身を固め、鏡を見た。
「そうね、アルス素敵だわ」
ローラはグリーンガムの鞭をしならせる。
「そう?」
アルスは恐々と照れる。
「お母さん、この服、もう、ちんちくりんだよ」
「そうね、アリスは育ち盛りだもんね。ちょっとだけ我慢しよう」
当時の装備に身を固めるのは、成長期のアリスにはサイズが合わなくなっている。
母は微笑みながら、寝息を静かにたてているマルスの頭を優しく撫でた。
喫茶パレスの前を車が停まった。
三人の顔が引き締まる。
「来たぞ。さぁ、いくか」
アルスの言葉に二人は頷いた。
「さぁ、いくわよ」
タピオカ店長花々は、レオタード姿となり、愛車カブ号にまたがっている。
「花様、本当にそんな恰好で行くんですか。どうして急に」
蕉蝉は顔を赤らめて言う。
だが、自分はくノ一姿となってる。
「蕉蝉、これはキャッツアイよ、キャッツ」
「はぁ」
「早く乗って、行くわよ。魔物退治」
二人は夜の闇を裂き、カブ号で合流場所を目指す。
集結の場は、ゆいレール旭橋駅。
深まる夜の10時30分、ゆいレール旭橋駅に尊達は到着した。
ほどなく蕉蝉、花々も合流する。
「あっ、そうだとっておきの魔法、使わなくちゃ」
アリスはそう言うと、究極魔法を発動する。
「マジック、タイムストップ(時よ止まれ)」
「なっ、本編作にも出てない魔法を、ここで使うなんて、どうかしてるぜ」
尊は茶々を入れる。
「アリスは成長しているの」
アリスはべーと舌を出して返す。
「タケ、周りに気づかれたら」
ローラがフォローを入れる。
「そうだな」
「これで思いっきり、やれるってことだな」
黄河は久しぶりの戦いに、胸を躍らせる。
「あの、花さん、その恰好・・・」
壱与は、彼女の姿を見て驚く。
「セクシーでしょ」
花々はまんざらでない顔をした。
「目のやり場に困る」
ローラの殺気を感じ、アルスは顔をそむけた。
「私の花様をいやらしい目で見ないで」
蕉蝉は、花々の前に立ちレオタード姿を隠す。
「アルスさん顔、そむけてるよ」
十六夜は、ぼそりと言う。
時を止めた世界は静謐だった。
駅の周辺は、外灯があるものの薄暗い。
魔物や物の怪の気配は感じられない。
「壱与、頼む」
「はい」
尊の言葉に頷くと、彼女は鏡を掲げる。
「鏡よ。魔を映しだせ」
鏡から光が発せられると、闇に潜む無数の怪しい瞳が、尊達を睨んでいた。
尊は念じた。
すると、右手に天ノ草薙剣が現れる。
敵の群れに剣を掲げる。
「みんな行くぞ!」
「おう!」
「はい!」
尊達は魔を討つべく、駆けだした。
CP4 魔を討て
闇に蠢く魔物たちは、次々に尊達に襲いかかる。
先制攻撃を仕掛けるのは、黄河、
「必殺!爆砕、方天画戟!」
「また、本編に出てないやつ!」
尊はツッコミを入れる。
「アルス、ファイナル、クラッシャー」
アルスは新奥義を発動する。
「なんだよっ!クラッシャー(壊し屋)って」
尊はネーミングにクレームを入れた。
蕉蝉は駆けだし、高く舞い上がると、手裏剣を放つ。
「春夏秋冬、手裏剣散華!」
「おーい」
アリスも負けじと、新技を披露する。
「アリス、ミラクルアタック!」
「・・・・・・」
尊は開いた口が塞がらない。
「いくわよ、女王様の恍惚のレクイエム、ローリングストーム!」
ローラは魔物たちを鞭でしばきあげる。
「あ、あ・・・」
花々はレオタードの胸元からトランプカードを取り出した。
が、慌てて落とし、拾い上げ、てへぺろした後、カードを投げる。
「キャッツ、ジャンピングカード投げ!」
「やめれー!花々、お前は原型留めてない」
「えーと、勾玉の力、解放の段、一の癒し」
十六夜は、勾玉の力を発動し、皆を回復させる。
「君たちは、技言うキャラじゃなかったよね・・・しかもえーとって考えただろう。今!」
「うつせ鏡、見せよ姿を、闇に彷徨う魔の主よ、ここに示せ!全写真鏡力、写ルンです!」
「古っ、しかもとってつけたような・・・」
「・・・・・・」
みんながじっと尊を見ている。
欲しがっているのだ・・・みんなは繋がりを。
そう実は彼もまんざらではない・・・みんなと同じだった。
(分かったよ。俺だってその気がなかった訳じゃないんだぜ)
「魂の剣現れる時、正は邪を打ち砕く!真之天ノ草薙剣!」
みんなの力により、魔物たちのほとんどが消滅する。
「イマイチだな」
アルスが言った。
「クラッシャーが言うな」
「見えました!」
壱与は叫んだ。
鏡は光を発し、行く手を照らす。
みんなは襲いかかる魔物を倒しながら、階段を駆け上り改札を抜ける。
深夜のレールに飛び出す、ひた走る。
光の先に魔の主がいる。
「あれっ!」
花々が指さす先に、営業時間外にもかかわらず列車が走っていた。
よく見ると、古く寂れた列車に、魔の元凶がいた。
「やっちゃいますか」
壱与は鏡片を掲げる。
「はい。姫様」
十六夜は勾玉を両手の平に持ち祈る。
「ほい、きた」
尊は天ノ草薙剣に願いを込める。
「いくぞ!」
アルス、アリス、ローラ、黄河、蕉蝉、花々が、三人の増幅された力に合わせ、力の限り攻撃する。
これも、9人の力を結集させた新技。
「超、必殺トライアングル、アルティメットアタック!」
光の一撃が、魔の主を闇列車を跡形もなく消し去った。
ゆいレールに沖縄に、世界に光が戻った。
9人の新たな戦いは幕を閉じ、平穏な日々がまた訪れる。
二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者のおまけ物語、ここに堂々、完結する。
~エピローグ~反省会という会でなろうを叫んだオジサン
書き手こと作者、山本大介は何者かに黒アイマスクをつけられ、とある駅の待合室へと連れて来られた。
作者は何者かの気配を感じた。
「アイマスクを取って」
男の声に大介は、マスクを外す。
「お前たちは・・・」
そこには、9人の二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者がいた。
大介・・・いったい、何の真似だ。
尊・・・なんで、ここに呼ばれたのか分からないのか?
大介・・・全く(分からん)。
アルス・・・ほう。
大介・・・一体、何がいいたいんだ?
黄河・・・こいつは、お笑いだ。
花々・・・なにも分かってないのですね。
蕉蝉・・・しょーもない男。
十六夜・・・かわいそうな人。
壱与・・・まったくです。
アリス・・・アリスもわかるのに。
ローラ・・・アリス・・・。
尊・・・じゃあ、阿保な作者に順を追って話そう。
大介・・・ああ、教えてくれ。
アルス・・・結局、この作品ってホラーだったか?
大介・・・(・・・・・・)
ローラ・・・読み手はホラーを求めているの。わかる?あなたは、ホラー作品に投稿しているの。
大介・・・そうだけど。
花々・・・正直に言うと、このお話がはじまってから、あまり読み手のみなさんがみてくれてないわ。
蕉蝉・・・サイテー。
アルス・・・いい加減、分かるだろ?
大介・・・求められていなかった・・・。
壱与・・・そういうことです。
アリス・・・アリス、すぐにわかったよ。
ローラ・・・アリス・・・。
尊・・・読み手の方は、ホラーを求めている。お前は目先の本編一万PVが欲しくて、見境なしに書いてしまった・・・。
大介・・・それは、喜んで欲しくて。
黄河・・・はっ!自己満だろ。それって。
蕉蝉・・・まったくですわ。
ローラ・・・あなたはこの作品で犯してしまった。利己的で打算、安易な考えで、私達を出してしまった。
壱与・・・その結果がこれ。
大介・・・ああああああ。
アルス・・・しかも、これR15だろ。俺たちって枠なかったよな・・・どうなんだ、これって?
尊・・・結果・・・読み手のみなさん。俺たち、そしてお前まで裏切ってしまっているんじゃないか。
大介・・・ううううううう・・・俺は・・・俺はなんてことを・・・。
尊・・・お前の気持ちはよく分かる・・・分かるがお前は立派なおじさんだろ。分別つけろよ。考えろ。
尊・・・さぁ、前を向け。
大介・・・俺は・・・俺は・・・ここにいていいんだ。
大介・・・なろうで書いていいんだ。
・・・いいんだよ・・・それで。
ここはなろうの世界・・・。
自由に書ける世界・・・。
そんなのどうしていいのか、分からない。
読んで、書いてみればいいと思うよ。
自分のイメージはある・・・でも、漠然としているんだ。
とらわれているのね・・・なろうに・・・。
あんたも好きねぇ・・・ちょっとだけよ。
何物にもかえがたい場所・・・。
俺は・・・そうだ。この話を完結することが出来るんだ。
そして・・・物語は結ばれるんだ。
作者を取り巻く精神世界が取り払われ、世界が、青空が広がる元へ。
尊・・・おめでとう。
アルス・・・おめでとう。
アリス・・・めでとー。
ローラ・・・よくやったね。
黄河・・でも、アタイも嫌いじゃないぜ。
蕉蝉・・・私もキライじゃないだからね・・・むしろ。
花々・・・好きっ。
十六夜・・・おめでとう・・・。
壱与・・・おめでとうございます。
すべてのなろうに・・・。
ありがとう。
すべてのおじさんに・・・。
さんくす。
次は10万PVでお会いしましょう。なんちゃって。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
これにて、「二人の勇者と二人の女王そして四人の悪役令嬢おまけに転生者の物語」完結でございます。
マルチエンディングは楽しくもあり、しんどかったですね。
アイディアが出て来なかったり、思った通りにならないところがあって(笑)、でも無事完結出来てほっとしています。
では、また私の作品を読む機会があれば、その時はまたよろしくお願いします。
重ねて感謝申し上げます。