カルテNO2 本編007 新生児(後編)
霊安室に運ばれた小さなご遺体──
「……よく頑張ったわね」
千代看護師が、小さな小さなご遺体に話しかける。
魂を引き抜き、立つことも出来ない赤ん坊を抱きしめた。
「苦しかったね。もう大丈夫だからね」
「心臓マッサージや気管内挿管、輸液全開。小さな身体で苦しいこと頑張ったね」
この子が生きた証の数分に受けた処置を思い出し、抱きしめた小さなご遺体を労うことしかできない。
「ふぎゃぁぁ」
尊や春海に届くことのない泣き声が、霊安室に響き渡る。
「あなたは、パパとママに幸せな時間を過ごしてもらうことができたのよ。幸せな妊娠期間だったと思うわ。あなたに話しかけていたでしょう。あなたは確かに愛されていたのよ。自信を持って良いのよ」
小さな小さな御霊に話しかける。
すると赤ん坊は泣き止み、千代看護師の顔をじっと見つめた。
「パパとママ、幸せだった?」
赤ん坊の想いが、千代看護師の脳に直接届いてきた。
「たくさんの幸せな時間を過ごしていたはずよ。ここに来る前、パパとママに抱きしめてもらったでしょ。愛情たくさん注いでもらったのよ」
小さな小さな御霊に話しかける。後悔や悔いのないように旅立たせてあげたい。
「パパとママ、ボクのこと、“せいや”って呼んでた」
「星の光り輝く夜に生まれたあなたに、ぴったりなお名前ね」
「お星さま……ボク今度は、お星さまになって、パパとママに見てもらう」
この小さな小さな子は、大きな大きな愛情をもらって、幸せだった時間をプレゼントして、千代看護師の導きに従い、光の道を真っ直ぐに進んでいく。