後任看護師(中編)
夜勤ナースが続々と出勤してくる。
いつも通りのナースステーションの風景。
「申し送りを始めようか?」
主任ナースが声をかけた。
日勤ナースと夜勤ナースで患者様の様子など引き継ぎをする。
この日は特別大きな事は無かったのでスムーズに終わった。
「さぁ、今日は夜勤だから、霊安室の幽霊の正体を確認しよう」
先輩には止めるように言われたけど、ご遺体から光を奪うなんて聞いたら、やっぱり黙っていられない。
「お守り用のお塩も持ったし、何とかなるでしょ」
休憩時間を利用して、真相を探りにいくことにした。
(今夜は亡くなる患者様がいるのだろうか?)
ここは三次救急の指定病院。病棟で亡くなる人がなくても運ばれてくるということもある。そう思っていた。
夜の病棟は静かで、すれ違う人も少ない。
正確には、“生きている人”とすれ違うことが少ない。
「夜は夜で混雑してるのよね」
救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
救急外来の初療室が慌ただしくなった。
心肺停止の状態で運ばれてきているようだった。心臓マッサージしながら運ばれてきた疾病者。
手の施しようがなく救命医が死亡宣告をする。家族が悲しみに暮れる中、看護師の手によりエンゼルケアが施され霊安室に運ばれる。
「霊安室……」
私はこのタイミングで休憩をもらって、霊安室付近で幽霊が現れるのを待った。
「幽霊を待ち伏せするなんて人生で初だわ」
そこに現れた、ワンピースタイプのナース服を着た看護師。
かなり前にパンツタイプのナース服になっている。今でもないわけじゃないけど、好んで着る者は少ない。
カラカラカラカラ──
カートに色々な道具を乗せて、例の幽霊が現れた。
「……扉をすり抜けていった」
私も後を追うように、バタンと扉を開くと──
青白い光を、ご遺体から引き抜く光景を目の当たりにした。
「あっ」
思わず声がでてしまった。
「あら。見つかったわね」
「いつから、こうされてるんですか?」
真実を知りたくて話しかけてみた。




