森の泉にて 2
お盆休みでバタバタして、いつもの時間過ぎてしまいました。
続きは夜に更新しますので、少し短めです。
すみません。
秋は日が落ちるのが早い……いや、思ったよりも解毒と回復に時間がかかってしまったという事だろう。
私は一生懸命、森を屋敷に向かって走りぬける。
まだ半分といった所で、正面にお兄様が見える……
ああ……嘘でしょう……
怒られるわ……
「みんなにバレる前に戻ろう! 急ごうっ! 」
流石お兄様!!!
息も切れ切れに走って屋敷の敷地内に入ると、お兄様が先に屋敷に向かう。
「私が先に行くから、息を整えてからおいで」
お兄様は鍛えているせいか、もう息も整っている……。すごいわ。私は呼吸を整えながら、屋敷に向かった。
お兄様と庭で散策していた事になっていたようで、屋敷内はいつもと変わらない様子だった。
ただ……私の部屋に一緒に入ってからのお兄様のお顔が……とても怖かった。
「リリィ。ちゃんと説明してくれるよね」
「……………………はい」
「その前に指輪をきちんと嵌めて。
魔力が溢れてしまうからね。
ただ……今日はそのおかげで、リリィがどこに居るのか何をしていたのか、感じる事が出来たんだけどね。
僕はどうやら、感知の力が強いみたいなんだ」
そうか、それでお兄様が森へ来ていたのね。
そしてお兄様! 怒りのあまり『僕』になっちゃってます~いつもはきちんと意識して『私』と言うお兄様だけれど、たまに感情的になると『僕』が出てしまう。
「でも家に帰って姿の見当たらないリリィの魔力を、森で感じた時は凄く驚いたから、一人で無茶をするのはやめてね」
「本当に心配をおかけしてごめんなさい。お兄様。実は……」
お兄様もマーサも居なくて、寂しかったからバルコニーから森を眺めていた事。
森から、助けを感じた事。
なぜか、大丈夫だとかいう確信があった事。
まっすぐに森の泉へ行き、そこでたぶん『茶の一族』だろう男の子が倒れていた事。
その男の子を治療しようとしたら、『毒』と『呪い』にかかって命を落としかけていた事。
とりあえず、今日は毒だけ解毒してきた事。
明日以降『呪い』を解いてあげたいと思っている事を簡単に、でも偽ることなく伝えた。
もちろん、なぜ大丈夫だと思ったのか、なぜ助けを呼ばれたと感じたのか……わからない事はわからないまま、そのまま伝えた。
お兄様に嘘はつきたくない。
「そうか…………」
お兄様は怖い顔から、何か真剣に考える顔になっていた。
うーん。お兄様は本当に七歳なのだろうか?
大人だわ。私が迷惑と心配をかけすぎてしまったから、こうなってしまったのかしら?
明後日の方向に考えを飛ばしていたら、お兄様は急に顔をこちらに向けて
「リリィ、明日は私も一緒に行くね。
一人で行ってはダメだからね」
「はい。お兄様が一緒なら、安心です! 」
行ってはダメと言われなくて良かった。お兄様はまだ何か考えこんでいる様子だったが、夕食の支度が出来たとマーサが呼びに来たので、一緒に部屋をでた。
夕食を終えマーサや他の侍女によって寝る支度が施され、部屋で一人になった。
今日は一日、色んな事があった日だったな。
ふと、バルコニーの方へ足が向いてしまう。
もう外は冷たい風が吹いていてストールを一枚羽織っただけでは寒さを感じた。
あの男の子は大丈夫だろうか?まさか、まだあそこに居ないだろうか。お家に帰れたかな?毒は解毒したが、体力や内臓は大丈夫だろうか……
あの時の、死にかかっている顔が忘れられない……そして、助かった時の顔も、あの宝石の様な瞳を見た時の事も…………
助けられて本当に良かった。
男の子の宝石の様な瞳に似た夜空を見ながら、彼の名前すら聞いていない事実に打ちのめされるのは……その数分後だった。
今日の後半はお兄様です!
夜なるべく早めにアップします。