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目覚めてから 3

「いいかい。リリィ。

 僕は剣の稽古に行くけれど、お庭から出ちゃだめだよ!

 僕たちの見える所に居てね!

 マーサから離れないでね! 」


「はい。お兄様。

 一緒にピクニックしてくださってありがとう。

 楽しかったです! 」


「僕も楽しかったよ」


 ギュっと抱きしめてくれた後、あぁ……心配だなぁ~と、ぼやきながらも、屋敷の方に歩いて行くお兄様を見送る。




「うふふ。お兄様ったら、心配性ね。

 屋敷の敷地内だもの。

 心配なんて無いのにね?ね?マーサ」


「いいえ! まだ安心出来ませんからね!

 お嬢様が目覚めてから、まだ日にちがそんなに経っておりませんよ!

 何かあったら困ります! 」


 二人とも過保護に磨きがかかってしまったけれど、私の心配をしてくれているんだし、そのうち安心するかな?と楽観視している。





 今日は朝からお弁当を作って貰って、裏庭で簡易ピクニックをしていた。


 お兄様は何故裏庭でピクニックなんだ??と不思議顔であったが、敷地内だし一緒に行く事に不満はなさそうだった。




 まだ暑さが少し残るが、日差しにも少しずつ秋の訪れを感じる。風も涼しげな風が吹いて心地よい。

 裏庭の大きな樹の木陰に敷物をしいて、お兄様が戻った後もマーサとお茶を楽しんだ。



「お嬢様嬉しそうでございますね」


「そうなの。お兄様とマーサと一緒にピクニックがとても、したかったのよ」


 私は本当に嬉しくて、嬉しくて仕方がないのだ。



 ピクニックは憧れのひとつだった。

 やる前、本当は『なぜお外でわざわざお弁当を食べるんだろう? 』と思っていた。

 だから、一度でもいいから体験してみたかったのだ。


 実際はどうだろう。


 お兄様とマーサに約束をとりつけてから、今日が待ち遠しくて待ち遠しくて堪らなかった。


 昨夜は、興奮して寝つきが悪かった。


 朝から厨房に行ってお弁当が出来たか何度も確認に行ってしまった。


 そして裏庭で食べたお弁当の、美味しい事といったらなかった。あまりに私が嬉しそうにしたせいか……お兄様が冬までの間ならば、また定期的にピクニックしてくると約束してくれた。


 嬉しい!


 お外で食べるご飯って楽しい。

 いつもの何倍も美味しい。

 次はお母様と妹も一緒に誘って食べたい!



 お日さまの下で、風を感じて木陰にいる。

 手を伸ばせば芝生に触れる。チクチクする。そして、ちょっとだけ濡れてる。


 そんなひとつひとつがとても愛しく、私に命の喜びを教えてくれた。





 それから体調も問題なく、暴発による影響は心配ないでしょうと主治医にもお墨付きを貰った。



 お墨付きを貰った私はお庭に出て咲いているお花をみたり、芝生の庭を駆け回ったり、前世で出来なかった事をひとつずつやってみた。


 芝生を走った時は、身体が軽くて驚いた。心臓も全然痛くならない。嬉しくて、はしゃいだ私は走り回り過ぎたのか……最初はニコニコ見ていたお兄様に『淑女として宜しくない!』と怒られた。


 マーサは転んだり、日よけの帽子を飛ばしたりしなければ、基本的には静観の構えだ。




 毎日がとても耀いていた。



 淑女教育の家庭教師の先生は厳しいけれど、真面目にやると褒めてくれるので好きだった。

 魔法はお兄様と一緒に勉強出来るから、とても楽しかった。

 一般教養もこの国の歴史も学べる事は、全て楽しかった。



 銀の一族の事も、この時に初めて詳しく学んだ。



 私が一族の長になるだろう。私にも使命が出来た。役に立てるんだと感じて嬉しかった。


 いつか、一族の中で素敵な恋をしてみたいな。


 お父様が、政略結婚を持ってくる事は考えにくいが……政略結婚も公爵家として絶対無いとは言えない。



 せめて初恋が……してみたいな。


 と、一人で考えて赤くなっていたら、マーサに熱を測られた。



 私の乙女心が傷つくので、そこはそっとしておいて欲しかった。



 初恋は相手が必要だからどうしようもないが……それ以外、私は毎日を楽しんだ。







 もう秋も深まってきて、庭の木々も紅葉していた。


 お兄様とマーサと今日もピクニックデーだ。木陰に吹きつける風は、段々冷たさを含んできていた。


 そこに、庭師のビリーが近づいてきた。


「お嬢様、先日お願いされたモノですが、試作品が出来たのでお持ちしました。……いかがですか? 」


「リリィこれは何? 」


「お兄様! これはブランコですわ!

 この樹の太いあの枝にくくりつけて、ぶら下げますの。

 ビリー、この樹に着けてくださる? 」


 ビリーは頷いて、樹に太いロープをかけてブランコを設置してくれた。


 ビリーが取り付けてくれている間に、お兄様にブランコの絵をみせた。ビリーにみせてお願いした(モノ)だ。



 見た目は私の理想的なモノだった。

 試しに乗るから、みていて!と意気込んだらお兄様にもマーサにも止められた。しょんぼり。


 とりあえず、試しにマーサが乗ってみせる事になった。



 ぶらーん。ぶらーん。と漕ぐとマーサも何だか楽しそうだった。

 耐久性の確認がとれたのだから大丈夫!と私も乗ってみた。



 ブランコで風をきるのは、とても気持ちがいい。

 私もブランコに乗るのは初めてだったから、楽しくて我を忘れて漕ぎ続けてしまった。気づくとお兄様も乗りたそうなので交代した。


 しばらくすると現物をみて、どうやって遊ぶのかみていたビリーと、遊んでいたお兄様の二人で改善点などを話し合っていた。バランスがとか、安全性がとか二人で意見を出しあっていた。何だか楽しそうだったのでほっておく事にした。


 この日はその後ずっと、私とマーサでブランコに乗って楽しんだ。




 この二日後にお兄様とビリーで、とっても素敵なブランコを仕上げてきて驚いたが、このブランコは今でも私の宝物だ。




今日もお読み頂きありがとうございました。

たくさんのブックマークや評価、また応援して頂きありがとうございます!


ランキングみて目玉が飛び出しました。

 ゜ ゜ ( Д  )

飛び出したのが、心臓じゃなくて良かったです。不整脈おこしますね(笑)


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