目覚めてから 1
昨夜のうちに目が覚めたにもかかわらず、前世の記憶を思い出した為か、情報量に頭がついていかなかったのか……あの後またウトウトしてしまった様だ。
お兄様がピクッと身体を揺すり身動ぐ。
その振動で再び目が覚めた。
そして、お兄様を見ると目が合う。にこり笑うと、目の前のお兄様が大きな瞳を更に見開いたと同時に、みるみる涙が瞳に溢れて、零れた。
「リリィ……ううっ………………リリィ…………良かった………………よかっ…………た」
優しくて、勇敢に私を守ってくれたお兄様。
魔力暴発は私のせいなのに、責任感の強いお兄様は自分を責めてしまったのね……ごめんなさい。お兄様。
お顔は涙でぐしゃぐしゃになっていても、その美しさは損なわれない。とんでもない美少年だ。
七歳のお兄様には誘拐犯から自分を守る事も大変なのに、私を守ろうとしてくれるなんて……素敵過ぎます!
「お兄様。私を守ってくれてありがとう」
そう言ってお兄様にギュッと抱きつき、二人で泣いていた。
私が目覚めた事に気が付き、メイドが慌ててお父様やお母様の元へ走っていった。
「リリアーナっ!!」
直ぐにお父様とお母様が駆けつけ、遅れて主治医も駆けつけた。
診察を受け目が覚めたのなら、もう問題はないでしょうと言われると、お父様もお母様も私を抱き締めて泣いていた。
魔力の暴発が起こった事により、大怪我を負うはずのお母様と妹は怪我一つなく無事助かった。
あの場にいた誘拐犯のうち、暴発に近くで巻き込まれた者は消えてしまった。
過ぎる治療は細胞を攻撃するのだ。身体を守るはずの免疫も過ぎれば攻撃となる。
活性化され過ぎた回復術は、自己の細胞を攻撃してしまう。ここまで大きな暴発の場合、巻き込まれた犯人達は自己免疫により溶けてしまったのではないか、とのお父様の見解だった。
魔力の暴発は基本的に暴走なので、誰彼構わず被害を受けるモノらしいのだが、私の意識が残っていた為か(転生チートのせいかと私は思っている)敵か味方か無意識に判別出来ていたようで、こちらには被害はなかったとの事だった。
……むしろ、すべての怪我が治りみんな興奮状態だったらしい。やだ、それも怖い。
そして犯人達は私から遠くにいた人以外、文字通り消えてしまったので、生き残りが少なく黒幕を見つけるのが難航しているそうだ。
私はあの事件から、三日間も眠ったままだったらしい。
あの時お兄様が私を抱き締めて守っていてくれたためか、私自身も魔力暴走による身体的な損傷は見られなかった。
ただし、精神的な影響は計り知れないとの事で、目覚めるまで皆にとても心配をかけてしまった様だ。
お父様は王宮に出した早馬で事態を知り、全ての仕事を放棄して領地の家に帰って来てしまっていた。
お母様は自分が悪かったのだと泣いて、元々儚い見た目のお母様だったが更に憔悴してしまっていた。
特にお兄様と私の専属侍女のマーサは、ほとんど眠らずに私に付き添ってくれていたらしく、憔悴していて申し訳なかったが……
「お嬢様!何故私がお側にいない時に目覚めるのですか!私がどんなに心配したか!ああ!お嬢様っっ!!良かった!」
眠らないマーサを無理やり部屋に下がらせた後に、私が目覚めたと知って理不尽にプリプリ怒り出したり、オイオイと泣き出したり大騒ぎで……そんなマーサを見ている内に、家族皆に迷惑をかけて申し訳ない以上に大切にされていると感じて、また嬉しくなった。
目覚めた私はお兄様にこれまで以上に過保護に扱われ、逃げ回るのも……時間の問題だった。
今日は少し短いです。
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