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ジェラール第三王子

 私はこの国の第三王子だ。


 我がシグナリオン国は、生まれ順や性別など全く関係なく、魔力量や強さこそ第一としている。

 王位継承権を持つ三人の王子の内、一番強く王に相応しい者が王位を継ぐ。


 三人の王子ともに、年も近く魔力量も多く王の器として遜色ないと言われていたが……私は幼い頃から魔力量こそ、上の兄様達と変わらずたくさんあったが、魔力の濃度や質どれをとっても兄様達には敵わないと気づいていた。

 そして、剣や戦闘においては二人の兄様には圧倒的に敵わない。



 もちろん私も、歴代の王と比べるならば全く引けを取らない。二人がいなければ立派な王となれたと思う。


 これは負け惜しみでもなんでもなく、幼い頃より周りをよくみて育ったせいで、そういった判断が正確に出来る様になっていた為であろう。


 私の母は赤のロートシルト家の出身で、黄や青の一族といつも権力争いをしている家だ。権力欲の強いロートシルト家の者は、母さえも私に王位を継いで貰いたがっている。


 赤の火の魔法も、常人よりもかなり使えるし、赤の族長よりも強いであろうが……あの兄様達の足元にも及ばない。


 うん。あの兄様二人は化け物だからね。アーサー兄様もすごいが、クリストファー兄様はある日、気づいたら本当に人間離れしていた。さすが魔女の血を継ぐ者だなと、いっそ感心した。

 アーサー兄様は隠している事には気づいていても、そこまでクリストファー兄様の隠している力の、凄さに気づけていない様だ……怖いくらいに強く濃度の濃い魔力を感じる。



 私は早々に王位継承権を放棄したかったが、ロートシルト家がそうはさせてくれなかった。どうしようもない家だ。

 従兄弟のアリシアがアーサー兄様の婚約者に選ばれたおかげで、少し家からの圧力は減ったが、まだまだ諦めてくれないらしい。



 私の婚約者は青の一族のシルビア嬢に決まった。


 最初は彼女に見られるだけで、怖かった。冷たい印象そのままに、きつい言葉は私の心に刺さる様だった。

 アリシアは従兄弟で恋愛対象ではなかったし、リリアーナ嬢があんなに優しそうな美人だとは思わなくて残念だとは思ったが、特に恋愛感情も無かったし、彼女の魔力も強く濃い……危険なにおいがする。

 更にクリストファー兄様があんなにご執心なのだから、怖くて何も言えない。私は彼女じゃなくても良いのだ……ただシルビア嬢が怖かっただけだ。



 どんなに判断力をつけても、恋愛においての判断力は別なんだと気づいたのは、リリアーナ嬢の一言だった。領地で引きこもって生活していたリリアーナ嬢にとって、シルビア嬢の裏表のない言葉は、とても助かるらしい。

 シルビア嬢は頭も良いので、貴族の裏のふんだんに含みのある言いまわしも、とても上手だ。思わず感心してしまう程だ。

 しかし、リリアーナ嬢にはそうせずにストレートに話してくれるので、きつく聞こえる時も優しさが多いのだという。



 ……。そう。シルビア嬢はしっかり意見してくれているだけで、傷つけるつもりもない。冷たくもない。まわりが勝手に解釈していただけなのだ。

 そこからシルビア嬢にきちんと向き合ってみると、はっきりした口調とは別に可愛いらしい一面もあるし、しっかりした面倒見の良い女性だと気づいた。

 私がはっきり出来ない分を、余計に気づかって判断したり補おうとしてくれているらしい。



 ふふふ。私ははっきり出来ない訳じゃなくて、()()()()()()()()()()()なのだけれど……私の為に頑張るシルビア嬢が可愛いから、そういう事にしておこう。


 ああ、可愛いな。




 気づいた時には、この可愛い婚約者(シルビア)に夢中だった。



 学園に入る時も、シルビアが制服姿を見せてくれると言うので楽しみにしていたら、まさかあんなに短いスカート姿で現れるなんて思わなくて、一瞬真っ白になった。

 他の何も目に入らず、スレンダーなシルビアの細い脚にふくらはぎに、折れそうな程華奢な足首……。


 思わず近くのカーテンをむしり取り、シルビアをくるんでしまった。




 鼻から温かいモノが流れる気がしたので、鼻から血が流れない様に結界を張った。




 ……こんな事に金の一族の結界を張ったのは、私だけかもしれない。なかなか情けない。


 でも駄目だ。シルビアの足をみて良いのは、夫になるであろう私だけだ。






 結婚したら、辺境の領地でも貰って、のんびり結界強化しつつ、シルビアの水魔法で領地を豊かにする方法を考えて過ごすのも良い。

 シルビアが王都が良ければ、そういった研究をしながら兄様達を支えていくのも良い。


 ……そんな風に考えていたし、シルビアに()()()()()()()()()と、決められない()()をして相談していた。





 学園生活も慣れた夏に、編入生が入ってきた。


 特になんという事もない男爵令嬢だ。見た目が可愛らしく令息に人気があるらしいが、私には可愛い婚約者がいるから興味もない。


 ある日、彼女に話しかけられた。


 男爵令嬢から私に話しかけてくるなんて非常識だが……平民として育てられたというので、致し方ない部分もあるのだろう。



 彼女に見つめられ、何かを呟いたと思った時には……もう、私の意思とは関係なく彼女に気のある素振りしか出来ない。


 そして、シルビアに冷たい態度しかとれない。



 シルビアに嫌われても仕方のない態度だ。こんなことがありえるのだろうか。心が、張り裂けそうだ。

 そんな悲しい顔をさせたくはないのに、そんな顔をさせているのが私だなんて……。

 抗いたくても抗えず、心と身体がバラバラになりそうだ。


 シルビアの事を考えなければ、他の生活に支障はないのに、心の中に何かが住みついた様に感じる。

 苦しくてしょうがない中、兄様達と視察の打ち合わせだと、呼び出しを受けた。クリストファー兄様の個室に行くと、やっとこの苦しみの原因が『呪い』だと知る。確かに呪われている。こんな呪いがあるのだと、驚愕するが私の身体は反応してくれない。



 兄様の部屋にはランスロットやリチャード、リリアーナ嬢がいた。そこからは驚きの連続で、ただただ身を任せているだけであった。

 


 ランスロットが呪いを解析してくれたと思ったら、魔女(男爵令嬢)が現れるし、リリアーナ嬢が解呪してくれたのはいいが、あまりの魔力に気絶しそうだ。……クリストファー兄様が選んだだけの事はある。


 逆にこの魔力量って、この二人のペア以外は無理だろうね。お似合い過ぎる。


 そんな事に気をとられながら、意識が飛ばされそうだったが、兄様の言葉で気づく。

 まずはシルビアの誤解を解かなくては! 気づくとアーサー兄様はすでに部屋を出て行ってしまっていた。


 私はその場の皆に簡単にお礼をつげ、急いで私の婚約者(シルビア)の元へ向かった。


 



「シルビア! 」


 下の階にあるシルビアの個室に入る。突然の訪問に驚いた様子のシルビアだが、一瞬嬉しそうな表情を見せたので安心した。


「どうなさったのですか、ジェラール殿下」


「すまない。いつも通りジェラールと呼んでくれ」


 そこから魔女の呪い、クリストファー兄様やリリアーナ嬢達が解呪してくれた経緯をかいつまんで話す。



「本当にシルビアにはつらい思いをさせたね。

 でも、私が愛しているのはシルビアだけだよ」


 そう言ってシルビアを抱きしめると、触れたとたんにパチッと小さな光がみえ、私の頭の中に魔女の声が聞こえた。



『呪いを解いたので愛の祝福を……』




 私の腕の中にいるシルビアをみると、頬を赤く染め私を見上げている。




 『愛しているよ』の言葉とともに、魔女の祝福のなか……



 そっと触れるだけのキスを交わした。









台風の影響で予定が大分狂っております。仕事や運動会に影響しまして、更新出来ず……

更新楽しみに待っていてくださった皆様、ありがとうございます。本当に嬉しく思っています。


もうすぐ完結しますが、いくつか番外編もあるのでお付き合い頂けると嬉しいです。


そして、更新しない間もブックマークや評価、応援等を頂き本当に嬉しいです。

ありがとうございます。


後少しお付き合いくださいませ。

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