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アーサー第一王子

 私はこの国の第一王子だ。


 といっても……生まれ順位など関係無い、魔力量や強さが全てである我が国において、何の意味も持たない順番で名称だ。


 子供が出来にくい『金の一族』にあって、年の近い三人の王子が生まれるとは、誰も予想しない事態だった。



 私の母は正妃で『黄の一族』のケラヴィノス家の出身だ。お祖父様もお祖母様も幼い頃より王宮に来ては、ごちゃごちゃ五月蝿い事ばかり言って帰るので嫌いだった。

 なんであいつらは、母に文句を言いに来るんだ!と腹立たしい事この上ない。


 母は強い方だ。


 そんな自分の両親に負ける事もなく、政略結婚の父とも協力して国の為に頑張っている。……私は母を尊敬している。



 私は幼かったが、お祖父様やお祖母様の言っている事だって理解しているんだ。二人は王の寵愛が他の王妃にある事や、王子の年が近く三人もいることに焦っているのだろう。

 王の寵愛を得てこい等と、愚かな事しか言えないのならば、王宮に来るなと叫びたかったが、母が言わないのに私には口を出せない。


 そして、城の中で見かける異母弟(きょうだい)達。


 最初こそ、周りから悪く言われていた影響もあって、弟達に良い印象なんてなかったけれど……そもそもあんまり話したことすらないのだ。


 きっと彼らも私と同じだろう。そう思っていた。弟とたまに会うと面白い。

 クリストファーは何を考えているのか分からない男だが、剣も魔法も強く手合わせするのは面白い。知識も多く話していても面白い。

 ジェラールは優しい男で、実際に年も一つ下だったから、可愛い弟ってこんな感じかと思っていた。



 クリストファーと剣の稽古を楽しんだ後だった。

 たまたまお祖父様が私達を見かけて、怒鳴りこんできた。『何故、異母弟(おとうと)と仲良くしてるんだ』と……。


 とにかく腹が立って……

 何故仲良くしてはいけないんだ! と反論してやったから大騒ぎだった。


 お祖父様はとにかく権力欲の強い男だ。母の我慢強さは、このお祖父様のせいであろう。よくあんなできた(はは)になったものだ。でも、母は本当のところは()()思っているのだろう……


 幼かった私は、母にそのまま聞いたのだ。


「……お母様は私に王になって欲しいですか? 」



 母は私の前でも、ほとんど表情を崩す事はない。しかし、この時は珍しく驚いた顔をした後、いつもの優しげな微笑みを浮かべながら言った。



「アーサー、貴方が王になりたいならなりなさい。

 貴方が王に相応しいと思うならなりなさい。

 王は孤独です。一人で耐えねばなりません。

 その時に人から望まれたから、という位の気持ちでなるのであれば、王は務まりません。

 国の為に尽くす者が、尽くせる者が王となれるのです。


 ……私の一個人として母としての意見を言うのならば……いいですか、よく聞きなさい。二度とは言いません。


 息子には幸せになって貰いたい。


 王位は貴方自身で考えなさい。

 私は貴方の意思を、尊重してあげたいと本当は思っています。


 しかし、状態により王にならざるをえない事もあるでしょう。その時は頑張りなさい。王家に生まれた者としての義務です。


 私の気持ちは……また別だと、覚えておいてちょうだい。

 貴方を愛してるわ。アーサー」



 そう言うと、母は私を抱きしめた。



 辛い事もたくさんあったが、母のこの言葉があったから私は頑張ってこられた。





 クリストファーが死ぬかもしれない程の毒を受けた。


 私達は常に誰かから命を狙われる。私の場合は、ケラヴィノス家にこれ以上権力をとられたくない派閥から狙われる。

 だから、かなりの毒耐性をつけているし、結界も強くはっている……にもかかわらず私と唯一、同等の力を持つ弟が死にそうになっている……。


 助けてあげたいし、お見舞いに行きたいのに……王子の暗殺未遂を公表出来ない為、表向きは公務で外遊扱いだから面会すら出来ない。



 王子なのに、ままならない。



 つらい気持ちのまま半年以上、クリストファーに会えなかった。ジェラールもいつも悲しそうに『クリストファーは大丈夫かなぁ……』と私に話しかけてくる。『あいつは大丈夫さ』と言っていたが、本当はそう思いたかっただけだ。


 私達は兄弟なのだ。

 同じ様に王になるための苦労を強いられる唯一の仲間で、最大のライバル。複雑だが、私は兄弟同士嫌いになんてなれない。


 可愛い弟だ。



 クリストファーが戻って来て、とても嬉しかった。中庭の奥で三人でこっそり会う様になった。

 そこで、初めてクリストファーの特殊な魔法をみた。ヤツは秘密にしている様だから、騙されてやっている。


 クリストファーも、王になるのが誰が良いのか見極めているのだろう。私達はよく似ている。

 ジェラールが向いていないのは、私達の中でも分かりあっている事だった。そして、それをロートシルト家が、許さないのも分かっていた。



 このまま成人する頃に、より王に相応しい方がなれば良いとお互いに思っていると思う。








 可愛い弟だが婚約者の一件は私は、いまだに根に持っている。いや元々、想いあっていたらしいので、その邪魔をしなくて良かったが……一言相談してくれたら良かったのだ! やり方が気にいらない。



 私は柔らかい金の髪が緩く巻く癖毛で、短くなりすぎない様に整えている。目は少したれ目気味で泣き黒子があるのが、色気があると誉められる。

 王子である事もあって色んな女の子やお姉様方からお声がかかる。可愛い女の子は大好きだ。


 しかし、婚約者は別だ。私が王になれば正妃になるのだから。


 婚約者は顔合わせの後に、それぞれの希望と合わせて決めると言われていた。

 お茶会には二人の美少女と野暮ったい令嬢の三人がいた。私は特に誰とも思っていなかったが……母の様に王妃としての自覚のある令嬢が良いと考えていた。

 ここに選ばれるだけで、どの令嬢もその資格がある。()()()()くじ引きで一緒になった、アリシア嬢に決まったが特に不満もなければ、感情もなかった。



 しかし、婚約者が決まった後の顔合わせで衝撃を受けた。


 リリアーナ嬢の美しさは別物だ。妖精の様に美しく、そして笑うと可愛らしい。正直一目惚れしたのだ。

 やられた。あいつは、リリアーナ嬢と知り合いだったのだ。してやられたと悔しく思ったが、もうしょうがない。



 当時はリリアーナ嬢と話す機会があると、私の初恋が胸を締め付けたが……今はいい思い出だ。



 アリシアの可愛らしさに気づかせてくれたのも、リリアーナ嬢だった。


 最初は正妃に申し分のない強い女性だと思い、文句もなかったが、気持ちもなかった。

 そんな彼女が強がっているのも、強さの裏に恥じらいや私を慕ってくれている気持ちが見え隠れしているのにも気づくと、堪らなく可愛らしい。

 ツンとそっぽを向いた裏で、私に嫌われていないか心配しているのが堪らない。一生懸命に隠しながら、私を追いかけてくる。


 好きにならない訳がない。


 アリシアは、とにかく私のツボをついてくる。一緒に過ごす内にどんどん彼女を手放せなくなる。そんな彼女の気持ちを知る最初のヒントをくれたリリアーナ嬢には感謝しかない。


 幼い頃の私には、アリシアの分かりにくさは難しいだろう。こんなにも可愛い彼女を、理解出来なかったかもしれない。



 婚約者がアリシアで良かった。これからも彼女と過ごせると思うと、王として生きても、臣下として生きても、私の人生は幸せだろうと思っている。







 ただ……あれは駄目だ。



 入学を翌年に控えた婚約者三人が、初めて制服を着るので私達に見せてくれるという。


 なんて可愛らしい事をするんだ、私達の婚約者は。と笑っていたが……



 部屋に入ってみて………………時が止まった。



「…………っ! あっ……アリシア…………はっ! ……ああぁぁぁー! 」


 一瞬、自分でも私が叫んだなどと、分からなかった……なんという事だ。王になるべく教育も受けたのに、常に冷静で表情に出すなと教育を受けたのに!!!!


 アリシアの足が!


 アリシアの足が晒されてっ! …………っくっ!


 そう思った時にはもう、アリシアを横抱きに抱えて人目のつかない壁際に連れ去っていた。




 短いスカート姿のなんたる衝撃!



 抱えこんだアリシアは、頬を赤く染め上げ可愛らしく私の様子を見ている。アリシアの成長著しい身体つきが今は恨めしい。こうやって抱き上げれば、アリシアの匂いがする。



 なんだこれ。私の理性を試しているのか? そうなのか? ……いや、誘っているのか? いいのか? そうか。婚約者だ。いいのか。

 いや、駄目だろ。落ち着け。



「殿下! 何かありましたかっ! 」



「何でも無い!! いいか! 誰も入室は許さない!

 扉から離れるんだっ! 」







 すでにクリストファーあたりが部屋に入れない様に、結界をはっていただろう……等と冷静になれたのは、夜寝る前だった。




 そして、恥ずかしさとアリシアの膝丈スカートが思い出され……





 ……私は長い夜を過ごすのだった。






お読み頂きありがとうございました。

独立して王子'sサイド事件行こうかと思っていましたが…アーサーのストーリーが元々入っていたのでここに入れ込みました。


俺様×高飛車(ツンデレ)の二人も好きです。



私事ですが…ちょっと冒険に出ていまして…冒険の後遺症で更新出来ず…申し訳ありませんm(_ _)m


そんな間もブックマークや評価、応援頂きましてありがとうございます。

がんばります!冒険はほどほどにします。

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