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魔女の力とヒロインの登場

 学園での生活にも慣れて、クリスやライバル令嬢達と毎日楽しく過ごしていた。



 ダンスのレッスンやマナー講座等は必須科目だった。数少ないクラスの人達との交流が出来る時間なので、私は楽しみにしている。


 クラスの男の子達は、王妃候補の私達には話しかけてくれないけれど、ダンス中はたまに会話する。



 先日は、好きなお菓子を聞かれたのでチョコレートが好きだと答えたら次の日からチョコレートがたくさん届く様になってしまった。

 王妃候補の印象を良くしたいのかな。貴族って大変ね。と言ったらアリシアとシルビアは面白そうにしていた。


 お礼とか何かお返しを送ったりした方がいいかと聞くと、何もしなくて良いという。せめてお礼を言った方がいいかしらと言っても、気にせず受けとるだけにするのが良いと教えて貰った。……難しい。危うくお礼に行ってしまう所だったわ。


 私は領地で過ごしていた為、王都のルールが分からない。いつも二人にこうやって助けられている事が多い。二人には本当に感謝している。






 今日も午後はクリスと研究所に行く。


 今日はベーカー教授の授業は無いので、研究所の個室で個人研究の続きをしようと話していた。




「リリィ……魔女について一般的な所は少し触れて来たから……

 私の受け継いだモノについて少し話そうか。


 リリィは魔女の力ってどんな印象? 」


「……そうね。

 うーん。一番は不思議な力って印象かしら」


「不思議? 」


「そうなの。

 最初は一族の力の様に思っていたの。

 だって、血で受け継がれるから……

 でもクリスの基本は、金の一族の力でしょう?

 それに追加で魔女の力も持っている感じがするの。


 一族の様な力は関係ないとすると、それとは別なのかな?

 でも子供に受け継がれるでしょう?


 だから不思議なの。」


「……ああ。リリィはすごいね。

 なんとなく理解してるんだな。


 そう。一族の力は血によって受け継がれるらしいね。


 魔女の力は肉体に受け継がれる……そんな感じかな?

 私を構成する、ひとつひとつに魔女因子が組み込まれている……そんな感じなんだ」


細胞(DNA )に魔女因子が乗っている感じなのかも……

 そうなの……


 ああっ! それで、魔女は歳をとらないのね! 」


「そうだね。

でも、これには条件があって二十歳位で肉体的な老化が一度止まるんだ。


 魔女は基本的に魔術の研究や自分の興味のある研究に没頭しすぎちゃうから、そんな身体に進化したんじゃないかと魔女の中で言われてる。


 それくらい、何百年も研究に没頭してる魔女もいるんだ。


 身体の時間を動かすスイッチは……『人生の伴侶』だ。

 恋をして相手の子供が欲しいと思う事。

 相手が見つかって、純潔を捧げると時間が動き出すらしい。


 まあ……自分達の研究に夢中な魔女が、伴侶や子供を欲しがる事が少ないから、あまり魔女はいないし人前にも現れない。


 最近だと、私の母が時間を動かしただけの様だね。

 母の両親も、もう百年くらい前に亡くなっている様だしね」



 ……クリスの話は驚く様な事ばかりだった。

 確かに魔法のある世界に生まれ変わって、不思議な事がたくさんあるけれど、そんなこの世界でも魔女は本当に特殊だ。




 でも、恋をして時間が動き出すなんて……素敵。



 私は恋をしてみたかったから、少し違うけれど……


 でも恋を知らない人が、恋をして自分の時間が動き出す。

 トキメキも感情も色づく世界に、しあわせな気持ち。

 嫌な気持ちになったり辛く感じる事もあるけれど、恋を知らなかった時に戻りたいと思う事は無いんじゃないかなと思う。


 例え恋が終わっても、辛くても後悔はしないと思うから。




「……リリィ? 」


「あ……恋をして時間が動き出すなんて素敵ね。

 って思っただけ。

 ……人生をかけた恋なのね」


「そうだね。リリィらしいね。

 ……でも私の時間は止まる事は無いね。

 止まる前にリリィに会ってしまったからね」


 そういって笑うクリスは見惚れる程に格好いい。私は恐らく真っ赤になってしまっているだろう。

 魔女の力の話から、こんな話になってしまって……私は一人悶えてしまう。




 真っ赤な顔のまま俯いていると、クリスの真剣な声が聞こえて来た。


「これは私の唯一の知り合いの魔女との話で、あくまで仮定でしかないんだが……聞いてくれ」



 余りにも真剣なクリスの様子に、私も姿勢を正す。

 クリスは大きく息を吐いてから、話し始める。



「今回の王家の三人の王子は、魔女の力が働いている可能性があるんだ。

 魔女の力は個人差が大きいのだが、母は自分の力にあまり興味がなく精霊達と楽しく暮らすのが好きだった様なんだ。


 私も精霊に力を借りる精霊魔法が得意だけれど……私の本当の魔女の力は魔法の融合や魔法をつくりだす力なんだ。


 あの転移魔法や他の魔法も私が作った魔法なんだ。

 こんな風に個別な力があるはずなんだが……


 母は自分の力が分からないんだ」


「わからない……」


「そう。興味がなかったから、気にせず来てしまった様なんだけどね。

 そして父に会って恋をして、王妃になって思うんだ。

 無意識だったのか意識的だったのか、もうわからないけど……



 ()()()()()()()()()()()()()()()。ってね」




 ヒュッと息を飲んでしまう。


 確かに子供の出来にくい金の一族で、そう願ってしまうのも無理はない……でも、そんな事が可能なのだろうか。

 ましてや自分に子供が出来るだけではなく、他の王妃にまで子供が出来る魔法なんて聞いた事がないし、出来たら金の一族は苦労していない……一人も子宝に恵まれなかった王が何人もいるのだから。



「当時は正妃様もご懐妊の兆しもなく、母を寵妃としたい王は、もう一人王妃を娶る約束で母を王妃としたんだ。


 次は子供はまだなのかと再三に渡る圧力に母は、当時()()願ってしまったらしいよ。

 自分だけに出来るとまた、周囲の貴族達も煩いのもあったしね。


 だから、王子全員の歳が近い事を考えると……

 やはり魔女の力が働いていると思う」


「そう考える方が正しいかもしれない……」


「そこで『魔女の試練』になるんだけど……

 私の得た知識からすると……


 ()()()()()()()()()()()()()()というものなんだ。


 考え過ぎかもしれないけれど……


 アーサーやジェラールに試練が働くかもしれない」


「そんなっ……」


「試練は他の魔女の力を借りても解けばいいんだ。

 だが、どういった試練がくるのかもわからない。

 だから、どんな些細なことでも怪しいと感じる事があったら、私に教えてくれるか?

 五歳から成人までだから、あるならばこの一年間が最後の一年なんだ。

 くるなら今年くる。

 もちろん、無いことを祈るけれど……ね……」


「ええ。もちろんよ。クリス。

 その時は、私にも協力させてね」


「ああ。頼むよ。

 本来ならリリィを巻き込みたくはないんだが……

 解呪や解毒やリリィの助けがあると助かるのは事実だ。

 ……何より私の側にいない事で守れないのが一番怖い。


 だから絶対一人では行動しないと約束してくれ。


 どうも……試練の担当者に悪意の様なモノを感じるんだ……」


「わかったわ。絶対クリスに相談するね」





 魔女の試練の対策を研究したり、ライバル令嬢同士仲良くしたり、クラスの生徒に遠巻きにされながらも、交流を試みて二人に止められたりしながら……あっという間に夏が来た。












「……っ何よ! なんでスカート一つで、学園内に入園出来ないのよ!

 そんな事聞いてないわよ!

 もおぉぉ! どういう事なのよ!」


「ですから何度も申し上げましたが、そちらのスカートは全面禁止になりましたので、こちらに着替えて頂ければ、ご入園出来ます! 」


「はぁ? 何がダメなのか分からないわ!

 ……っっ! ちょっと! 何すんのよ!

 掴まないでよ!! ちょっとぉぉ! 」



 正門の所で守衛さん二人に、両腕を捕まれズルズルと引っ張っていかれる………………




 ……たぶん膝丈スカートのヒロインを見た。






お読み頂きありがとうございました。


いつもたくさんのブックマークや評価をありがとうございます。


(〃´ω`〃)やっとヒロイン(?)登場しました。

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