表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/49

乙女ゲームは始まるのか

「……リリィ……? 大丈夫? 」



 お兄様? ……あれ? お茶会終わったの? お家?

 お兄様が心配そうに私の顔を覗きこんでいた。


 私……クリスに会って……


 あれって……私の事、好きって事なの?

 それとも、あの三人の中では私を選ぶって意味なの?


 クリスの真剣な顔を見てると、とても軽い感じではなかったけど……でも、好きだと言われた訳じゃないもの……。

 勘違いしてはダメよね……。やだ。泣きそう。




「お兄様? 私、あの……まだ良くわかってなくて……

 お城に……クリスがいたの。


 ……クリス……王子様なんだって。


 そして、私を選ぶって言ってくれるんだけど……

 これってどう言う事だと思う? 」


「え!? 」


 お兄様は瞳が零れる程に目を見開いて驚いていた。そうよね。クリスが王子様だったなんて驚くわよね。

 お兄様もお手紙を交換してたのに気づかなかったのね。



「あのね。婚約者の中で、私を選ぶって言ってくれたんだけど……

 知り合いだからなのかな?

 それとも、昔の事を気にしている感じかしら……

 どうしたらいいの……」


「リリィ、ちゃんとクリスの話を聞いていたんだよね? 」


「聞いていたわ。

 私が嫌がらない限り私を選ぶって言ってくれたわ。

 私……どうしたらいいのかしら……」



「………………っ、にぶい…………それとも……」



 お兄様は、がっくりと机に項垂れて何か言っていたが、良く聞き取れなかった。




 ……それよりもしっかり考えなくてはいけないわ。私はクリスの事が好きだけれど、クリスは三人の中なら私を選ぶって事だものね……。


 そして、ヒロインが現れたら……。



 想像するだけで悲しくなる。



 私だけが好きで、そのうち私の目の前でヒロインに奪われていく婚約者(クリス)なんて……想像するだけで悲しくなってしまうわ!!


 そうよね。そうして、みんな悪役令嬢になってしまうんだわ!



 だって、(悪役令嬢)は婚約者の事が好きなのに……。






「リリィ……ねぇ? リリィ? 私の声が聞こえてる?」


「ごめんなさいお兄様。

 少し何かに囚われておりました」


「そうみたいだね。

 帰って来てくれて良かったよ」


「でも、婚約破棄を前提にクリスの婚約者になるのは……

 辛いです」


「えええっ! だからそのまま婚約して、結婚すればいいんじゃないの?

 リリィは、クリスの事……

 その……好きなんだよね? 」



 お兄様の言葉にコクンと頷く。



「でも……きっとヒロインが現れて、クリスもみんなも……」


 言いながら涙が溢れてきてしまい……いけない。こんな所で泣いてしまってはいけないわと思うのに、涙が止まらない。



 お兄様がそっと背中を撫でてくれる。


「リリィ落ち着いて。

 ……よく考えてみて。

 クリスの事もリリィの気持ちも」


「私の気持ち……? 」


「そうだよ。難しい事を考えるより……

 まずはリリィがどうしたいか、よく考えて。

 私も出来る限りリリィに協力するからね! 」



 ね。っとウインクするお兄様。

 お顔はお母様そっくりなのに、こんな所はお父様そっくりなのね。



「お兄様ありがとう。私よく考えます」



 お兄様は「大丈夫だよ」と優しく微笑んでから、部屋を出て行った。




 私の気持ち……。



 そうよね。ゲームの知識に引きずられてしまって、大切な事を見失ってしまう所だった。


 私は今を、ここで生きているんだもの。

 決して、病室で物語を読んでいる訳じゃない。



 ちゃんとクリスに私の気持ちを伝えなくちゃ。


 『伝える』『伝えられる』相手がいて、『伝えたい気持ち』があるって凄い事だって、私は知っていたのに……。



 他の事に気をとられて、見えなくなってしまうなんてもったいない。


 乙女ゲームのシナリオが進むかどうかはわからない。

 類似性が多すぎて無視は出来ないけれど、私は私の気持ちや私の大切な人や大切な物を、ちゃんと大切にしたい。




 お兄様は凄い。

 良かった。気づけて。お兄様ありがとう。









―――――   ―――――   ―――――








 驚いた。



 リリィの鈍さに驚いた。



 まず、クリスが王子だという事に全然気づいていなかった事。


 リリィは確かに、相手の身分等にあまり拘りが無く、貴族でも平民でも気にせず仲良くしていた。

 でもまさか王子に対するまで気づかない程に、相手の身分について拘りが無いなんて……好きな相手の事なのに、相手の身分について考えていなかった様だ。

 身分の理解が無い訳じゃない様だから放置しておいたが……これからは一族しかいない領地ではなく、貴族社会の王都で王子の婚約者として生活するのだから、もう少し教育が必要かもしれない。




 リリィは人の心の機微には敏い方なのに……事、恋愛方面に置いては……壊滅的だと思う。

 領地内でも『可愛い娘』『可愛い妹』だと、父も私もあまり妹を外に出したがらなかった……だから、友達も数える程しか居ないし、そういった恋愛方面の話をする相手がいなかった事は想像がつく。



 それにしても、ひどい。


 クリスの気持ちにも全然気づいていない!


 しかも、三人の中からなら自分を選ぶって……

 クリス……リリィは鈍いんだから、直接的に言わないと伝わらないよ! あんなに私宛ての手紙に熱烈な告白が書いてあったのに、全然ダメじゃないか!


 大切な妹を泣かせるなら、協力出来ないよ!

 って最初こそ思ったけど……


 むしろリリィが鈍くて、クリスごめん。



 かろうじて、自分の気持ちには気づけていて良かった……


 そこからだと手に負えないよ。でも、気づいたばかりかもしれないなぁ……



 でも、私から伝えるものでもないしなぁ……



 誤解してるよとだけでも、伝えた方がいいかな?







お読み頂きありがとうございました。


誤字報告ありがとうございます。

そして、たくさんのブックマークや評価や感想をありがとうございます。


いつもとても嬉しく思っています!

感謝の気持ちでいっぱいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] (お兄ちゃんは協力する体制みたいだけどコレ、当事者自ら乗り越えなければ結ばれたって結局は破局との隣りあわせじゃね…?
[気になる点] 主人公頭弱いタイプ? まだ、ゲームと現実の区別がつかないのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ