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王宮のお茶会 2

 お茶会は和やかに進む。


 でも私には、お茶の味もしなければお菓子の味もしない……俯いたまま、考えたいのだけれど何も考えられずに時間だけが過ぎていった。




 お茶会という名のお見合いだと、みんな知っているが建前上は、王妃様主催のお茶会という社交の場だ。表面上は和やかなお茶会が繰り広げられている。


 王都に住む方々は面識があるので、どうしても領地から出ない私と母に話題が集中してしまうのはしょうがないだろう……



「……まぁ、では銀の一族の夜会は全員が銀の一族ですの? 」


「はい。ですので、あまり夜会も行われずに年に数回ですわ」


「それは、寂しいですわねぇ。では、最近のドレスなどは………………………………」




 銀の一族の領地内の暮らしに興味を持つフリをして、私達を見下している。同じ公爵家同士でも、中央の社交場にでて来ない私達を侮っているのだろう。くだらない権力争いなど正直どうでもいいので、話半分に聞いていただけだった。



 王妃様の「子供たちは子供達同士で、仲良く遊んでらっしゃいな」という声かけで、私達も席を離れて移動する。

 ここからは、私達の戦いなのだ。子供とはいえ貴族の令嬢は恐ろしい。先程の大人の戦いのミニチュア版だった。




 そしてある程度、目標とする王子は家によって決められているのであろうが……王子が、いや()()()()()()()()いたことが今まで無いのだから、どの家も混乱していた。



 今までであれば、一人の王太子に数名の王妃候補を用意して何人か王妃に選ばれる。



 王子が三人もいて、かつ王太子が決まらない状況では、どの王子に近寄って良いのかわからない。



 今回のお茶会で、どの王子が王に選ばれそうなのか探りを入れたいのだろう。令嬢達も皆それぞれ様子をみている様だった。




 赤の一族のロートシルト公爵家、アリシア様。


 友達曰く『傲慢高飛車の最強悪役令嬢』である。確かに真っ赤な髪に気の強そうなお顔だった。目元はつり目ではあるが、キリッとしていて美しい。瞳は緑でとても印象深い。はっきりとした強気な美少女だ。

 話し出すと、ずっと話し続けているため私としては助かっている。



 青の一族のアンダーソン公爵家、シルビア様。


 友達曰く『頭脳明晰、嫌味な悪役令嬢』である。真っ青な髪は確かに冷たい印象を持つ。切れ長の瞳はシルバーで更に冷たい印象を受けるが、スッとした知的な美少女だ。

 こちらは口数が多くないのだが、ずばっと会話にきりこんでくる。



 そして……あの微笑みにやられてしまったのは、私だけではなかった。



 アリシア様もシルビア様も隙あれば、クリス……いやクリストファー殿下に話しかけている。



 もちろん、第一王子のアーサー様や第三王子のジェラール様も素敵なので、二人へのアピールを欠かさない。……頑張って欲しい。





「みんなでこうやって話していても、いいですが……。

 せっかくなので、くじでもして二人でお話して交流を深めてみませんか? 」



 クリスの提案に、私以外がみんな一様に頷いた。



 女性陣の髪の色を書いた紙を用意して、王子がそれを引いて相手を選ぶ事になった。



 私としては終わるまで、このまま当たり障りなく終わりたかったのに……クリスのバカっ!

 クリス以外の王子と二人っきりでお話するなんて、困ってしまう。お話をしない訳にもいかないし、でも興味を持たれても困ってしまう……



 くじは近くに控えていた侍従が作ってくれ、王子達が一斉にひく。






 結果は第一王子(アーサー)とアリシア様。

 第三王子(ジェラール)とシルビア様。

 クリスと私だった。




 私はとりあえず、クリスと一緒で安心した。


 しかし、組合せが乙女ゲーム通りでドキリとする。





 それぞれが、王子様にエスコートされていく。




「リリアーナ嬢、行きましょう」


 クリスは手を差し出してくれた。私は少しだけ戸惑ったが、そっと手を重ねる。

 クリスにエスコートされ、中庭の奥へと歩いて行く。


 スムーズなエスコート。背も私とそんなに変わらなかった四年前よりずっと高くなってスラリとしている。

 鍛えているのであろう、添えられた手には()()が出来ていて、ゴツゴツしていた。


 クリスはまっすぐ前を向いて歩き、こちら()を見てはくれない。足取りは私に合わせてくれているが、ピリッとした感じがする。……何か気に障る様な事をしたのだろうか……それとも…………


 声も低くなっているし、変えていたんだろう……髪の色も違う。



 ……まるで違う人の様だわ。

 なぜか急に悲しくなった。



「リリィ……こっちに見せたい場所があるんだ。

 ……リリィ? 」



 クリスはやっとこちらを振り向く……

 でも私は俯いたまま、顔を見る事は出来なかった。クリスに嫌な顔をされてしまったら、このまま泣いてしまいそうだった。



「殿下……」



 ……クリスが息を呑んだのがわかった。


 やはり、何か怒らせてしまったのだろう……胸が苦しくなる。




「いつも通りクリスとは呼んでくれないの?


 …………リリィ怒っているの? 」




「……いいえ。怒っているのは殿下の方でしょう? 」


「っ! 私がリリィに怒るなんてありえないよ。

 だって、くじだってリリィと二人になりたくて、私が仕組んだものだしね」






 驚いて顔をあげると、心配そうに私を見つめるクリスのブラックラブラドライトの瞳と目が合った。


 この不思議な黒いのに青く耀く瞳に引き寄せられてしまう。




「リリィ……会いたかった」





お読み頂きましてありがとうございました。

今日はいつもの時間に間に合わず、遅れてすみません。


なんとか投稿出来て良かった!

いつもたくさんのブックマーク、評価ありがとうございます!

嬉しいです!

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