王宮のお茶会 1
ここが乙女ゲームの世界だと気づいて
私の今の姿を思い出す………………。
ああ……ダメ。なんか……恥ずかしい。
私……あのコケシみたいなキャラクターに見えてるのよね……。友達が見せてくれた、キャラクターのイラストを思い出してしまう。
顔が見えない様に前髪を長く伸ばして隠し、更に大きな眼鏡をかけて、顔にソバカスのお化粧をしていた。
銀の髪は元々一族のほとんどの人が色が薄いので、魔力の強さが濃さでは判断しにくい。だから、髪の耀きを抑える様な色味のヘアオイルを塗ってもらい、鈍い銀髪にしてもらっていた。
そして今日は耳元の髪を少し掬って編み込みのハーフアップにしてもらい、出来るだけ『頑張った風』に仕上げる様に心がけていた……。
本編時のイラストでは、しめ縄みたいなミツアミに描かれていたので……ミツアミにすれば良かったかな?
いや、いやだ~なんか客観的に、あの姿だと思われるのは、私の乙女の部分が恥ずかしい。
っは! 違うわ! 興味を持たれない様に、あの姿で正解なのだわ……
先程までは興味を持たれない様に『地味でつまらない令嬢』に見えるような態度も心がけていた。
この姿はお兄様とマーサ監修の下作りあげたものだ。
元々社交もしない銀の一族の情報は、ほとんど知られていないので、私の容姿も誰も知らないし、この作戦は良いと思っていた。
そう。先程までは……
友達曰く『地味で仕事しないライバル令嬢』
……違う! 違うの! 婚約者になれなかった理由があるの! 仕事しない訳じゃなくて、出来なかったというか、望んでるというか……別にこんな……ああ……そんなんじゃないの!
と、誰にする訳でも無い言い訳をしてしまった……。
客観的に描かかれたであろう、今の私の姿を思いだしたら、恥ずかしくなってうつむいてしまう。
……もう帰りたい。
どちらかと言うと、王子様達よりもお姫様とかヒロインとかに会って見たかったな……可愛いお姫様とか、キラキラのヒロインの方がきっと素敵だもの!
はぁ。とため息をついてしまったら、隣でお父様が苦笑いをしていた。
とにかく、このお茶会をのりきって適当に婚約者になって、時期をみて婚約者交代する……その時に私に興味なくて、交代に文句が出無いように『ハズレ』を演出する。
という作戦だった。
例え、裏で王家と婚約の撤回について契約を交わしていても、よりスムーズにするための努力だ。
お兄様とマーサは欲目から、皆が私に惚れてしまうから危険だと大騒ぎしていた。さすがに、そんな事にはならない。あの二人は欲目がひどいのだ。
……でも乙女ゲームに近い展開になるという事は、私は第二王子と文官のライバルキャラよね?
第二王子の婚約者になるって事よね?
ヒロインちゃんが、第二王子と恋に落ちたら婚約もすぐ解消しちゃうって事よね?
あ、でもヒロインちゃんが他の人を選んだらダメなのかしら……じゃあ~やっぱり乙女ゲームとか関係なく、当初の作戦が良さそうね!
うん。『ハズレ令嬢』頑張るしかないわね。
乙女ゲームに近い世界だったと気づいてしまった事で、私の気持ちは大きく揺らいでいた。
この作戦の私の姿に羞恥心が芽生えてしまった事と……
シナリオ通りならばわざわざ辞退しなくても『一人脱落する』という事に気づいてしまった事が大きい。
ヒロインと結ばれるのが王子様の誰かなら、あっさり一抜け出来るのでは無いか? ……となれば、誰の婚約者にもならなければ良いのか?
それでも。王子様を好きになるとは限らない。
私の友達ならば騎士ルート一択だって言ってた。
ぐるぐると同じ事を考えてしまう……
心を決めてこの場に挑んだはずなのに、友達に聞いただけの乙女ゲームの知識と酷似している事から、私に迷いが生じる。
そうやって、一人で赤くなったり、青くなったり、閃いたり、ガッカリしたり……百面相していたのをお父様以外にじっとみている人がいたなんて、考えてもみなかった。
そんな脳内で大忙しの私に、お母様が王妃様達がいらしたわよ、と耳打ちした。
ゆっくり顔をあげると、三人の王妃様とそれぞれの王子様達が、それぞれにこやかにゆっくりこちらに歩いて来ていた。
私はただ、遠目に確認しようと思って王妃様達と王子様達を見た。
これはお兄様から言われていたからだ。
『近くで顔を上げて見ると、向こうにもリリィの顔が見えるんだからね。
近寄ったらなるべくうつむいているんだよ!
いいかい! 見るのは最初に来る時か、帰り際だけにしといてね! 』
王妃様は個性豊かな、それぞれ美しい方達だったが……王子は個性はあるが、三人ともに立派な金の髪だった。
ふっと……視線を感じて一人の王子様と目が合う。
どきん。と私の心臓が大きく音がした。
「………………クリス」
私が声にならない声で呟くと
クリスは聞こえたかのように
それはそれは美しい笑顔をみせた。
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