始まりはお茶会で 上
新連載です。
こちらもよろしくお願いいたします。
春までもう少しという、この世界に生まれて十歳になる前の冬の終わり。
私は両親に連れられ王宮に来ていた。
王宮の中庭は冬の終わりとは思えぬ程、色とりどりの花で溢れかえっていた。
王宮に勤める庭師や魔術士、そして王族の魔法だろう。
あらゆる季節の花が計算されつくし、引き立て合いながら咲き誇っていて本当に美しい。
こんなにも美しい庭なのに、心がちっとも躍らないのは……今日のお茶会の主旨が、王子達とのお見合いだからだろう。
気づかれない様に小さくため息をひとつついて顔をあげる。子供と言っても、貴族の淑女らしく振る舞わなくてならない。更に言えば好印象を残さない様にしなければならない。
そう、それが最終的には選ばれない前提の婚約者だったとしても。
中庭のお茶会のテーブルセットは本当に素敵だった。お菓子のひとつひとつがとても美しく繊細で、食べるのがもったいないくらいだ。流石に王宮のお茶会は違うなぁ、なんて感心してしまった。
ほぼ同時に案内された私達は、公爵家の親同士で挨拶を始めた。そして紹介されるままに私も挨拶を交わしていく。
どの家の令嬢も流石公爵家と言われる程の美しさと、優雅さがあった。私もそつなく挨拶を交わし、大人しくしておく。
ほとんど彼女達に興味がなかった私は、この時点でやっと彼女達を認識し顔をみた……………………
ふと、違和感を感じる。
彼女達を知っている。
いつ、どこで、なぜ知っているのか……
私達一族は、ほとんど領地から出ないため……
今世で知っているのではないだろう……
では前世か……
そう、私は前世の記憶を持っている。
あまり役に立つものではない、悲しい記憶だがこの記憶があるため、毎日を大切に生きている。
不意に、前世の唯一の友達の言葉がよぎる。
『何でかな~この娘だけキャラが薄いんだよね~不思議ぃ~』
『ライバル令嬢がさ~三人いるんだけどね。
第一王子と次期宰相のライバルキャラが、高慢高飛車令嬢でさ~めちゃめちゃ強いんだよね。ザ・悪役令嬢って感じ。
第三王子と騎士のライバルキャラが冷たい嫌味令嬢でさ~すごい嫌味キャラなの。
どっちも悪役令嬢っぽくて良いんだけど……攻略が難しいんだよね。二人とも強いんだよ。
でも何でか、第二王子と文官のライバルキャラが地味眼鏡令嬢で、悪役令嬢の仕事しないんだよね。
婚約もすぐ解消しちゃうし、ゲームにもあんまり出て来ないんだよね~スチルにも出て来ないし。
キャラが地味だからかな?
……心配した隠しルートも無いみたいだし。
スタッフの手抜きかなぁ?
まぁ、他の悪役令嬢が強いからバランスとってる、ってサイトのコミュニティ情報が一番それっぽいかな?
でも、ちゃんとイラスト集にも載ってるし、キャラクターデザインまであるのに、変なの~。
私の推しの騎士様ルートじゃ存在すらあんまり出て来ないんだよね。ウケル』
友よ。ウケている場合ではない様です。
その地味眼鏡が私だわ……
私、乙女ゲームの世界に転生していたみたい……
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明日もお昼頃投稿します。