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私は生きていた
「かなゑかな 1990」
深い夢の中にいたようだった。
目を開けると、森の中だった。
深い、深い森。もう何もかもわからない。私は生きていた。その事実を節々の痛みで知る。
でも、ここから動かなきゃという思いが私の体を突き動かした。
足が動かせない。引きずりながら、全景を見た。
そこは以前住んでいた街とはうってかわって田舎だった。
でもなぜだろう、涙が止まらない。
私でない私が、この涙を流させているみたい。
ここは故郷だ、とポツリ、口から出た。
でも駄目、ここにいちゃだめ、帰らなきゃ。
ふと振り返るとそこに「お父様」がいた。
まるで事の一部始終を理解しているかのような笑みで、お父様は深くうなずいて
「そう、それでいいんだ」と私の手をつかんでほほ笑んだ。
「この社木に、かなは住むんだよ」とお父様は言った。
「そうなの?嬉しい」この地はなぜか私にあっていた、だから特に否定する理由はなかった。