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俺様日記~1学期~  作者: 清野詠一
46/53

電波発信塔①



★7月13日(水)


今日も今日とて、何時も通りに穂波や智香と、のんびりと学校へ。

「いやぁ~、昨日は久しぶりに、マジ泣きしちゃったよなぁ。わはははは」

何て事をほざきながら校門をくぐり、下駄箱で上履きに履き替えて一階の踊り場へ。

ふと見ると、何やら職員室方面に人だかりが出来ていた。

「おや?なんじゃろう?」


「あ、多分、この間の期末の結果が貼り出されているんだよぅ」

と、穂波が言い、智香の馬鹿が

「確か、TOP30は発表されるんだよね」

と、言葉を足す。


「ほぅ……どりどり、俺様の名があるか、ちょいと見て来るかな」

俺はぶらぶらと廊下を横切り、職員室の前へ。

そして屯している若造どもを鋭い眼光で退けつつ場所を確保し、期末テスト成績上位者と書かれてある大きな用紙をザッと眺める。

「うむぅ……やはり俺の名はないか」


「当たり前でしょ」

智香の馬鹿が呆れたように呟いた。


「ふっ、黙れ赤点。この俺はやれば出来る子じゃからな。万に一つの可能性でも、トップ30に入っているかも知れないではないか」

もっとも、本気を出してやった憶えは全くないんだがね。

「しっかし、やっぱ1位は美佳心チンかぁ」

2年生と書かれた用紙の一番右端、1位の所には、伏原美佳心と大きく書かれていた。

しかも総合得点は……殆ど全科目満点だ。

さすがである。

きっと頭の中だけではなく、あのボリューム満点のおっぱいの中にも、脳味噌が詰まっているのだろう。


「でもなぁ……何であの跡部が、5位なんだろう」

中間で7位に入ったと言っていた時は、なんのパーティー向けジョークかと思ったが……

トリプルナックルのクレイジー跡部は、前回より少し成績を上げて5位の所にその名前が記してあった。

こうして名前が貼り出されている今でも、俄かには信じられん。

跡部はどう見ても、紙一重の向こう側にいると思うのだが……


「さて、他に知ってる名前は……」

俺は貼り出された用紙を右から順に眺める。

と、智香の馬鹿が、

「あ、二荒さんの名前がある」

そう言って、壁を指差した。


「ほぅ……26位か」

俺は二荒真咲の名前を確認し、何度も頷いた。

「さすが、真咲姐さん。文武両道とは、まさに彼女の為にあるような言葉だな」


「そうね」


「ふっ、智香も少しは真咲を見習えよ。もっともお前には、文も武も両方とも無いけどな。がはははは」


「くっ…殺すわよ、コーイチ」


「うわっはっはっは♪」

智香の馬鹿をからかうのは、実に愉快だ。

「ところで……他の学年はどうかにゃ?知ってる奴は載ってるかな?」


「喜連川先輩が6位に入ってるよぅ」

穂波が言う。


「ほほぅ…」

なるほど。これまたさすがだ。

やはり名家のお嬢様は、DNAからして俺みたいな庶民とは違うようだ。

もっとも彼女の場合は……遺伝情報どころか、染色体の数そのものが違っていそうなんだが……

「一年の所はどうだ?」


「水住さんが15位に入っているよぅ」


「姫乃ッチかぁ」

うんうん、やっぱ真面目な子は違いますねぇ。

「しっかしなぁ……姫乃ッチは当然として、最新AIを搭載したラピスの名前が無いって言うのが実に不思議なんじゃが……」


「ラピスちゃん、数字を見ると頭がクラクラするって言ってたよ」


「やはり構造に欠陥……もとい、なんちゅうか、妙な所で構造がリアルじゃのぅ」

ま、ラピスはそれだからこそ、可愛いんだがね。

「さてと、ざっと確認したし、そろそろ教室へ行くか?」


「うん、そうだね」

穂波と智香が頷き、歩き出す。

そして俺もその後を……と、思いきや、不意に後ろから制服を引っ張られる感触。


「ふにゃ?」

振り返ると、そこに優チャンがいた。

俺の制服の裾を、手で握り締めている。

「おぅ、優チャン。オハヨウだぜぃ。ってゆーか……どうした?何か顔色が悪いんじゃが……」


「……先輩」

俺を見上げる彼女の瞳に、いきなりブワッと大粒の涙が浮かんだ。

洸一チン、ちとビックリ。


「ど、どうした優チャン?もしかして……ポンポンでも痛いのか?」


「うぅぅ……せ、先輩ーーーーーーッ!!」

優チャンは叫びながら、俺の胸元へ飛び込んできた。

そしてグシグシと咽び泣く。

一体、何があったと言うのだ?



俺は暫し、呆然としていた。

いつも元気な優チャンが、肩を震わせながら泣いてるなんて……何が……何があったんだ?

・・・

もしかしてもしかすると、財布でも落としたのかな?


「ゆ、優チャン。一体全体、何がどうした?」

俺は俺の胸元に、顔を埋めて泣いている小柄で可愛い後輩の肩に、そっと手を置く。

といきなり、ズバンッと思いっきり尻を蹴られた。

「な、なんじゃっ!?」

振り返ると、穂波が「ガルゥゥゥッ」と獣の様に吼えており、智香もニヤニヤしながら、

「コーイチ。あんた今度は、何をやらかしたのよぅ」


「黙れ馬鹿。俺はなーんにもしてないわい」

多分。

「それで優チャン。本当に、何がどうしたの?」


「せ、先輩…」

ウルウルと瞳に涙を滲ませ、優チャンが鼻を啜りながら呟くように言う。

「わ、私……私、全科目赤点だったんです」


「……」

しまったーーーーーッ!!馬鹿がここにもいたッ!!


「も、もう……どうしたら良いのか……」


「あぅ…その……ねぇ?」

俺はどうコメントを返したら良いのかサッパリ分からず、ただ迷路のような吐息を漏らしながら少し困った顔で彼女を見つめていた。


うむぅ……どうしよう?

優ちゃんはスポーツ推薦でこの学校に入学したので、学力的に少々難があると言うことは知っていたが……まさか全科目赤点とは。

これでは智香の馬鹿と同じではないか。

いや、智香の馬鹿は曲がりなりにも一般入試でこの学校に何故か受かったワケだし……

脳みそレベル的には、何とかなると思う。

がしかし、優チャンは……


「せ、先輩。このままだと私、夏休みは殆ど補習を……」


「む、むぅ…」


「そうするとそうすると、練習も出来ないし、それどころか夏の予選大会にも出られなくて……」

優チャンの瞳に、またブワッと大きな涙が浮かぶ。


「む、むぅ~ん…」

なるほど。これは確かに、深刻な事態である。

成績が著しく悪い生徒は、夏休み返上で特別補習を受けなければならないのが、うちの学校のルールだ。

しかも特別な事情がない限り、それを欠席するという事は許されない。

そんな事をしたら、停学かもしくは退学である。

うむぅ……

TEP同好会は学校に認められたクラブじゃねぇーから、いくら予選があるからと言って、休む理由にはならないだろうし……

かと言って、補習を受けてたら予選に出る事は出来ないし……

それはつまり、優チャンの目標みたいなものが消滅してしまうワケで……


むぅ……これは即ち、将棋で言うと詰みという感じだね。

確かに、普通なら泣きたくなる状況じゃわい。

「ま、まだまだ大丈夫だぜ、優チャン」


「ほ、本当ですか?」


「あ、あぁ」

俺は彼女を元気付けるように、笑顔で頷く。

「確か、赤点を取った者には追試があった筈だよな?それでちゃんと良い点を取れば、夏の補習は回避されるじゃないかぁ」


「……馬鹿ねぇ、コーイチは」

凄い馬鹿の智香が呟いた。

そしてふんぞり返りながら、

「普通のテストでも赤点なのに、追試で良い点取れるわけないでしょッ!!」


「なに威張って言ってんだ、お前は?」

俺は眉を顰め、真性馬鹿の智香を睨み付ける。

そして気を取り直すように少し力を篭めて優チャンの肩を掴むと、

「追試は……確か土曜日の午後だろ?だったらまだ少しだけ間があるし、今からでも遅くはないぞ」


「ほ、本当ですか?」


「もちろんだッ!!」

まぁ、その可能性はかなり少ないような気もするが……

「今日から土曜日まで、みっちり勉強すれば何とかなるッ!!……と思う」


「そ、そうですねッ!!」

優チャンの瞳に、光が戻った。

そしてグッと拳を固め、

「いょ~し、頑張るぞぅ」


「うんうん、頑張り給へ」


「あ、でも……一人で勉強してもダメだと思うし……先輩、教えてくれますか?」


「お、俺?いや、俺はその……なんちゅうか、力不足だ。こーゆー時は、真咲姐さんを頼りなさい。その方が確実だ」

当然ながら、これは謙遜ではなく、紛れも無い事実だ。

そもそも俺だって、去年までは追試組だったしね。


「二荒先輩……ですか」

優チャンの表情が僅かに曇った。


さも有りなん…

真咲さんの勉強法は、思わず泣きが入ってしまうスパルタ形式だから、勉学が苦手な者にはちと厳しいものがありますからねぇ。

「ともかく、頑張れ優チャン。努力すれば、必ず結果は付いてくるからな。ま、それでもダメだったら……その時は、この俺が何とかしてやろう」


「は、はいッ!!私……頑張りますッ!!」


「うんうん…」

ま、本当はだ、この俺様の力を以ってすれば、テスト結果の改竄から追試問題の事前入手まで、余裕で出来ちゃうのだが……それでは彼女の為にはならない。

せめて今の内に、テストで赤点を取らないぐらいのレベルにまで上げておかないと……この俺が卒業した後、彼女は路頭に迷ってしまうではないか。


これもある意味、親心って言うヤツですかねぇ……

さてと、そうと決まれば俺は……優ちゃんが駄目だった時に備え、色々と関係各位へ根回し(先生達をそれとなく脅迫)でもしておくとして……

先ずは追試用のテストでもチョロまかしておきますか。



★7月14日(木)


今日は少々曇りがちな、蒸し暑い日。

俺は昼休み、額に汗を浮かべ、肩を落としてぶらぶらと歩き……着いた先はオカルト研究会の部室前だった。

何だか良く分からんが、いきなりのどかさんに放送で呼び出されたのだ。

嫌な予感と言うヤツを、ビシバシと感じるのだ。


とは言っても、逃げる事なんか出来ねぇーし……

俺はガックリと項垂れながら、

「ちぃーっす。お呼びにより、洸一チン参上しましたぁ」

と扉を開けると、そこには一人と一体と一匹のいつもの面子、トリオ・THE・オカルトが、薄暗い部室の中で相変わらずボォーっとしているではないか。

相変わらず、余人が見たらゾッとするような光景だ。


な、何だかなぁ……

何故かクーラーも無いのに妙にヒンヤリする部室に入り、俺はパイプ椅子を出しながら、

「んで、のどか先輩。本日のお呼び出しは、一体何用で?」


「洸一さん」

椅子に腰掛けている喜連川のお姫様は、太腿の上で丸くなっている黒兵衛の背中を撫でながら、相も変わらず鷹揚のない淡々とした口調で、

「実は……また新しいお薬を調合したのです。それでその臨床試験を……」

等と、これまた相変わらず非常に嫌な事を言ってくれる。


「あ~……そうなんですかぁ」

や、やれやれ。

わざわざ人を呼び出しておいて、人体実験の被験者になれとは……これだからこの人の常識は、遥か上空の衛星軌道上にあると言うか……


「キーーー」(洸一)

机の上に座っている魔人形が、手をバタつかせる。

「キキーーー」(言っておくけど、アンタは断れないわよ)


「えっ!?なんで?」


「キキ…キー」(アンタは一昨日の件で、のどかに借りがあるじゃない。それとも何?アンタは受けた恩を返さないつもりなの?)


「ぬ、ぬぅ…」

確かに、俺は一昨日、まどかの合コンを破壊するために、のどかさんの力を頼った。

だがしかし……


「さぁ洸一さん。飲むのです」


「って、問答無用ですかっ!?葛藤する時間も無しッスか!?」


「……」

のどかさんはズイッと、コーヒーのような黒い液体が入った小瓶を押し付けてくる。


ぬぅぅ……

俺は御恩と奉公を大事にする、鎌倉武士のようなナイスガイだ。

だからのどかさんの頼みを聞いて上げるのは、当然の義務であり使命なのだが……

さすがに、ヤバイと分かっている薬物を飲むのは如何なものだろうか?

心では飲んでやりたいと思っているのだが、本能が拒絶しているではないか。


「え、え~と……付かぬ事をお伺いしますが、この薬、一体何の効果があるんです?もしかして、死んじゃうんですか?」


「……精神感応」

芹香さんは呟くように言った。

「一時的に直感力を増大させ、テレパス能力を得る為のお薬です」


「ほ、ほぅ…」


「それを飲めば、個人差はありますが誰でも相手の心が読めるようになります」


「なるほど」

それは面白そうな薬だ。

ただ、成功していたら、の話だが。


「さぁ洸一さん。早く飲むのです」


「……あのぅ、前々から思っていたんですが、どーしていつも俺なんですか?そーゆー便利な薬なら、のどか先輩が直接試してみれば……」


「キキキーーーーーー」(馬鹿ね洸一)

酒井さんがビシッと俺を指差す。

「キキーー」(そんな事してのどかに何かあったら、どうするのよ)


「……」

やっぱ何かあるんじゃねぇーか……

しかも俺なら、何かあっても良いのか?


「キーーーー」(ほら、さっさと飲みなさい洸一)


「くっ…」


「……待つのです、酒井さん」

と、のどかさんが魔人形を抱き寄せる。

「洸一さんの言う事も、もっともです」


「……へ?」


「やはり最初は、私が試すべきでしょう」

そう言って喜連川家の魔女様は、傷一つないきめ細かな真っ白の腕を伸ばし、

「洸一さん。お薬を返してください」


ぐ、ぐぬぅぅぅ…

「あ~…分かりましたよ。俺が飲みますよ」


「……本当ですか?」


「もちろんッ!!」

やっぱ、何だかんだ言っても、のどかさんに飲ますワケにはいかねぇーよなぁ……

何かあったら、本当に一大事だし、我ながら何て紳士なんだか。


「……良し、です」


「って、何が良しなんですか?しかもガッツポーズまで作って」


「何でも無いです。さ、洸一さん。早く飲んで下さい」


「はいはいっと」

俺は恐る恐る、小瓶の蓋を開ける。

匂いは……微かに甘い香りが漂うが、それほどではない。

問題は、味と効果か……

俺は呼吸を整え、一気にそれを飲み干した。

「……ぐぇぇぇぇぇぇッ!!?」

昼に食べたカレーが、リバースしそうな味だった。



「どうですか、洸一さん?」

のどかさんは、興味津々と言った感じで瞳を光らせ、俺の顔を覗き込んでくる。

「何か肉体的に変調等は……」


「ど、どうですかって言われても……まだ何ともないです。ただ、犬のウンチョみたいな味がしました」

もちろん、犬の糞を食したことはないがね。


「……おかしいです」


「早っ!?って、何がおかしいんですか?」


「その薬は即効性の筈なのですが……」


「即効性……ですか?俺、なーんにも変わってないんですけど」


「私の考えてるいる事が……分かりますでしょうか?」


「全然」

俺が首を振ると、のどかさんはガッカリと……本当にガッカリと項垂れ、

「負けました……です」


「いやいや、なーんにも負けてないし、それどころか勝負じゃねぇーし」


「せっかく苦労して調合したのに……残念です」


「ま、そーゆー事もありますよ」


「……洸一さん。嬉しそう」


「とんでもない♪」

と、俺が満面の笑みで答えると同時に、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いたのだった。



午後の授業は、いきなり自習だった。

ま、期末も終わり、もうすぐ夏休みと言うこともあってか、先生もかなり投げやりだ。

もっとも、一応は配られたプリントを解かねばならぬのだが……


「ところで洸一くんや」

既に問題がいっぱい書かれたプリントを終わらせた学年首席の美佳心チンが、頬杖を付きながら、

「喜連川先輩の用事って、いったい何やったねん?」


「んぁ?」

美佳心チンのプリントを丸写しにしている俺は軽く肩を竦め、答える。

「あぁ、いつもの錬金術だよ。新薬の臨床実験だよ。もっとも、厚生労働省の許可は取ってないがな」


「そうなんか?で、どやった?」


「もちろん、いつも通り失敗さ。しかも運が良い事に、なーんの効果も現れてないわい。味は酷かったけどな」

俺はそう言って、独り高笑い。

そして軽く背を伸ばし、

「う~……っと、終わったぁ。美佳心チン、プリントありがとうさん」


「少しは自分でやったらどないや」

委員長はプリントを受け取りながら、お小言を言う。


「ふっ、期末テストで真っ白に燃え尽きたからな、俺は」


「その割には大した結果が出てないやないけ……」


「良いんだよ。去年まで赤点取ってたのに比べれば、格段の進歩だからな」

俺はフッと鼻で笑い、机の中から常備してある枕を取り出した。

「さて、寝る子になって、学校が終わるまで育つとしますかぁ」


「勝手にさらせや。ウチは少し、他の勉強でもするさかい」

委員長はそう言って、何やら難しそうなテキスト集を鞄から取り出し、ペンを走らせ始めた。

俺はそんな彼女を、枕に顔を埋めながらボーッと見つめていた。


やれやれ、美佳心チンは本当に、勉強好きって言うか真面目って言うか……

あんなに大きくてけしからんオッパイしているのに、実に勿体無いですねぇ。

・・・

何が勿体無いのか、サッパリ分からんが。


「……ん?洸一君や……何か言うたか?」

委員長様がペンを止め、怪訝そうな顔で俺を見やる。


「ふにゃ?別になーんにも言ってないぞよ?」


「……ほか」

美佳心ちゃんは再びテキストに視線を戻し、ペンを走らせた。


それにしても……

ミカチンの乳様って、戦闘力(大きさ)は幾つなんじゃろうか?

出会った時に比べて、少し成長したような気がするが……


「……洸一君や」

委員長はバンッと軽く机を叩き、ムッとした顔で俺を睨み付け、

「ウチの胸ばかり、見るなや」


「み、見てねぇーよ」

実は見てたが。


「嘘や。大きさが幾つぐらいとか、考えとったねん。そやろ?」


う゛っ……鋭い。

「滅相もない」

俺は枕の上でフルフルと頭を振った。

「意識し過ぎだぜ、美佳心ちゃんよぅ」


「……まぁエエわ」

どこか釈然としない様子で、委員長は再びテキストに取り掛かる。


やれやれ…

と溜息を漏らし、俺は再び、寝転がりながらボーっと彼女の横顔を見つめた。

ミカチンって、性格はキツイけど、やっぱ可愛いですなぁ……

もちろん、パイパイも大きいし。

でも、一体どんなパイパイをしてるんじゃろ?

でろ~んと垂れているのは勘弁願いたいですなぁ……あと、乳輪がデカいのもノーサンキュウだし、万が一、乳毛でも生えてた日には……俺は神を呪うね。


「こ、洸一クンや!!」


「のわッ!!?な、なんですかいきなり?」

美佳心チンはペンをギュッと握り締め、俺を怒りの形相で睨み付けていた。


「う、うちのは普通やッ!!」


「……はい?」


「せやから、ウチのは形も色も普通と言うとんのや!!変な想像はするなやッ!!」


「ちょ、ちょっと落ち着きなせぃ、お嬢さん。一体何のお話で……」


「何のって……ここや」

言って彼女は、自分の胸をポンポンと叩いた。

「洸一君、ウチの胸見て変な想像しとったやろ?ウチには何となく分かるんやッ!!」


「お、おいおい、言い掛かりは良し子さんだぜ。俺は別に……」

とそこまで言い掛け、俺はハッと息を飲む。

待てよ?

待てよ待てよ?

もしかしてもしかすると……

「美佳心ちゃん」

俺はジッと、彼女を見つめた。

そして頭の中で、彼女の胸に顔を埋めモミモミしちゃう自分を想像するやいなや、

「アホかーーッ!!」

いきなり頭を殴られた。

「な、何を考えとるんやッ!!このド助平がッ!!」


「ス、スケベって……これはやはり……」

間違いない、これは薬の効果だ。

あの精神感応……即ちテレパス能力を増幅させる薬の効果だ。

しかも受信じゃなく、何故か発信の方で。

つまり、俺の妄想は現在だだ漏れ状態なのだ。


「うぅ~む……困ったモンだ」

って言ってる場合じゃねぇーーーよッ!!

は、早く何とかしないと……

俺は慌てて立ち上がり、そのままダッシュで教室を飛び出すと、

「の、のどか先輩……」

授業中にも関わらず、魔女様は廊下に佇んでいた。

しかも俺を見て、

「……成功です」

腰の辺りでグッと小さなガッツポーズを作ったのだった。









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