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俺様日記~1学期~  作者: 清野詠一
37/53

ザ・球技大会/前編



★7月7日(木) 


 今日は七夕。

だからどーした、と高校生の俺は思う。

七夕などしょせん、餓鬼と地域活性化の為の祭りだ。

青春真っ盛りな俺様にとっては、まさに無用の長物。

だから今日もいつも通り、学校へ行って部活して家に帰るという、平和的パターンで過ごせると思っていたのだが……


「…ぬぅ」

俺は喜連川邸に来ていた。

いや正確には、強引に連れて来られていた。

なんでも今日は七夕パーティーをやるそうで、他の皆も色取り取りの可愛い浴衣姿で集まっている。

ま、タダ飯が食えるから、生活保護必須な一人暮らしの高校生な俺様にとっては、有難いといえば有難いのだが……


「しっかし、喜連川って言うのは、本当にお祭り好きだよなぁ……金持ちは良く分からんわい」

中庭の一角に設けられたバイキング形式の立食パーティー会場の中、中央に聳え立つ大きな竹を見上げ、俺は苦笑を溢した。

竹には七夕特有の飾り付けが施してある。


「別に、そんなんじゃないわよ」

と、何時の間にか隣へやって来ていた朝顔模様の浴衣に身を包んだまどかが、少しだけ頬を膨らましながら反論してきた。

「私だって、こんな七夕初めてだしね」


「そうなのか?俺はてっきり、毎年恒例の行事かと思ったんじゃが……」

山と盛られた料理を皿に取りながら、俺。

しかしさすが来喜連川だ……

料理が美味いッ!!

これ、余ったら持って帰れるかなぁ……明日の弁当に入れたいし。


「まぁ、色々とね」


「色々?」


「うん。実はさぁ、ラピスとセレスって、七夕初めてじゃない?それでね、風習とか色々話している内に、七夕パーティーをやってみたいって事になっちゃって……」


「ほぅ…」

なるほど、な。

確かに、ラピスとセレスは七夕なんて初めてじゃわい。

何しろ生後まだ半年も経ってないんだし。

しかし……なんだ、ラピスとセレスの為に、わざわざパーティーを開くって言うのは、まどかにしては優しいじゃねぇーか。

・・・

その優しさの100分の1でも、何故に俺様に与えてくれないのだろう?


「しっかし、見事な笹だねぇ」

俺は飯を食いながら竹を見上げていると、

「はやぁぁぁぁ……洸一しゃーーーーん♪」

浴衣姿のラピスとセレスが、下駄の音を響かせながら嬉しそうに駆け寄ってきた。


「よぅ、二人とも。楽しんでるかい?」


「あぅ、楽しんでましゅっ!!」

ラピスは元気いっぱい、鼻息も荒く答える。


「そ、そっか……それは何より。って、セレス……それは?」

黒地のシックな浴衣姿のセレスは、俺に何か差し出してきた。

「_短冊です」


「短冊?……あぁ、短冊か」

そう言えば、そんな風習もありましたねぇ。


「洸一しゃん、書くが良いでしゅッ!!そして吊るすが良いでしゅッ!!」

ビシッとラピスが笹を指差す。

「短冊に願いを書けば、確実に叶うんでしゅっ!!これは宇宙の法則、絶対的真理なのでしゅっ!!」


「そ、そうなんだ」

それは知らんかった。

「しっかし、短冊に願いなんて……幼稚園の時以来だぜぃ」

俺は手渡された長方形の和紙をヒラヒラとさせ、少しだけ鼻で笑う。

これって、確か日本だけの風習なんだよなぁ……

誰が何時、何の目的で竹に願いなんかぶら下げ始めたんだか。


「_洸一さん。書かないのですか?」

とセレス。


「ん?ん~……別になぁ。これと言った願いはねぇーし」

そもそも叶わねぇーし。


「_ですが、今回の笹は特別ですよ?」


「特別?」

何がだ?

・・・

実はこれは笹じゃなくて、コアラの大好物なユーカリの木とか……

いや、だからそれがどーしたって感じなんだがな。


「_はい。実はこの笹には、のどかさんの特殊な魔法が掛けられており、何でも通常の笹の256倍ぐらい願いが叶う確率が上がるとか何とか……私はそう聞きましたが」


「ほ、ほぅ…」

なるほど。あの人ならやりかねんっ!!

と、なると、これは俺様も何か書かなくては……

しかし、何を書けば良いんだ?


俺はチラリと、ぶら下っている短冊を確認。

え~と、なになに、【洸一っちゃんが将来、クマになりますように】か。

「……どこの特殊学級の子が書いたんだ?」

って、まぁ一人しかいないと思うが……

それ以外にも、【洸一の病気(主に頭)が治りますように】とか【洸一クンがもう少し真面目になりますように】とか、非常に俺様率の高い願い事ばかり。

ま、中には、【赤点回避】とか【胸がもう少しだけ大きくなりますように】とか、切実な願いの短冊もぶら下がっているのだが……

うぅ~む、どうしましょう?

このままだと、のどかさんマジックによって、俺はクマか真面目人間になってしまうかもしれん。


「ま、こーゆーのは、洒落だよね洒落」

なんて呟きながら、俺も短冊に願いを書いて、見えない所にそっと吊るす。

うむ、これでOKだ。


「_洸一さんは、何を書いたのですか?」


「ん?ん~……いつまでも皆が平和で暮らせますように、って書いたんだよ」

ちなみに、嘘である事は言うまでもない。


【全ての願いが叶いませんように】

By:俺様の短冊



★7月8日(金) 


教師がテストの採点に忙しいかどうか知らんが……

本日は授業が無く、学校行事の一つである「球技大会」の日。

クラス一丸となって様々な球技に挑み、ベスト・オブ・ボールキングを選ぶ大会なのだ。

・・・

良くは分からんが。


「ま、球技大会なんて成績とかにも関係無ぇーし……テキトーにやっていれば良いから、今日は楽ですな」

体操着に着替え、グランドでそんな事を豪太郎達と喋っていると、いきなり後頭部をスパーンと思いっきり叩かれた。

「だ、誰だっ!!?」


「ウチや」

稲妻だった。

「ンだよぅ。美佳心チンか」


「洸一君や。適当なんて、言うなや」

ブルマ姿が妙に似合う委員長は腕を組み、ジロリと俺を睨み付ける。

「大会に出るからには、勝つんやッ!!仏恥義理ぶっちぎりで勝つんやッ!!」


「あぅ……了解ですぅ」

委員長は根が神戸魂3代目の赤い稲妻なので、勝負事には燃える性質なのだ。

ってゆーか、単なる負けず嫌いなだけのような気もするが。

「ところで委員長は、何に参加するんだ?……ラクロスか?それともセパタクロー?」


「どっちも無いやないけ。ウチはバレーボールや」


「ほぅ…」

そう言えばのどかさんも、バレ-ボールに参加するとか言ってたな。

文字通り、コートの中の魔女様じゃわい。


「そーゆー洸一君は、何に参加するねん?サッカーか?」


「サッカーは豪太郎が出るし、バスケは多嶋が出る。そして俺様だが……この行事のメインイベント、男女混合ドッヂボールじゃけんのぅ」

――説明しなければなるまいッ!!

男女混合ドッヂボールとは、男女混合8人で競うドッヂボールなのだ。

以上。説明終わり。


「ほぅ…」

美佳心チンは少し驚いたように、何度も頷いた。

「洸一君、勇気あるやないけ」


「は?勇気?」


「せや。だって男女混合ドッヂって言うたら、確か二荒さんが出るって……ウチ、風早さんに聞いたで?」


「え……?」←目が点

あ、あれれ?

おかしいぞ?

「俺、智香に聞いたら……真咲姐さんは確か『かたき』に参加するって……」


「……かたきって何やねん?そないな子供の遊び、球技大会にあるわけないやろ」


「え?え?と言うことは……」


「洸一君。風早さんに謀れたなぁ」

委員長は苦笑交じりに俺の肩をポンポンと叩いた。

「二荒さんは学園一の最強パワーガールや。二荒さんがドッヂに参加するって言うだけで、他のクラスではドッヂは既に罰ゲーム扱いや。……洸一クン、頑張りーや。骨は拾ったるさかいな」


「お、おのれぇ……智香めっ!!良くも、良くもこの俺様も騙してくれたなッ!!」

真咲が参加するって分かっていたら、絶対に俺はスルーしていたのに……

「美佳心チン。俺と競技……代わってくんない?10円あげるから」


「それはウチに死ねと言うてんのか?」



球技大会が始まった。

各種目が、それぞれ指定の場所で試合を行っている。

我がクラスの突撃委員長、アサルト美佳心チンも、関西弁で相手を威嚇しながら乳を揺らして獅子奮迅の活躍を見せている。

しかしながら……多分、バレーボールでの優勝は無理だろうと思う。

何故なら……

俺はチラリと、隣のコートに目をやる。

そこには学園の神秘、暗黒卿のどか御嬢様率いる3Aの面々が、何故か悲壮な顔で試合をしていた。


「むぅ…」

俺は唸る。

バレーボールは6人制なのだが……

のどかさんは戦っていないではないか。

ただ中央に佇んでいるだけだ。

その他の五人が、何かに取り憑かれたかの如く動いている。

更にだ、対戦相手ものどかさんには絶対に手を出さないかのように、ボールを返してくる。

ま、それも致し方あるまい。

何しろ、相手は天下の喜連川の御令嬢様だ。

万が一、ボールなんぞを当てでもしたら……色んな意味で未来は絶望的だ。


「――って!?」

何て考えている傍から、敵の一人が鋭いアタック。

それは不幸にも、のどかさんの顔面付近へ……


――チュンッ!!

と、か細い風切り音と共に、のどかさんの手前でいきなりボールは破裂した。


「……」

一体、何が起こったのだろう……?

俺は深く考えない。

校舎の窓から、スーツに身を包んだ葉巻の似合うデュークらしき男がライフルを構えている姿がチラチラと見えるのだが……

俺は深く考えない。

考えたら負けだ。


そして更にだが……

違うコートでは、姫乃ッチとラピスが参加している1Dが試合をしていた。

此方は此方で、ラピスがかなり足を引っ張っているものの、姫乃ッチの規格外超常パワーのお陰で、まるでボールが生き物の如くコート内を蹂躙していた。

ってゆーか、既にバレーボールじゃねぇ。

3Aと1D……

この二つの強豪を相手に、果たして美佳心チンは勝てるのだろうか?


ま、多分無理でしょうなぁ……

如何せん、戦力が違いすぎる。

いくらロンリーライダー美佳心チンに気合と根性があるとしても、対戦相手はダーウィンが見たら卒倒しそうな進化を遂げた異能戦士達だ。

とてもとても、勝てそうには思えない。


「って事は、総合優勝のカギを握るのは、この学園キング洸一様が参加する混合ドッヂと言うことになるんだが……」

ところで、俺様チームのメンバーは……誰だっけ?

穂波とトリプルナックルが参加するって言うのは知ってるが、野郎どもは誰だ?

なんて首を捻っていると、

「あ、洸一。ここにいたの?」

と、少年食い豪太郎とキ○ガイ大好きの多嶋が現れた。


「よぅ。なんだ?何か俺様に用か?」


「用って……もうすぐ僕達の試合が始まるよ?ほら、早く行かないと」


「……試合?はて……お前達はサッカーとバスケだろうが?」

総合優勝をもぎ取る為に、そう決めた筈だぞよ。


「今年から少しルールが変わったぞ」

と多嶋。

「不公平を無くす為に、部活をしているヤツは、その部活の競技には参加できないって事になったんだけど……神代、お前知らなかったのか?」


「知らないも何も、俺はそんな事を許可した覚えは無いぞよ?ってか、メンバーを決める時はそんなルール無かったじゃんか」

ぐぬぅ……土壇場になってこう言うことを決めるのは、またしても生徒会か!!

おのれぇぇ、毎度毎度、俺様の邪魔ばかりしくさってからに……

いつか必ず、ギャフンと言わせてやる。


★ 


グランドの中央に設けられた球技大会の目玉とも言える男女8人混合ドッヂの試合場。

そこでは早くも熱戦が繰り広げられていた。


「おーおー……皆さん、派手にやってますなぁ」

俺は腕を組み、試合を眺め頷く。

戦っている選手の一人が顔面にボールをぶち当てられ、鼻血を流している凄惨な試合だ。

「あ~……ところで、メンバーの後一人は誰なんだ?」


「僕だよ…」

と、多嶋の背後からモヤシっ子が現れた。

クラスメイトの一人みたいだが……はて?誰だっけ?


「一応、クラスの副委員長を務める朝倉なんだけど……」


「ふんっ、お前なんぞはヒョロメガネで充分じゃッ」

ってゆーか、こんなダメそうな奴が戦力なのか?

「で、俺様チームの一回戦の相手は、どこのクラスだ?」


「3Bだよ」

豪太郎がにこやかに言う。

「生徒会長のいるクラスだね。会長も、何かこのドッヂに出るって聞いたけど……」


「ほぅ…」

早速にチャンス到来か。

あの七三分けを、合法的に葬れるチャンスだ。

「よっしゃっ!!ンだったら……気合を入れていっちょ行きますかッ!!」



我が学園の男女混合ドッヂは、普通のドッヂボール同様、当たった奴は敗者となり外野へ回るのだが……

時間短縮のサクサクルールの為、一度出た外野は敵に当てても復活は出来ない。

コート内に戻る事が出来るのは、初期外野のみ。

要は、相手選手8人全員に一度ずつボールを当てた時点で、ゲームは終了。

即ち、如何に最後までコート内で生き残ることが出来るかが、勝敗の行方を握っているのだ。


「ちゅーわけで、初戦の相手は生徒会長率いる3Aなんだが……俺様のプライドに掛けて、何としても勝つぞよ」

俺が気合を込めてそう言うと、穂波は目を爛々と輝かせ、

「うん♪洸一っちゃんの為に頑張るよぅ……ガォウッ!!」

グッと力強く拳を握る。

もちろん、トリプルナックルの面々もそれは同じらしく、かなり気合を入れている。

特に跡部なんかは、既に朝からチャクラ全開なのか、「ウヒョヒョヒョヒョヒョッ!!」と奇声を発してクルクルと回っていた。

うむ、あっち側の住人も、こーゆー時は実に頼もしいわい。


「さて、先ずは最初の布陣なんじゃが……初期外野は2人以上がルールだったな。ならば俺と豪太郎。そして多嶋の3人が外野へ回ろう。残りの面々はとにかく、ボールに当たらずに逃げろ。そして運良くボールをゲットしたら、即座に外野へ回せ」


「うん、了解だよぅ」

穂波を始め、小山田に長坂、ヒョロメガネは頷くが……

「うぇぇぇ~……ちょっと気持ち悪いの心」

クルクル回っていた跡部は、蒼い顔してへたり込んでいた。

・・・

なんか、凄い不安だ。



ピーッ!!と言う笛の合図とともに、試合開始。

相手は上級生とは言え、七三分け生徒会長とお下げメガネの副会長を除けば、警戒すべき選手はいない。

つーか、どれも皆、かなり運動機能的に「?」マークが付きそうなモヤシどころかエノキみたいな奴等ばかりだ。


でもまぁ、油断は禁物か……

先行ボールは相手側。

が、ひょろひょろっと、非常にスローモーなボールを投げたかと思うや、それをすぐさま跡部が、まるで猫のように素早くしなやかにキャッチ。

しかも、

「神代くぅ~ん……パスです」

とか言いながらも、全然視線とは違う方向にボールを投げ、見事に相手を一人瞬殺。

中々の頭脳プレイだ。


むぅ……この分なら、一回戦は余裕かな?

何て事を考えていると、

「そう上手くはいかないよ」

コートの中から、相変わらずキッチリ分けた七三分けがどこか恐ろしい生徒会長が、外野の俺に近付き話し掛けてきた。

しかもビシッと指を突き付けながら、

「僕は……君には絶対に勝つッ!!」


「お、おいおい。生徒会長ともあろう御方が、個人攻撃かよ」

いやはや、嫌われたモンだねぇ……


「こういう機会でないと、学園の癌である君を排除できないからね」


「……」

なんか、面と向かって凄い事を言われているような気がするんじゃが……

とその時、俺の元へ穂波からボールが飛んで来た。

「おろ?」

俺はボールをキャッチ。

そして目の前には、戯言をほざいていた生徒会長。

その距離、僅か1メートル弱。


「……」

彼は蛇に睨まれた蛙の如く、固まっていた。


「……悪ぃな、会長。えへ♪えへへへへへへ…」

おっと、思わず笑みが零れてしまうわい。

「大丈夫大丈夫。痛くしないから……な?」

言って俺は、渾身の力と恨みを篭めて、ボールを放ったのだった。


★ 


「いやはや、快勝快勝♪」

俺はガッハッハッと高笑いを零しながら、穂波に肩を揉ませていた。

実に爽快な試合だった。

何しろ、我が軍は一切の損害を出さずに、相手を撃破なのだ。

「しかも憎っくき生徒会長を、至近距離で成敗してやったしな」

もっとも、顔面にぶち当ててメガネを割ってしまったのには、些か良心の呵責を覚えるが……

この洸一のモットーは、女性に優しく男に厳しく、だから仕方があるまい。

「この調子で、二回戦も軽く突破と行きたいのぅ」


「大丈夫だよぅ」

穂波が俺の肩をモミモミしながら、にかやかに言う。

「だって、みんな運動神経、良いもん」


「まぁな」

確かに、穂波の言う通りだ。

ヒョロメガネはちと鈍そうだが、俺や豪太郎、多嶋は言うに及ばず、トリプルナックルや穂波も、それなりに運動は得意な方だから、その辺のクラスの奴らには負けまいて。

「しかし、まぁ……本当に油断は禁物だな」


「……その通りだ、洸一」


「ふにゃ?」

背後から呼び掛けられ、俺は振り返る。

「お?なんだ、金ちゃんじゃないか」


「よぅ……相変わらず、榊さんと仲が良いな」

金ちゃんが苦笑を零しながらそう言うと、穂波は俺の肩をギュッと鷲掴みながら、

「え~……金田君、そんなんじゃないよぅ♪うひひひひひひ♪」


ぬぅ…

「ところで金ちゃん、何か用か?金ちゃんも確かドッヂに参加だろ?試合は終わったのか?」


「負けたよ」

我が友はポリポリと頭を掻いた。

「完膚なきまでに叩きのめされた。……しかも一年にだ」


「ほぅ…」

金ちゃんを初め、2Dの連中もそれなりに運動神経の良い奴らを集めたと聞いてたが……

「で、どこの一年坊主にやられた?」


「1Bだ」


「1B…」


「私達の次の対戦相手だよぅ」

と、穂波。


「ほほぅ……なるほど」

しかし1年B組か。

なんか、どこかで聞いたっちゅうか、知り合いがいたような、いないような……


「お前さんの可愛がっている後輩一人の為に、僕のクラスは全滅だよ」


「俺の後輩……って、あぁ、優チャンか」

そう言えば、確か1Bだったよなぁ。


「参加メンバー8人中、5人が保健室送りだ」


ゲッ…

「そ、そうなのか?」


「まぁな」

金ちゃんは渋面を作り、ハァ~と溜息を吐いた。

「僕なんか、一度もボールに触れなかったよ」


「それはそれで問題あるような気がするが……しかし、そうかぁ……優チャンが出てくるのかぁ」

むぅ、これはちと、予想外だ。

真咲姐さんの2Cと当たるまでは余裕だと思っていたが……まさか伏兵がいたとは。

しかも相手は優チャンだ。

真咲には劣るとはいえ、その戦闘力は俺達のそれを遥かに凌駕する。

これは少し、何か作戦を考えて対処しなければ……

「むぅ」

どうする?

どうする、俺?


「あ、洸一っちゃん」


「……ん?なんだ穂波?俺様は今、物凄く考え中なんだが……」


「試合、始まるよ?」


「えっ!?もうっ!!?」






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