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俺様日記~1学期~  作者: 清野詠一
25/53

偶には平穏な日々



★6月16日(木)


朝は少し小雨がパラついたもの、昼前にはカラッと晴れた良い天気の今日この日。

俺様は何時もの如くグータラと過ごし……もとい、戦士であるが故の休息を取りつつ、気が付けば放課後。

俺は鞄片手にいそいそと裏山へと向かう。

今日はこれまた何時もの如く格闘技の練習。

だが、それ以外にも、実は美佳心チンのダイエットに付き合うのだ。

まさに、ムヒョー、である。

何がまさになのかサッパリ分からんが。

ともかく、関西系メガネ美少女(しかも巨乳)と、体操服を着て仲良く特訓。

ブルマが……我が栄光のブルマが目の前で炸裂なのだ。

お分かりだろうか、この興奮?

ツルペタ系の優チャンでは決して味わえ無い視覚エフェクト(乳揺れ等)が、目の前で堪能出来るのだ。

じかも無料タダで。

正直、こんなにワクワクするクラブ活動は初めてである。


「まぁ、僕ちゃんも一応は思春期だしねぇ……」

そんな事を独りごちりながら、俺は早足で裏山の社へと続く階段を駆け上がる。

しかし美佳心チンも、別に太っているとは思わんが……

ま、ダイエットしたいというのなら、これは手伝うしかあるまいて。


「どんなダイエット運動をさせてやろうかのぅ。……うししし」

思わず笑みが零れる。

「個人的には、見ているだけじゃツマランから、肉体密着型の運動がエエなぁ……どんな運動か分からんがな!!」

社に着いた俺は、呼吸を整え、気さくな笑顔で境内の裏側へ。

「……ありゃ?姫乃ッチ」


「あ、神代さん……」

そこには、特殊能力で重たいサンドバッグを木の枝に吊るしている水住姫乃ちゃんの姿があるだけだった。


「魅惑のブルマ娘……もとい、オラがクラスの委員長様と優チャンは?」

俺はキョロキョロと辺りを見渡す。


「あ、いま着替えているところです」


「そうなんだ。……んだば、俺様も着替えるかな」

そう言いつつ、更に社の裏手に回って体操服にお着替え。

白さが光る、半そで短パンの夏用体操服。

グッと二の腕に力を篭めると、筋肉がモッコリと盛り上がる。

中々どーして、俺様も逞しくなったものじゃのぅ……

なのに、未だまどかとか真咲姐さんに虐げられているのは、何故なんだろうねぇ?


「さて、みんなの着替えは終わったかにゃ?」

俺は期待に胸を膨らまし、ついでに少しだけ別の場所も膨らましつつ、そそくさと元の場所へと戻ると、

「あ、先輩」

木陰から、優チャンが登場。

お馴染みである、3倍は強くなれそうな赤いブルマが、実に見目麗しい。

渇き切った俺様の心を癒してくれるが如しだ。


いやぁ~……見慣れていても、やはりブルマ姿の美少女は、エエもんですなぁ……

「よぅ、優チャン。今日も元気いっぱいじゃのぅ」


「は、はいッ」

可愛い後輩はニコニコと、邪気の無い笑みを溢す。


「ところで……話は聞いてると思うが、ウチのクラスの委員長様は?」


「いま着替えているところで……あ、来ましたよ」


――ムッ!!

俺は光の速さで振り返る。

そして木陰から出てくる美佳心チンを発見し、

「なんでジャージやねんッ!?」

思わず関西弁になってしまった。

我がスタイル抜群の委員長様は、この蒸し暑い時期に、何故か上下とも長袖長ズボンの、色気の無いジャージ姿だったのだ。

なんちゅうか、裏切られた、と言う気持ち。

金返せ、と声を大にして叫びたい。

「お、おいおいおい、美香心チャンよぅ……何故にアンタ、この暑いのにジャージなんだ?」


「はぁ?ダイエットやからに決まってるからやないけ」

美佳心チンは首を傾げた。

「たくさん汗を掻いた方が、効率がエエやろ」


「……それは迷信だ」


「は?」


「最新の研究に拠れば、ブルマを着用して運動した方が痩せると言う事だぞよ。ネイチャーでもそう発表されておった」


「ア、アホか……」

美佳心チンは心底呆れた顔で俺をマジマジと見つめ、

「なんで洸一君はそないに、真顔でウソが吐けるんやか……」


「う、嘘じゃねぇべっ!?」

捏造ではあるが。


「魂胆が見え見えやで」

ジト目で美佳心ちゃんは俺様を見つめる。

「全く、普段から硬派だ何だの言ってる割には、ホンマに妙な性癖を持っとる男やなぁ……」


「そ、そんな事は……ないモン」


「そもそもや、ブルマが好きやったら、すぐそこに葉室さんがおるやないけ」


「優チャン?」

俺は振り返る。

そこには見慣れた、可愛い後輩の姿が……

「……いやぁ~……なんちゅうか、少しボリューム的に物足りないっちゅうかねぇ……」

言った瞬間、優チャンは笑顔で俺の喉首を鷲掴んだ。

指先から、殺気と言うか怨念が伝わってくる。


「……先輩。物足りないって、何がですか?何が足りないんですか?」


「こ、言葉のあやだよぅ…」

正確に言えば、足りないのは俺様の知恵だ。

迂闊なり、洸一チン。


「……そうですか」

優チャンは俺を解放した。

が、

「では先輩、今日は特別メニューです。足腰を鍛える為に、走って来て下さい」

笑みを絶やさず彼女はそんな命令を下す。


「ラ、ランニング……ですか?」


「はい。ただし、赤いフェラーリを3台見つけるまで、帰って来てはダメです」


ギャフン……

「お、おいおい優チャン。なにをそんなに怒ってるんだよぅ…」


「はぁ?別に……怒ってなんかいませんよ?」


「そ、そう?」


「はい。私は別に、胸が小さいとか寸胴体型とか、そーゆー事は気にしてませんから」


ぬぅ……

「な、なら良いんだけど……俺はてっきり、持たざる者の嫉妬かと思ったよぅ」


「……あ゛?」

優チャンは俺の喉首を再び掴んだ。

「誰が、何を持ってないんですか?……あ゛ぁ?」


「な、何でもないよぅ。独り言ですよぅ。てへへへへへへ」

うぅ~む……

やっぱ優チャン、少年のような起伏に乏しい自分のボディに対し、少しコンプレックスがあるみたいですねぇ。

何とかしてやりたいが、こればっかりはなぁ……

そう言えば、乳は揉むと大きくなる、と良く聞くな。

・・・

今度、試してみようかのぅ……

ま、命懸けだがな。



★6月17日(金) 


本日のTEP同好会の活動は、委員会があるとか何とかでお休み。

そこで久し振りに俺はオカルト研究会の方へ顔を出すが、

「キーーー(のどかは三者面談よ)」

と言う、酒井さんのお言葉で、こちらも今日は臨時休業。

ちなみに面談に来ているのは忙しい御両親ではなく、ロッテンの爺さんだが。


「しゃーねぇ……偶には街でもブラつきますか」

と言うわけで、俺は商店街を抜け、駅前ビルへとやって来ていた。

各種テナントが入っている華やかな巨大ショッピングモールはこの時間、学校帰りの生徒達で賑わっている。

「さて……」

先ずは本屋で軽く立ち読み。

それからゲームショップを覗き、新作から中古の品までをチェック。

中々グッドな雰囲気を醸し出す大きなお友達向けPCゲームを発見したが……さすがの俺様とて、学生服を着ている以上は買う事が出来ない。

18禁のシールが貼ってあるし。

だからここは涙を飲んで断念だ。

それから靴屋やアクセサリーショップを冷やかし、最後はCD/DVDの専門店へ。

お気に入りのバンドの新作CDや、大好きなSF系映画のソフトもあったが……

何故か買ったのは、アニメのドラマCDだ。

何となく、買ってしまったのだ。


「ま、俺様もマニアじゃけん…」

そんな事を独りごちりながら、更にブラブラと駅ビル内を散策していると、

「……ふにゃ?」

スタンドコーヒーのチェーン店の前で、見知った顔を発見した。

薄紅色のキュロットスカートに、白地に金色のラインの入った半袖の制服。

お嬢様学校である梅小路女子学院こと梅女の、中等部の制服だ。


あれは澪香ちゃんか……

相変わらず、まどかの小型版って感じがしますねぇ。


ま、それはどーでも良いとして、澪香ちゃんは数人の友達といるようだが、その周りを取り囲むように、馬鹿そうな顔をした男達がちょいと必死な感じで声を掛けている。

やれやれ、ナンパですかい……

ま、澪香ちゃんはそれなりに可愛いから無理もないか。

本来なら、こーゆー事も彼女の社会勉強の一つと言うことで、無用な争いを避けるためにも俺様はスルーしちゃうのだが……

如何せん、澪香ちゃんは困ったような顔をしているし、何より、声を掛けている男子学生はウチの学校の生徒のようだ。


あ、あらまぁ。……ったく、だから俺様の学校は、世間から品が無い学校って言われるんだよ……

もっとも、穂波や智香の馬鹿に言わせれば、俺様一人で品位を下げている、とか何とかヌカしていたが……

アイツ等に言われると、何かこう……納得できんぞ。


「はぁぁ……しゃーないですねぇ。ここは我が校の名誉を守るため、少し注意してやるとしますか」

それに、澪香チャンに恩を売っておけば、後々何か良い事があるかも知れないしな。

具体的に言うと、まどかに殴られている時に助けてくれるとかね。


――よっしゃっ!!

気合を篭め、ドシドシと床を踏み鳴らしながら俺は彼氏彼女達の輪に近づき、

「よ~ぅ、澪香ちゅわぁん♪」

優しげな声を掛けながらも、タイガーと呼ばれる鋭い眼光で野郎どもを睨み付ける。

彼奴らは、いきなり現れた俺を見るや、ギョッとした顔つきに変わっていた。


ふむ……見慣れない顔だな。

一年坊主か?

「澪香ちゃん、久しぶりじゃのぅ。……ところで、どうした?困った顔して?」

言いながら俺は、野郎どもをジロジロと眺め回した。

「……見たところ、俺様の学校の生徒のようだが……俺の知り合いに何か用か?ん?」


「……」

男子学生、声も無し。


「……ふんっ。用が無いんだったら、3つ数える内に消えろ」

俺は低く笑いながら、指を3本立てた。

そしてそれをゆっくり折り曲げながら、

「1…」

と呟くや、生徒達は一目散に逃げて行ってしまった。

何と素早い事か……

「や、やれやれだねぇ」


「神代さん。どうもありがとう♪」

澪香ちゃんが俺の制服の裾を引っ張りながら、デヘヘヘ~と笑う。

さすが、喜連川財閥のご令嬢の一人だ。

笑うとかなり可愛い。

「あの人達、しつこいから困っていたんだよぅ」


「そーゆー時は、キッパリと断った方が良いぞ。言い寄る男を巧くあしらうのも、お嬢様のスキルだぞよ」


「そうは言っても…」

と、澪香チャンは少し困った顔だ。


「……まぁ良いや。そーゆー事は、まどかの馬鹿チンにでも教わりなさい。ま、アイツの場合、男をあしらうと言うよりは、撲殺する方が得意だと思うけどな」

そんな事を言い、俺は「じゃっ」と片手を上げて帰ろうとするが、

「ちょっと待ってよ神代さん」

澪香チャンは俺の制服の裾を掴んで離さない。


「ふにゃ?何かな?」


「ここで会ったのも何かの縁だし、ジュースでも奢ってよぅ♪」


何か言い出したぞ、この小娘は……

「お、おいおい、ナンパ野郎から助けたのは俺だぞ?普通、そっちが礼を述べるんじゃないのか?」


「なによぅ……神代さんは、年下の女の子からタカる気なの?」

澪香ちゃんは頬を膨らませ、ジッと俺を見つめる。

こんな所は、本当にあまどかの馬鹿にそっくりだ。

なんて嘆かわしい……


「ったく、分かったよぅ」

俺はヤレヤレな溜息を吐いた。

そして澪香チャンや、彼女の友達らしき数人の女の子達に向かって、

「今日は特別に、偉大な兄貴と御近所で評判のこの俺様が奢ってやるか」


「本当?」


「あぁ。そうと決まれば、付いて来い小娘ども。地下にある、ケーキが美味いと評判の店に行くぞよ」

ま、そんなこんなで、何故か奢る羽目になった俺様ちゃん。

とんだ散財だ。

もっとも、澪香チャンのお友達は、梅女の中等部へ通う事だけあってか、どれも皆、品が良くて可愛らしかった。

俺様、プチ・ハーレムと言った感じで、中々に楽しかったわい。

もっとも、かしましいのには少し辟易したがね。






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