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俺様日記~1学期~  作者: 清野詠一
13/53

THE新人戦/怪しい二人



★6月11日(土) 


 遂に来てしまった新人戦当日。

外は素晴らしき青空……は広がってなく、まるで俺の運命を暗示するかの如く、どんよりと曇っている。

そして俺は、予想通り体と心の調子が今一つだった。

体の方は、昨晩のスタミナ料理のせいで、元気なんだか元気じゃないんだか良く分からないし、心の方は、不安で今にも押し潰されそうなのだ。

もちろん、不安といっても、試合に対する事ではない。

では何が不安なのかと問われると答え難いが……ともかく、言いようの無い不安を感じるのだ。

おそらく、のどかさんマジックの影響で、本日の僕ちゃんの運勢がすこぶる悪い、と言うことに起因しているのだろう。

願わくば、五体満足で無事に帰って来られますように……

ま、そんなこんなで、消化吸収の良い朝食を食べた後、皆の声援を受けつつ、俺は屋敷を後にした。

まどかは一旦梅女へ行き、クラブの皆を引き連れてやって来るとのことだった。



駅で優ちゃんと姫乃ッチと合流し、そのまま電車に乗ること約30分。

着いたのは喜連川総合体育館。

滅茶苦茶に大きい……

ドーム球場並みの巨大施設だった。


「うへぇぇ……こんなでっけぇ会場でやるのかよ」

さすがの俺様も、ちょいとビビり気味。

姫乃ッチはポカーンと口を開けている。


「新人戦は、大学生や社会人の方の試合も同時に行われますし、オープン参加ですから選手も多いんですよ」

と優チャン。


うむぅ……

「確かに、多いな」

俺は呟いた。

会場の入り口は、黒山の人だかりだ。

しかも皆ごっつい。

筋骨隆々の暑苦しそうな猛者ばかりだ。

TEPなんてマイナーな格闘技団体だと思っていたけど、中々どーして、盛況じゃねぇーか……

苦笑を浮かべ、それとなく周りを観察。

……なるほど。

俺達のように小人数で参加する奴等もいれば、正式なクラブ活動だろうか、結構な人数を送り込んでくる学校もあるのか……

バスをチャーターしている学校あるし……エエなぁ。


「あれ?二荒先輩?」


ん?

優チャンの声に振り返ると、すぐそこに真咲姐さんが立っていた。

こちらを向き、どこか戸惑ったような顔をしている。

「よぅ、真咲。早いな?もう応援に駆け付けてくれたのか?」

俺は彼女に近づき、気さくに声をかけた。


「う、うん…」

真咲姐さんは笑いながら頷くが、どこか表情が硬い。

はて……?

どうしたんでしょう?

まさか、まどかの手料理でも食わされたか?

「他の皆は?一緒じゃねぇーのか?」


「え?それは、その……」


「???」

ほ、本当にどうしたんだ、真咲姐さん?何か歯切れが悪いんじゃが……

俺は思いっきり首を傾げる。

優チャンも少し、不思議そうな顔をしていた。

ふむ、気になりますねぇ……

どうも何時もの彼女らしくない。

直感だが、何か隠している感じがする。

元々真咲姐さんは、嘘を吐くのが下手なタイプなのだ。


匂う……

怪しい匂いがプンプンとしますねぇ……

俺は更に訝しげな表情で真咲姐さんを見つめるが、不意に後ろから肩を叩かれ、

「ちょっとぅ、そんな所で何してるのよぅ」


ふにゃ?

振り返ると、梅女の制服に身を包んだまどかが立っていた。

「よぅ、まどか。思ったより早かったな」


「そう?」

まどかはそう言うと、チラリと真咲を見やり、

「ところで洸一。あんた受付は終わったの?」


「へ?いや、まだなんじゃが……」


「……ったく、本当に愚図ね」

まどかは眉根を寄せ、軽い溜息を吐いた。

「その調子じゃ、まだ対戦表も見てないんでしょう?」


「まぁな」


「はぁ~…これだから洸一は」

まどかはやれやれと言った感じで、首を横に振った。

そして入り口を指差しながら、

「受付けの横で対戦表を配っているから、貰って来なさいよ」


「そ、そうだな」


「……ほら、早く行くっ」


「お、おぅ……」

些か腑に落ちない気持ちで、俺は優チャンや姫乃ッチと共に受付へ向かうが、チラリと後ろ振り返ると、まどかは真咲と、何やら真剣そうな面持ちで話し込んでいた。

ぬぅ……

この間から、真咲姐さんと何を話しているのやら……

気になる。

実に気になるが……

ま、今はそれよりも、少し自分のことを心配しようか。



受付を終了し、取り敢えず中二階の観客席にスペースを確保した俺は、優ちゃんと連れ立って先ずは指定された更衣室へ。

「さて……」

優チャンに手渡されたバッグ片手に更衣室へ入ると、ムワッと青臭い男の臭気。

うひぃ~……やだやだ。

ごっつ怖そうな野郎ばかりで、気が滅入って来るぜ……

俺はムキムキマッチョな野郎どもの脇を通り抜け、目立たないように更衣室の隅の方でお着替え。

バッグから優チャンと姫乃ッチのお手製の胴着を取り出し、

「……ぬぅ」

暫し固まってしまった。

臙脂色をしたそれは、まんま世界的に有名な金髪宇宙人格闘アニメをパクッたかのような胴着だった。

そして胸には『葉室流』の文字。

背中には、優チャンが照れ臭そうに『お洒落ポイントです』と言っていた、文房具屋で売っている安物の印鑑のような丸に『優』の大きな文字。

な、なんて恥ずかしい胴着なんだ……

いや、胴着と言うよりは……なんちゅうかコスプレ衣装?

こんなモン着て歩いていたら、思わずカメ○メ波だって打てちゃうよ、俺は。


「ぐぬぅぅ……こんな事なら、学校ジャージでも持ってくれば良かった」

ボヤきながら俺は、仕方なくお手製のコスプレ胴着を着込む。

サイズは計ったかのようにピッタリだった。

ふむ……

デザインはちと著作権法違反だが、中々に動き易いな。

俺は脱いだ服をかばんに詰め、人いきれで蒸せ返りそうになる更衣室をそそくさと出た。

ぐずぐずしていて因縁でも付けられたら、たまったモンではない。

何しろ、皆さん非常に血の気が多そうですからねぇ……


「さてと、着替えも終わったし……開会式まで、取り敢えず席に戻っているかな」

そんな事を独りごちりながら中二階の席へ戻ろうとするが、

「お…?」

背中を引っ張られる感覚に、慌てて振り返る。

と、そこにはハーフパンツにやや丈の短い群青色の胴着と言う、サンボ風な出で立ちの小さな女の子が、俺の胴着の裾を、指で掴んで立っていた。

彼女の胴着には、金の刺繍で梅小路と書かれてある。

「み、みなもチャン」


「師匠」

とても高校生には見えない優チャンのライバルは、嬉しそうに微笑んだ。

つられて俺様もデレデレと鼻の下をモンキー並に伸ばしてしまう。


「久しぶりだなぁ、みなもチャン」

俺は彼女の頭に手を乗せ、グリグリと撫でる。


「う~……」

みなもチャンは目を細め、どこかうっとりとしていた。


う~む、可愛いのぅ……

相変わらず、お家に持って帰って育てたいぜ。

もちろんそんな事をすれば、未成年者略取誘拐に拉致監禁と役満クラスの罪状と供に俺の人生即終了である。

「ところでみなもチャン、まどかのお馬鹿はどこへ行った?一緒じゃないのか?」


「……?」

みなもチャンは首を傾げた。

そして暫しの思案の後、

「……悪企み」


「は?」

相変わらず、彼女の言葉は単語が少なくてちと判り難い。


「主将が変に笑う時は、何か悪い事を考えている時」


「……なるほど」

何となく、想像が出来た。

まどかの奴、一体何を企んでいるんだか……


「師匠……」


「ん?なんだい、みなもチャン?」


「悪魔は?」


「……はい?」

悪魔?

悪魔ってなに?

・・・

穂波の事か?


「……これ」

と、みなもチャンが俺の胴着を指差す。

彼女の小さな指の先には、葉室流の文字。


「……優チャンのことか?」

俺が聞き返すと、みなもチャンはコクンと頷いた。

ぬ、ぬぅ……

優ちゃんのことを悪魔?

ん?んん?ん~~……あ、そうか。思い出した。

みなもチャンと最後に会った時は、優チャン……のどかさんマジックの影響で、身も心も恐怖の大魔王になっていたからなぁ……

確かにあの時の優ちゃんは、悪魔と呼ばれもおかしくはなった。

何しろ冷酷に笑いながら次から次へとスンゲェ攻撃を繰り出して来るんだもん。

俺もみなもチャンも、かなりボコられたしねぇ……

「あ~~……なんだ、優チャンもちゃんと来てるぞよ。みなもチャンと戦う事に、闘志を燃やしておるわい」


「……退治するよ」

みなもチャンは拳を握りながら、大きく頷いた。

「ボク、あの悪魔をやっつける」


ありゃま。

「そ、そうか。ま、まぁ……なんだ、俺的には立場上、優チャンを応援するしかないけど……みなもチャンも頑張ってくれぃ」

言って俺は、もう一度彼女の頭を撫でた。

「っと、そう言えばみなもチャン。今日は、あのカメ虫は来てないのか?」


「……カメ虫?」

クククとみなもチャンは首を傾げる。


「みなもチャンの兄貴のことだ。失礼な言い方だと思うかも知れないが、あ奴はカメ虫で充分だ。臭そうだしなッ」


「今日は……来てない」

みなもチャンはふるふると首を横に振った。

そしてニコッと微笑み、

「兄がカメ虫……ちょっとお似合い」


「だろ?だからさ、お家に帰ったら、あいつの事をカメ虫って呼んでやれ。そしてな、まどかはやっぱりお前の事が嫌いだぜ、とも言っておいてやれ」


「……主将?」


「そうだ。あのカメ虫、実はまどかにちょっかいを出そうとしてるんだよ……昆虫の分際でな」


「……ふ~ん」

みなもチャンは首をフニャフニャと動かした。

何だかピンと来ていない感じ。

どうやら年齢の割には体も精神もちと幼気味の彼女には、恋愛云々の事はちと分かり難いらしい。

「主将にカメ兄……似合わない」


「分かってるじゃないか、みなもチャン」

うむ、物分りがよくて俺様は嬉しいぞよ。


「主将には……う~ん……凄い男がお似合い」


「凄い男って、えらく抽象的じゃのぅ。……なんとなく分かるが」


「だって主将……怒ると怖い」


「そうかぁ?俺から言わせれれば、怒らなくても怖いぞ?」



みなもチャンと別れ、俺は中二階の観客席へと戻る。

各校の関係者や応援団がボツボツと揃い始めたそこに、一際目を引く一種異様な団体。

……俺様の応援団だ。

穂波に美佳心チン。

智香にラピスにセレスにのどか先輩。

更にはトリプルナックルの面々に、豪太郎に金ちゃん、菊田サーカスの馬鹿どもまで居るし、あまつさえ、のどか先輩の鞄の端から顔を覗かせているのは魔人形の酒井さんに藁人形のジュリエッタだった。


な、何だかなぁ……

俺は苦笑を浮かべながら、席に戻った。

学校サボってまでやって来て、良いのでしょうかねぇ……

「よぅ、みんな。応援に駆け付けてくれて、どうもありがとぅッ!!」

取り敢えず、俺は手を挙げ気さくにご挨拶。

トリプルナックルや菊田サーカスの面々、金ちゃんマイケル豪太郎は、頑張って、と素直に励ましてくれるが……美佳心チンや智香は、俺様を英国ブックメーカーばりに賭けの対象にしているし、穂波の馬鹿はウヒヒと笑うだけ。

ラピスに至っては、何が行われるのか分かってない始末だった。

やれやれ……

軽く溜息を吐く俺。

あれ?そう言えば、真咲姐さんの姿が見えないんじゃが……・


「あ、洸一。……もう着替え終わったの?」


「ん?」

振り返ると、そこにはまどかがいた。

そして指先で俺の胴着を抓みながら

「ふ~ん、これが優お手製のコスチュームかぁ」

何て事を呟いている。


「おい、まどか。こんな所にいて良いのか?お前、自分の後輩達の所へ……」


「まだ大丈夫よ」

まどかは俺の隣へ腰掛けた。

そしてどこか真剣な面持ちで、

「それよりも洸一。アンタ……ちゃんと対戦表は確認した?」


「へ?いや、まだなんじゃが……」


「はぁ?何やってるのよ。……本っっっ当に、愚図ねッ!!」


「くっ…くぬぅ」


「ほら、ここを見なさい」

まどかは手にしていた、トーナメント表と懸かれた小冊子を捲り、俺に手渡した。

そのページには、『TEP総合格闘技新人戦:高校男子の部』と書かれ、ズラリと高校名と名前が列記されていた。


「あ、俺の名前もある……」


「はぁ?当たり前でしょ?」

まどかは呆れた声を上げた。


むぅ……

そうは言うがね、なんかちょっと……感動だ。

何しろ生まれて初めて、俺は大会とかに参加するのだ。

ちゃんと名前が載ってるだけで、ドキドキしちゃうのだ。

取り敢えず、この小冊子は宝物にしておこう。

「ふむぅ、俺はBブロックの第3試合からスタートか……」


「そーよ」

まどかはそう言うと、軽く「はぁ~」と溜息を吐いた。

そして俺の肩をポンポンと叩きながら

「それにしても洸一って……肝心な所で運が無いわねぇ」


「……はい?」


「だってさ、洸一の対戦相手……どれも強いのよ」


「そ、そうなのか?」


「そ。一回戦でいきなり、優勝候補の最右翼って言う人と当たるし、それに勝っても二回戦は多分、これまた優勝候補の一人が出てくるし……なんかね、決勝までずーっと、名の知れた選手とばかり当たるのよぅ。ちょっと悪意に満ちた組み合わせね」


「ぬ、ぬぅ……」

俺はチラリと、魔女様を見やった。

今日は運が消失する日、と言うのは事前に分かっていたけど……

よもやこんな感じで、いきなり最悪な運勢になっているとは。


「まぁ、こーゆー事もあるわよ」

まどかは俺を元気付けるように、少し力強く肩を叩いた。

「大丈夫。運が良ければ勝てるわ」


いや、その運が無いんじゃがねぇ……

俺は口元を歪め、自嘲気味に笑った。

まぁ……所詮、運は運だ。

実力があれば、ちゃんと勝てるさ。

・・・

その実力も、甚だ心許無いのだがね。

「あ~~……ま、何とかなるか」

俺は小冊子捲り、次ページを読む。

「……優チャンは、Cブロック。そして……みなもチャンはDブロックか」


「順当に行けば、準決勝で当たるわね」


「そうだな。……って、んにゃ?」


「ん?どうしたの洸一?」


「いや、この女子Aブロックに、氏名不詳(特別推薦)って書いてある選手がいるんじゃが……」


「あぁ……それね」

まどかは顎に手を当て、ニヒヒと嫌な笑みを溢した。

みなもチャンも言っていた、良からぬ事を企んでいる笑みだ。

「彼女はねぇ、私が推薦した選手よ」


「……はい?」


「大会を盛り上げる為の招待選手よ。ま、洸一ならその内に分かるって」


「お、俺?」

分かるって……どーゆー意味だ。


「ま、あまり深くは考えなくて良いわよ。女子の選手なんだし。洸一は自分の心配をしてなさい」

そう言って、まどかは立ち上った。

「さて、そろそろ開会式が始まるわよ」


「お、もうそんな時間か」

俺も立ち上がる。

い、いよいよか……

生まれて初めての公式戦。

なんで俺みたいな素人が出場するのか、未だに疑問なんじゃが……

ここまで来たら、腹を括るしかない。

相手は同じ高校生……しかも殆どが年下だ。

大丈夫、俺なら出来る!!

涙が出るぐらい根拠は無いけど、何とかなる!!

・・・

・・・

・・・

でもその前に、もう一度ルールブックを読んでおこう。



大会コミッショナーの挨拶や選手宣誓などが行われた開会式を終え、いよいよ新人戦の幕が切って落とされた。

広い体育館内は、いくつもの試合場に区切られ、それぞれに試合が始まっている。

各校や各団体の応援に混じり、大会本部席に設けられたアナウンスブースからは、『○○選手は第3会場に、○△選手は第1会場に至急お越しください』等のアナウンスがひっきり無しに流れていた。

まるでお祭りのような喧騒だ。


しっかし、まぁ……男子はともかく、女子の胴着はカラフルですねぇ……

階下に降りた俺は、女子の試合会場を見つめていた。

基本的に胴着に関しての明確なルールがないTEPの格闘技大会。

それでも一応、各選手共に動き易そうな胴着に身を包んではいるのだが……

「ぬぅ……どー見ても、レースクイーン的な衣装もあるのぅ」

思わず鼻の下が伸びてしまう。

「もっとも、スタイルは良いけど……フェイス的には『君は人類かい?』ってのが多いのが悲しいところだね」

空手でも柔道でもレスリングでも、名のある選手って……結構、アレだもんね。

先祖返りって言うの?

なんちゅうかこう、ザ・バーバリアンって感じがするよねぇ……

そんな非常に失礼な事をブツブツと呟いていると、

「先輩、先輩」

と、俺とお揃いの胴着を来た優チャンが小走りに駆け寄ってきた。

「ど、どうですか、調子は?」


「調子は良いよ」

俺は素直に答えた。

「運勢は最悪だけどね」


「そうなんですか?」


「まぁな。何しろ、一回戦から俺の相手は優勝候補の一人だそーだ。なんちゅうか、もう……俎板の鯉?既に達観した気持ちだよ。わはははは」


「そ、そうですか…」


「優チャンの方はどうだい?優勝できそうか?」


「それは……分かりません」

小柄な優チャンは、少し困ったような顔で俺を見上げた。

「取り敢えず、Cブロックは突破できると思いますけど……」


「Dブロックは、確かみなもチャンがいるな?とすると、準決勝で当たるか」


「は、はい。みなもサンに勝てれば問題ないんですけど、でももし負けると……三位決定戦があって……それで負けちゃうと……」


「おいおい、今から負けた時のことを心配しても、しょーがねぇーじゃねぇーか」

ちなみに俺は、何も心配していない。

何しろ一回戦で消える事が殆ど確定してるんだから。

「とにかく、今は先ず、最初の試合の事を考えようや」


「は、はいッ」


「うむ、いい返事だ」

俺は笑いながら優チャンの頭をデロリンデロリンと撫で回した。

「さて、そろそろ俺様の試合が始まるかな?」


「あ、私も…」


「良し。お互いに入賞出来るよう、ベストを尽くそうぜ」


「は、はいっ♪」



さて……と。

元気良く自分の試合場まで駆け去って行く優チャンの背中を見つめながら、俺はTEP公式グローブを手に装着。

そして中二階を見上げ、拳を突き上げる。

俺様応援団から、歓声が沸き起こった。

美佳心チンが大声を張り上げ、ラピスや智香達はブンブンと手を振っている。

そして、穂波は……何時の間に作ったのか、『頑張れ洸一っちゃん♪』の文字と何故かリアルな熊の絵がプリントされた巨大な旗を、ブルンブルンと振り回していた。

豪快な応援だ。


なんか……ちょいと恥ずかしいですな。物凄く目立ってるし……

これで一回戦で消えたら、ある意味伝説になるよね。

俺は苦笑を溢しながら、

「よっしゃっ!!」

と手の平で自分の頬を叩き、気合を入れていざ試合場へ。

優勝候補の一人だか何だか知らんが……せめて俺様のデビュー戦は、勝たせてもらいますかなッ!!






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