表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

02 カラスになったけどぬるゲーでした

俺、カラスになってる?


混乱して、思わず


「カァ」


と鳴いてしまう


すると周りにいたカラスは「カア、カア」と鳴き始めた


"何言ってんだあいつ"


"変なやつ"


どうやら、カラスと意思疎通ができるようになったらしい


周りを見渡すと、遠くに見覚えのある屋敷が見えた


あそこで俺は、エレナと一緒にいたんだよなあ…


そういえばエレナは大丈夫だろうか?

俺が死んだ時気を失っていたから、敵に拐われていてもおかしくない


そう思うと急に心配になってきた


そもそも、カラスの俺を"レン"だと気づいてくれるだろうか?

そもそも、俺はこの姿でエレナを助けることはできるのだろうか?

そもそも、エレナは俺のことを覚えているのだろうか?


仕方ない、試しに飛んでみよう


俺は意を決して飛び立った


長時間は飛べないものの、どうやら俺は飛べることはマスター済みのようだ


屋敷の方向に向かっていると、腹が減ってきた


周りには落ち葉しかない…と思ったが、ドングリを見つけるとなぜか無性に食べたくなる


軽くつついてみたが、これはいけそうだ


うん、甘くて美味い!


そのまま俺は何十個も食べ、腹いっぱいになるとまた屋敷へと向かう


俺、一生食べ物には困らなさそう!


このままドングリ生活をするのもいい、なんて考えていると屋敷に着いた


カラス目線になると、改めて屋敷はデカイということに気づく


「あ、タイチだ(カア)」


しかし庭にいるカラスが鳴いたところでうるさいとしか思わないのか、同じ執事のタイチは庭を掃除している


俺は木や壁の凸部分を使い、器用にエレナの部屋の窓へと着いたのであった


「エレナだ!(カア)」


無事でよかった…


俺の勧めた本"勇者カルロス"シリーズに没頭しているエレナは、俺に気づいていない


必死で窓をつついていると、やっと気づいてくれた


「しっしっ!」


…え?


すると俺の身体は吹き飛び後ろの木に激突、そのまま落下してしまった


エレナが魔法で俺を追い返した…

ついさっきまでは、俺に抱きついていたのに!


いや…まてよ、これは反抗期で、たまたまツンデレの"ツン"の状態だったのでは?


めげずにまた窓へ上っていると、次第に日は暮れ、月が夜空に輝き始めた


すると、俺の身体はズシッと重くなり始める


身体が歪み、黒い羽根は抜け落ち"肌"が現れ、形をつくる


…俺、人間になってないか?


「ひゃっほーーーう!」


なんだこれ、カラスに転生したと思ったら人間に戻った!

しかも服付き?なんてイージーな設定なんだ!

嬉しさのあまり木から落ちそうになり、下を見ると俺は恐怖に足がすくんだ


人間に戻ると、カラスの頃の感覚はなくなるらしい。当たり前か…


もう窓の前だ、人間の姿ならきっと受け入れてくれるはず…どんな見た目かはさておき。以前の俺の姿ではない事はなんとなくわかっていた


「エレナ、窓を開けて」


今気づいたが、声が変わっているようだ。しかしいわゆる"イケボ"だからそれはまあいい


しかし、エレナは着替え中だったのか下着姿だ!

んー、執事だった頃に何度も着替えシーンは見せられたが改めて見るとそそられるなあ

裸はさすがに見たことないから、少し残念だけど


エレナは俺に気づくと、ビックリしたのかまた俺に魔法をかけようとしている!


つい前までは「だっこ」なんて言っていたエレナを思い出すと、泣きたくなる


「や、やめろ、怪しい奴じゃない!」


下着姿を見てる他人の男が言うセリフじゃないけど


何か、何かエレナを安心させられるような事はないだろうか?


俺は咄嗟に、執事だった頃よくエレナにしていた手遊びをやってみせた


「な、何それ…ぷ、ぷぷぷ」


エレナは腹を抱えて笑い、夢中になって俺の手遊びを見ている


「ちょ、ちょっとだけだからねっ、それ見せてもらったらすぐ返すからっ」


なんと窓を開けて中に入れてくれた


こんなに警戒心がないと、絶対にまた敵に襲われるはずだ。守らなければ…という使命感が湧く


「手、冷たっ!」


エレナは俺の手遊びを見て、手に仕掛けがあるのかと思ったのか俺の手を触った


この柔らかくて白い手…時間はたっていないはずなのに、懐しいと思う


その気持ちは、安心と悲しみが混ざった気持ちに変わり俺を乱す


「わっ、泣いてる?泣かないで」


エレナに慰めてもらうなんて、執事の頃でもなかっただろう

元気が出てきて、俺は一瞬で泣き止んだ


「んー、あれはもういいや。それよりも、あなただあれ?」


エレナはお姉さん気分になったのか、ベッドに座り足を組んで頬杖をつきながら探るようにこちらを見る


その瞳と太ももが、ゾクっとするほど、いい!!


「俺は…」


名前を言おうとしたが、つまる


だって今の俺は、"レン"ではないから


「レン…」


気弱に言ってみたが、エレナはさっきと変わらない


そっか、俺といた記憶がないんだっけ


寂しくなったが、ここでまた泣くわけにはいかない


「レン?レン…なんだか聞いたことある気がするけど、どこかであったかな」


不思議そうな顔をしたエレナは相変わらず可愛い。でも、転生したことを言ってもきっと信じられないだろう


「そう?会うのは初めてだよ」


「…そっかあ。どこから来たの?」


うっ…辛いな。でもここから再スタート。根気よくいかなきゃならない


「この町に住んでる。実は…執事を目指してるんだ。だからここの屋敷を見学に来たって感じ」


「執事になるの?わあ、毎日楽しいだろうなあ」


「おっ…なら、今からお父さんに執事にさせてくれるか聞いてきてくれない?」


エレナは部屋から出ていった。単純単純


うん、これは好スタートだ!このまま執事になれば、前の生活に戻れる!


鏡を見てみたが、前世よりイケメンだし声もイケボだし、転生は一体何だったんだ?


ぬるゲーすぎて少し怖いが、これは死んでよかったかもしれない…なんてな


「レン〜、ごめんなさい…」


ショボンとした表情で戻ってきたエレナの後ろには、動くゴリラ…じゃない、父

カロルがいた


「お前ぇ…このっ、不審者ロリコン男が!うちの娘に手を出すんじゃないゾォっ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ