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この恋は愛へと繋がっている  作者: 叶山 慶太郎
4/14

試験

デート回ではありません。経験無いから書けません。同情するなら彼女ください

「もうすぐ中間だな」


「そうね」


帰り道に2人が話している。

陽斗と明里が付き合ってしばらくが経ち、中間テストの時期を迎えていた。


「沢田って前の試験、何位だった?」


「えっと・・・・確か75じゃなかったかな」


「な、75!?」


「及川は?」


「・・・・・・150位」


「・・・・・見事に2倍だな」


全校生徒240名のこの学校において明里は特別悪いわけではない。しかし、陽斗の75位と比べると非常に残念な結果に感じる。明里はショックを隠せなかった。


「なら、勉強会でもするか?」


「・・・・・え?」


「次の日曜、図書館でどうだ?」


「いいけど・・・・私が教えられてばかりになると思うよ?」


「教えた方も勉強になるとか言うだろ?それに家にいると集中しづらいし」


「・・・・・・ぜひお願いします」


「おう」


明里はこのときあらゆる気持ちを抱えていた。少しでも陽斗との差を縮めようという気持ち、バカだと思われたらどうしようという不安な気持ち、そしてうれしいという気持ちがあった。初デート以来こうして陽斗から誘ってくれるようになった。もちろん自分から誘うこともあるし、その場合のデートも楽しいのだが、なぜか彼から誘ってもらったほうが楽しく、また特別に思えた。なので今回のように陽斗が誘ってくれると明里はうれしかった。そんな明里は顔が綻ぶのを抑えるのに必死だった。本心を言えば、そのまま笑顔で「誘ってくれてうれしい」と陽斗に伝えたいのだが、なんだか恥ずかしかった。




そして当日図書館。


「そんじゃ、早速始めるか」


「そうね。なにからやる?」


「う~ん・・・・・あ、苦手教科とかあるか?」


どうやら陽斗は苦手を先に潰すつもりのようだ。


「えーと、数学かな」


「・・・・・・・・え?」


「え、なにかおかしい?」


数学が苦手であるということは決して珍しくない。だが、陽斗は驚いていた。そしてそれには理由があった。


「いやだって・・・・理系なのにか?」


「・・・あっ」


そう、二人とも理系である。正直数学ができないと理系でやっていくのは厳しい。それに多くの人は数学ができるからという理由で理系へ行く。将来なりたい職業のためという人は少数いるが、そういった人たちも大抵数学は得意である。なので数学が苦手という人は珍しいと言える。


「えーと、それは、その・・・・・」


なにか言えない事情でもあるのか明里はなかなか話さない。


「まさか、俺の進路に合わせたとか?」


見かねた陽斗がからかうように笑って言った。

すると、明里の顔がみるみると赤くなっていった。


「・・・・え、ほ、本当に?」


まさか本当にそうだとは思っていなかった陽斗は驚きながら尋ねた。


「・・・・別にいいじゃない」


「っ!」


少しうつむきながら目をそらして答えるのを聞いて陽斗の顔も明里ほどではないが赤くなった。陽斗は明里のことをかわいいと感じていた。以前からかわいいと思うことはあったが、少し距離のある、子供などに対してのかわいいだった。しかし、今回のは違った。なにか違う感情が混ざっていた。


「そ、そうか」


陽斗は平静を装ったつもりだったが、動揺を隠しきれていない。


「・・・・・」


「・・・・・」


「と、とりあえず始めようぜ」


「そ、そうね」


このまま静寂が続くのを恐れたのか、半ば強引に始めた。


「数学、今回は三角関数だな。なにか苦手なとことかあるか?」


「公式が覚えられないかな。加法定理とか2倍角とか半角とかごちゃごちゃしてくるのよね」


「・・・・・・それだったら加法定理だけでいいぞ?」


「え、そうなの?」


「2倍角も半角も加法定理から作れるんだよ。割りと簡単に」


「そうなの?」


「あぁ、教科書にも載ってる」


「・・・・あ、本当だ」


「全部の公式を覚える必要はない。覚えた方がいいものもあるけど、どうやってその公式ができるのかって知ってた方が便利なものもある。応用もきくし、忘れたりしても安心だからな。それに変形させていけばなにかわかるかもって意識があると、やったことのない問題とか難しそうな問題でも解けるかもしれないって思えるしな」


「へ~、確かにそうかもね。じゃあ加法定理は?」


「いや、それはめんどくさいから覚えた方がいい」


「そっか。う~ん、まぁそれぐらいなら覚えられそうかな」


「そういや、良い覚え方があるぞ」


「え、どんなの?」


「佐藤告市って知ってるか?」


「う、うん。ナイフ舐める人だよね」


「そうそう。んで、cosを告市として、sinを佐藤とするんだ。そうするとsinの加法定理はsin(佐藤)αcos(告市)β+cos(告市)αsin(佐藤)β、cosの加法定理はcos(小告市)αcos(告市)α-sin(佐藤)αsin(佐藤)βってなるんだ」


「ふふ、なにそれ変よ」


「いいんだよ、覚えられれば」


そう言って共に笑った。こうして二人は楽しく、時間を忘れて勉強に勤しんだ。






勉強会から数日経ち、テストが全て終わって結果が各々へと渡された。その後陽斗は明里の席へと向かった。


「結果、どうだった?」


「107位。自分でもびっくりしてる」


「おお!すげえじゃん」


150位から107位、43位順位を上げたとういうのは、付属高校で決してレベルが低くないそこそこの進学校であるこの高校において驚異的と言っていい。


「沢田のおかげだよ。ありがとね」


「なに言ってんだ。お前が努力したからだろ?よくがんばったな」


そう言って陽斗は柔らかく微笑んで、ぽんっと明里の頭に手を乗せた。そして優しく数回撫でた。


「・・・・え」


その行動に明里は一瞬にして顔を紅潮させた。


「・・・・あ」


それを見て陽斗は自分のしでかしたことに気付き顔を真っ赤にした。


「ご、ごめん!つい癖で!」


「あ、いや・・・」


「・・・・・嫌だったか。本当ごめんな」


そういう意味での「いや」ではなかったのだが、陽斗は誤って受け取ってしまった。


「・・・じゃなかった」


「・・え?」


「・・・・別に嫌じゃなかった。むしろ、その、うれしかった」


「!」


未だに顔が赤いままそう言った明里を陽斗はとても愛しく、またなんとも言えない感情を抱いた。彼が愛しさを感じるのは家族以外では明里だけだった。そしてもうひとつの感情を抱くのも明里だけだった。


「・・・・なら、もう少し」


再び陽斗は明里の頭に手を置き撫で始めた。


「・・・・えへへ」


「・・・はは」


明里は照れくさそうに笑い、陽斗はそれを見てうれしそうに笑った。2人とも本当に幸せそうだった。














「ここ教室だぞー」


「余所でやんなさーい」


「「!」」


圭助と綾子、2人の親友が口々に言った。それにより、完全に2人の世界へと入っていた陽斗と明里は現実に引き戻された。


「あの2人付き合ってたんだ」「今のすごかったね」

「あれがリア充ってやつか・・・」「今なら爆発しろって言う奴の気持ちがわかるぜ・・・」


男女で違いはあるが、周囲の話題の中心が自分たちだというのが2人には恥ずかしくただでさえ赤く染まっていた顔がさらに赤くなった。


「・・・・じゃ、じゃあ俺もう席戻るわ!」


「あ、う、うん!」


陽斗は席へと戻っていった。



「はっはっは、陽斗君や。うまくいってるようじゃないか」


「うざいぞ、圭助」


「いや~お前のそういうところ見るの初めてだな~」


「うるさい」





「明里ちゃ~ん、何今の?ラブラブだったじゃん!沢田とそんなに進んでたの?詳しく教えなさいよ!」


「ほっといてよ綾・・・・」



こうして2人は図らずしてクラスメイト公認の存在となった。





補足


今回陽斗は72位。

苦手教科は特に無しのオールラウンダー。若干文系科目より理系科目の方が好きで成績もよかったので理系へ。大学はそのままエスカレーター式で行くつもり。


明里は文系科目は普通で理系科目は少し苦手。教室内で陽斗が理系に行くことを聞き、思いきって理系へ。大学についてはあまり考えていない。


佐藤告市:某映画でのナイフを舐めるシーンが芸人にものまねされそのイメージが定着してしまったが、あらゆる作品に出演し評価も高い人気俳優である。


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