告白
「話ってなに?」
屋上へと呼び出された男、沢田陽斗は呼び出した本人及川明里に尋ねた。
「えっと、その・・・・・」
明里は緊張からかうまく言葉が出てこないようだ。
「・・・・?」
陽斗は不思議そうにしている。こういったシチュエーションだと普通は察するのだが、彼にはわかっていなかった。一方で、明里は勇気を振り絞る。
「す、好きです!付き合ってください!」
「・・・え?」
陽斗はとても驚いていた。それには訳があった
「及川って俺のこと嫌いなんじゃないのか?」
全く嫌ってなどいない明里は戸惑った。
「ど、どうして?」
「いや、だって俺に対して態度冷たくなかったか?話しかけても、用件はそれだけ?って返されたり」
嫌っているというのは誤解だが、これに関しては事実だった。というのも明里は昔から素直になるのがあまり得意ではなかった。しかし、素直になりたくないわけではない。むしろ素直になりたいというのが本音で、少しずつでも変わっていきたいという気持ちがある。なので正直に白状することにした。
「それは、その、意識してるのが顔に出ないように必死だったというか・・・・」
「えーと・・・・つまり照れ隠しってことか?」
「そ、そうよ!悪い?」
「い、いや、別にそんな怒らなくてもいいだろ?」
「あ、いや、その、ごめん、気にしないで・・・」
「え、ああ、わかった。まあ、俺がなにか気に障るようなことしたとかじゃなくてよかったよ」
陽斗は自分に原因があると思っていたらしく気にしていた。さらに言えばその原因がわかり次第謝らなければ、とさえ思っていた。
「・・・・人が良いっていうのかな」
「ん?なんか言ったか?」
「な、なんでもない」
「そうか?」
思わずこぼれたその本音が陽斗にはっきりと届かなかったことに明里はほっと一息をついた。
「と、ところで返事はどうなの?」
「ん?ああ、そうだったな」
「ひょっとして忘れてた?」
「いや、そういうわけじゃないけど・・・・付き合うかどうかか・・・」
そう言って陽斗は考え込むように顎に手をあて、明里をじっと見つめ始めた。
(何だろう、すごく見られてる・・・・私の何を見ているの?)
好きな異性に見つめられるというこの状況に明里は
とあわてふためくことになった。
すると、陽斗は顎に添えていた手を下げ、明里を見つめるのは止めず、とても温かい目をして柔らかく微笑んだ。
(・・・・この目だ)
彼は時々こういった目をすることがある。まるで子供を見守る親のような目だ。明里が陽斗のことを好きになったきっかけはこの目だった。
「いいよ」
「・・・え?」
「これからよろしくな」
「ほ、本当に?ありがとう!うれしい!」
先程の行動は気になるが、明里はこれ以上ないくらいに喜びを感じていた。
「にしてもなぁ」
陽斗がそう言うと、表情が微笑みからニヤリとした笑顔に変化する。
「な、なに、どうしたの?」
「及川がこんなに感情表に出すとこ初めて見たなと」
「っ!べ、別にいいじゃない・・・・・」
「・・・ああ、そうだな。いいと思う」
そう言って陽斗はまた微笑んであの目をする。それを見て明里は思わずドキッとした。彼女は彼に振り回されてばかりだ。
このときまだ、明里は陽斗のことをあまり知らなかった。
つまんなそうと思ってもせめて中盤くらいまで我慢して見てほしい。そっからおもしろくなる・・・・はず