01 ◆ 神様、300年振りに人間界に買い物に行く
日が陰りヒグラシが鳴き出す頃、三つの人影があった
古びた神社の前で
面子やら独楽やらを地面に放ったまま三人は笑っていた
”そろそろ家に帰らんと暗くなるぞ”
そう言いたところだったがいくらたっても日は沈まなかった
何かおかしい
よく見れば、
笑いながら三人が手に持っていたのは酒瓶だった
髭を生やしたデカイ男が重々しく口を開いた
「最近どうだ?狐乃江よ?」
地響きのようなかすれた低い声を出しながら、ぬっと動くと手に持った酒瓶を瓶ごと口に入れ飲み込んだ
「あー、江戸の頃に地震で地中に埋まってから今日まで一度も人に会ってないわ」
と狐耳の巫女は甘ったるい声を出しながら、あっつあつの餅を天狗の仮面を頭にかけているの男に投げつけた
反射的につかんだ男は発狂しながら地面を転げ回っていた
「そうか、それは残念だな……まぁ天巳が持って来た妖怪酒で気を紛らわそうじゃないか!」
そういいながら男は右手で二人に酒を継ぎ足し、左手で狐耳の子の尻尾をもふりだした
もふられている狐乃江は嬉しそうにし、餅で手を火傷した男、天巳は冷めた目で見ていた
「ねえ?謝ってよ。熱かったんだから……」
ところで
妖怪酒とは何か
遡ること900年
今の言い方では平安時代の頃、日本各地に妖怪やら怨霊やらが溢れていた
人々に悪さし、取り憑き、呪い、悪の限りを尽くしていた
そんな妖怪共を退治すべく人々は立ち上がった
術を使い妖を滅する
【陰陽師】
神に力を借り神気を用いて邪を祓う
【神主】
魔を退けることに特化し秘術を使う
【退魔師】
人間達がいくら戦えど強力な妖怪には敵うことはなかった
人々は祈った
妖怪を倒す神が現れることを
それから30年、祈りは天に届き日本各地に妖怪退治の神々が現れた
あるものは刀を用いて切り裂き
あるものは杭を打ち込み封印し
またあるものは噛みつき食い散らかした
そんななか生まれたのが妖怪酒だった
封印や生け捕りにした妖怪を酒瓶に詰め込み、梅酒を作るような感じで妖怪を漬け込んだ酒を作ったのが始まりだった
それからと言うもの妖怪酒は人気の飲み物となり今でもその人気は変わることはない
閑話休題
「喜助?お前何処にいるんだ?」
喜助とは髭の男
達磨である
「今ねー、海に沈んでるんだよ」
「うわ、ヤダヤダ」
(磯臭そう……オェ)
「”ヤ”のつく人に沈められたんでしょ笑」
「んな訳あるか!神様は沈めないだろうが!」
「天巳、あんたこの中じゃ一番マシだからって天狗になってんじゃないわよね?」
(いや、天狗の神何ですけど)
「ぷっ……天狗に天狗になるなと言われても?Are you speak JAPANESE?」
(英語できるおれ凄くね?)
「あー……すぴ?何それ??」
「「英語わかんねぇーの!?ヒャヒャハハハハハハハ!!流石っ!畜生神」」
「怒るわよ!」
「ワザワザ宣言するとか構ってちゃん?」
「ひっく…うわああああん!!いじめる!酷い!」
「落ち着けって!好きなもんかってやるから」
「ホント!じゃあ稲荷寿司」
......
(稲荷寿司だと⁈変態め!性魔か!こいつ……)
「「痴女め」」
「何がぁ?痴女よ!」
「隠語だよ」
「イツモツに付属してるあれ笑」
説明中
「な、なんてことを言うのよ!下らないことを言ってるとホントにちぎりとるわよ!」
「「おうふっ!!!!」」
(やっぱり痴女じゃないか!)
◇◆◆
あの後無事に解散したおれは、稲荷寿司を買いにスーパーに向かっていた
しぶしぶ買いに行ってるんだ
そういえば人間界に行くのなんて300年振りだな〜
あ、すまんすまん
おれは
天狗の神様でアマミという者だ
実際には天狗のお面をかぶった神である
おれは人間界に行う人間に変装し、じゃーじ姿になりスーパーに向かって歩きだした
じゃーじとかいうのが人間の平民の服装らしくあの変態狐に教えてもらった
なんでも、ボサボサの頭にタバコを口にくわえれば尚良いらしい
全く…日本はどうなってしまったというのだ
300年引きこもってたからって無知なわけではない
神界ネットワークに神界ネットスーパーなど便利なものがある
最近、神界ネットスーパーでラノベとかいう物語を読んだがなかなか面白かった
一つ難点なのが、巻物式しかないことだ
読みづらい
ひじょーに読みづらい
本にしろよ!マジ
む?信号が青になったな渡るとするか
ーーーーゴオオォォォ
ん?
青なのにトラックが突っ込んで来てるな
よく見れば居眠り運転ではないか
仕方あるまい、止めるとしますか!
猛スピードで走ってくるトラックの前に立ち、右手を刀に添え構えた
次第に近づいてくるトラック
ぶつかるっ! その瞬間
ーーーーシャキィィンーーーーキンッ!
0.1秒にも満たない超スピードで刀を戻した神は、ドヤ顔をしながら立っていた
トラックが目の前に迫った神は刀を抜き、下から払い上げながら真っ二つに切りとばし、切った後に爆発した方がかっこいいというどうしょもない理由で、切り口に爆発の妖術を使用し、そして轟音を轟かせながら転がっていったのであった。
久しぶりに戦闘をし、満足下にしていると、足元に幾何学模様を組み合わせた陣が浮かび上がりそして一瞬にして白い世界に来ていた