第7話
「じゃあ、まずは言い出した俺から」
コイツは行動力溢れるバカだから、何かやってくれそうな気がするな。とりあえず、俺とロリコフは椅子に座る。
「俺の目標は家を継ぐことだな」
堅実だな、つまらん。
「親父が平民だったんだが戦で手柄を立てて、領地を下賜されて貴族になったんだ。初代は良くても、二代目が駄目だといろいろと問題があるワケ。だから、この学院を卒業して箔をつけたいんだよ」
親父さん平民から貴族に成ったとかスゲェな。俺の目標は貴族になることだから、実現したローランの親父さんにはぜひ会って見たいな。
「じゃあ次は私だな」
そう言って床に巻物を広げて何かを書き込んでいたレイリーが立ち上がる。
「私の目標は、神話級の魔導具を作ることだ」
ふむふむ、レイリーは魔導具を作るたいのか。ちょっと待て。
「神話級って、国内にも両手で数えられるほどしかないやつだぞ⁉︎」
俺の言いたいことはローランが言ってくれた。魔導具は、上から神話級、特級、上級、中級、下級の5つのクラスに分けらる。特級以上のものは非常に希少で大貴族でも無いと持ってない。レイリーがうなずきながら答える。
「一般的には現代の技術では作ることの出来ないものと言われているな」
「それならお前はどうやって作るつもりなんだ?」
「知らん。だから、今いろいろやってるんだ。魔術を学んだりとな」
おっと大事なことを忘れてた。
「魔術について確認したいんだがいいか?」
「構わんぞ」
俺は魔術についてレイリーと確認し始めた。
「魔術というのは術式に決められた属性の魔力を流すことで発動できるもののことで、術式を道具に刻んだものが魔導具、紙に書いたものを巻物っていう。魔導具は何度も繰り返し使えるのに対して、巻物は一度しか使え無い。」
「補足すると、魔力を流すと物質が劣化するために巻物は一度しか使え無いってことだな」
「ああ、確かミスリルなどの魔力親和性の高い素材は魔力を流しても劣化しにくいんだよな」
ちなみにミスリルはメチャクチャ高い。鉱山掘り当てれば、一生遊んで暮らすくらいの金が余裕で手に入る。
「そうだ。だから、魔導具の材料に使われるのは魔力親和性の高い素材と術式を刻むためのマナダイトだな」
「マナダイトって魔力を通す鉱物のことだよな?」
「ああ、これがそうだ」
そう言ってレイリーは床からインクの入ったビンを拾い上げる。
「このインクにはマナダイトが混ぜられている。だから、これで紙に術式を書くと巻物が出来るんだ」
後で俺もやってみようかな。術式なんて描けないけど。
「私の番か」
そう言って何やら本を読んでいたロリコフが語り出した。
「私の夢は法の改正だな」
へぇー。法の改正ね。待てよ、ロリコンのコイツが変えたい法律となると、結婚年齢とかだろうな。
「私が変えたいのは、この国の教育制度だな」
まとも過ぎて驚くな。誤解してた。すまんなロリコフ。と心の中で謝る。
「変えるって言ってもどうゆう風に変えたいんだ?」
「ああ、初等学校に誰でも通えるようにしたいんだ」
帝国の学校には、9歳から6年間通う初等学校とその後15歳から3年間通う高等学校がある。試験さえ通れば初等学校に通ってなくても、高等学校に通える。ちなみに帝立高等魔術学院は高等学校の一種だ。
「確かに、初等学校の学費って金持ちの商人とかじゃないと払えないもんな。俺も初等学校行ってないし」
「じゃあ、アレン、お前はどうやって入学試験の勉強したんだ?」
ローランが尋ねてくる。
「村に博士号持ってるじいさんがいてな。その人にいろいろ教えてもらった。戦闘技術は我流だな」
俺みたいに家が貧しくても、勉強出来ることもあるけどやっぱりそれは稀な例だ。そう考えるとロリコフのやりたいことってものすごく価値のあることだと思う。
「お前のことだから、てっきり結婚年齢の引き下げとかいうと思ってたぜ」
ローランが笑いながら言う。
「俺のそう思ってた。すまんな」
俺も一応ロリコフに謝っておく。
「何言ってんだ。2人とも。それは当然やるべきことだろ?」
「「やっぱりかよ‼︎」」
俺とローランの声がハモる。
「出来たぞ!さっそく試してみる」
レイリーの方を俺たちが見ると、奴は出来た巻物に魔力を流して発動させてた。ここ室内だよな?
そして、先ほど俺が部屋に入ろうとした時に飛んで来たものより一回り大きい火球がドアに直撃する。俺が言葉を失って立っているとローランがキレた。
「馬鹿野郎。今日だけで3回目だぞドアをダメにするのは」
コイツ1日に3回も同じバカをしてんのか。これから愉快な日々になりそうだ。




