第6話
部屋の中に入ると、眼鏡をかけた男と長身の男がいた。俺を部屋に案内した男が2人について紹介し始めた。自分の名前もまだ名乗ってないのに。
「こっちの陰険メガネがレイリー、出身地は帝都」
「誰が陰険メガネだ!見た目も頭もカラッポな軽薄男が!」
まだ、ルームメイトになってそう時間も経っていないはずなのに2人はだいぶ打ち解けているようだ。
「レイリーだ。これからよろしく頼む」
「ちなみにさっきの火球はこいつが撃った。」
自室で攻撃魔術を使うってどんな神経してるんだよ。
金髪が長身の男を指差しながらいう。
「んで、こっち長身の方がロリコフ。こいつも出身地は帝都」
ロリコフって名前いかにもロリコンそうな名前だな。まあ、さすがに偏見すぎるか。
「ちなみにこいつはロリコンだ」
うわー。できれば当たって欲しくない予想が当たっていたよ。
「ロリコフだよろしく頼むぞ」
そしてようやく金髪が自己紹介を始めた。
「俺はローラン・エルブラント。出身地は辺境の方にあるエルブラント男爵領。」
こいつは貴族だったのか。この面子だと誰が独房にぶち込まれてもおかしくねえな。
「ちなみに今朝まで独房に入れられてたぜ」
ローレンが笑顔で言う。絶対コイツはバカだ。入学する前から教員に目つけられるとは考えなかったのだろうか?
一応、何やらかしたのか聞いておくか。
「お前は何をやらかしたんだ?」
「風呂覗こうと女子寮の敷地に入ったら捕まって風紀委員会に独房に入れられた」
「風紀委員会?」
知らない言葉が出てきたぞ。
「ああ、すまん。お前は今日ここに着いたんだったな。この学院の主だった組織について説明するか」
助かるな。明日までに学院の仕組みぐらいは理解しておいた方がいいだろうし、かといってあの分厚い資料を読む気にはならないし。
「学院の組織の種類には主に2種類ある。一つは生徒会とその下にある委員会の公職系。もう一つは、生徒間の互助組織であるギルド。それぞれ一つずつに所属できる」
そう言ってローランは学生証を取り出す。
「学生証の一番上に自分の名前が書いているだろ。んで、その下にクラス、委員会などの所属と役職、所属ギルドの順で書かれるんだ。ちなみに持ち主本人が学生証に魔力を流すとその波形を認識して、一番下に所持金が表示される」
すげえなこの学生証ってやつは。ちょっと待てよ。
「いつ、魔力の波形の登録なんてしたんだ?」
魔力の波形の登録なんてした覚えがないぞ。
「最初に持った学生のが自動で登録されるようになってんだとよ」
これ作るのに一体いくらかけてんだよ。かなり、すごい魔導具だ、これは。
「話を戻すぞ」
おっと忘れてた。
「生徒会は主に学院の運営に関わる組織で実務を行う委員会を統率している。風紀委員会は生徒会の下にある委員会の一つで、治安維持が仕事だ」
治安維持が仕事ってことは実力の高い生徒が所属してそうだな。コイツが捕まったのも仕方がないか。
「ちなみに俺が捕まったのは、女子寮の自衛団にだ。風紀委員は捕まった俺を引き取りに来ただけ」
コイツはどうして自分の評価をことごとく下げにくるのか?
「ちなみに、生徒会役員と委員には給料が出るぞ。安定して稼げるから、なりたいやつはそこそこいる」
学内で金稼ぐ方法ってやつだな。
「次にギルドについてだな」
こっちの方は結構気になってる。委員会とかには入る気ないからな。堅苦しそうだしな。
「ギルドってのは、学院生が互いの目的を達成するために作る互助組織で、規模は小さいもので5人から、多いと150人ぐらいになるらしい」
150人か。学院生の数が1500人ほどって考えると、10人に1人が入っていることになるからすごい数だな。
「ギルドマスターにはギルドの所属人数に応じて、学院からギルド運営費が毎月支払われるんだ」
ギルド運営費が毎月入るのか../
よし、自分でギルドを作って運営費で楽に暮らそう。
「ま、学院内の仕組みはザッとこんなもんだな」
今のでずいぶんと時間短縮ができた気がするぞ。あとはルームメイトと打ち解けられれば完璧だな。
そんなことを考えているとローランがいい提案をしてきた。
「お互いの名前も分かったところで、とりあえず、それぞれの将来の目標でも語らないか?お互いに打ち解けるためにもさ」




