第3話
少女が一陣の風と共に現れて、手に持つ剣を一振りすると火球は掻き消えた。
「ハッ」
男が背を向け逃げようとする。
少女が手に持つ剣をもう一度振るう。
それだけで男は凍りついた。
少女がこちらを振り向く。
「はぅ」
後ろの少女が息を呑むのが聞こえる。それほどまでにその少女は美しかった俺が今まで見てきた誰よりも
その髪は氷のような蒼みがかかった銀色で
その瞳は深い深い藍色で
その肌は雪のように真っ白で
その顔は人形のようでこの世のものとは思えないほどで
その手足は触れれば折れてしまいそうなくらい華奢で
纏う雰囲気は高貴で気高かった
一目惚れだった。間違いなく、俺はこの瞬間、この少女に間違いなく惚れた。
「お姉様」
助けられた少女がそう言って駆け寄っていく
「助けて下さってありがとうございました。よろしければお名前を教えて下さいませんか?」
この子そっち系か。あぶねえ、このまま死んでたら死にきれんとこだった。助けようとしていた少女がなんとも思ってませんでしたとか。恥ずかしくなってくる。
少女が答える。
「アリシア」
「素敵なお名前ですね。私この店で働いでいるので、よろしければいらして下さい」
少女は彼女に住所を書いた紙を渡して去って行った。
「なあ、あんたどうして貧民街にいる?」
「偶然通りかかりました」
「見たところ、俺と同じ位の年だし、学院の新入生か?
大方俺と同じで道に迷っ」
「た、わけではありません」
俺の言葉を遮って彼女は言う。
「いや、でも他に理由とか無いし、やっぱり道に迷って」
「迷ってなんかいません、それではさようなら」
彼女はそう言って立ち去って行った。
正に夢のような出来事だった
「ヤベェ、学院へ行かないと」
このままでは夕飯が食えなくなる。金も無いからへたすゃ路上で寝るハメになる。




