君へ~届かぬ想い~
君は寒いのが苦手だったよね。
寒い冬に一緒に出かけるときには必ず僕の手を握ってくれた。
室内にいても、寒いと君は僕に抱きついてくる。
だから僕は、寒い冬が大好きだったんだ。
あの日も、寒い日だった。
クリスマス・イヴという、町中が光って見えるような夜だった。
恥ずかしそうにミニスカートを身に纏った君は、何よりも美しかったよ。
僕の目には、目の前で光輝くイルミネーションよりも君は輝いて見えたんだ。
寒い、と君はいつも通り僕の腕を絡める。
僕がどれだけ嬉しかったのかを、君は知らなかっただろう?
君は笑っていた。
ずっと、楽しそうに僕に微笑んでいるんだ。
この幸せを手に入れるのは、簡単とは言えなかった。
苦労して、沢山の時間を要して手に入れた、貴重な幸せだったのに。
そんな幸せを、僕は一瞬にして失った。
信号は青だったよ。
僕らは何も悪いことなんてしてなかったよ。
信号は絶対に守らなきゃいけないんだよ、という君の声が今でも頭から離れない。
君は間違ってなかった。
悪いのは君じゃなくて、向こうの人なのに。
どうして信号を無視した向こうの人が助かるのだろう。
どうして君が犠牲にならなければいけなかったんだろう。
向こうの人を責めるという感情はなかった。
そんなことよりも、僕の中には君を失った悲しみしかなかった。
向こうの人がどんな罪になろうと、僕には関係ないよ。
僕に必要なのは君以外にないのだから。
そんな君を失ってしまったんだ。
僕はどうすればいい?
こんな不公平な世の中を、君なしで生きていける自信がないよ。
君さえいてくれればそれで良かった。
君さえいてくれるのなら、僕から何を取っても構わなかったのに。
どうして君を奪ったのだろう。
よりによって、どうして君を・・・・・・?
君は今頃何をしているのかな。
今すぐ君に会いたい。
もう僕には失うものはないから
僕から何を奪っても良い。
一分でも、一秒でも構わないから。
君に会わせてくれ。
君を失ってから、僕は生きた感じがしないんだよ。
僕は知ったんだ。
僕は、君がいたからこそ生きていたのだと。
君を失った今、僕に生きる意味はないのだと。
僕はあの日から、寒い冬が大嫌いになってしまった。
寒い冬に必ず感じられた、君をぬくもりを感じられなくなってしまったから。
君のぬくもりが恋しいよ。
だからね。
君に会いに行こうと思うんだ。
僕はもう決めたよ、決めたんだ。
君は、怒るのかな。
愛してるよ。
この気持ちが、君に届きますように。