元日本兵不死鳥と出会ったようです
書くのだるくなってきた
ある日の午後、心音は慧音からの頼まれもので、迷いの竹林へと足を運んでいた。
背中にはいつもの三十五キロの背嚢。一般人として振る舞っていても、これだけは手放せない。
「……何だあれ」
右眼が、竹林の奥で揺らめく白い煙と、赤い炎を捉えた。
そこに立っていたのは、銀髪をなびかせ、不機嫌そうに煙草を吹かす少女――藤原妹紅だった。
「誰だ、お前。……そんな鉄砲担いで、迷い込んだ人間か?」
妹紅の瞳が、心音を射抜く。
天津川心音。大日本帝国陸軍……いえ、今は里の寺子屋の手伝いです。藤原妹紅さんですね。上白沢慧音から、これ(書物)を届けるように言付かっています」
妹紅は鼻で笑った。
「慧音の使いか。……だが、お前、ただの人間じゃないな。その足の筋肉、その目の光。……人間を捨てた匂いがするぜ」
「……否定はしません。私は、種族的には分かりません改造人間ですから」
妹紅の闘争本能に火がついた。彼女の手から、鳳凰の炎が溢れ出す。
「いいぜ、試してやる。その改造が、どれほどのものか!」
炎が竹林を焼き、心音に向かって殺到する。
心音は瞬時にリミッターを解除した。身体操作。
ドォォォォォン!!
地面が爆発したような音を立て、心音が消える。
一飛四メートルの跳躍。炎の波を頭上から飛び越え、空中で三八式の銃床を妹紅の肩に叩き込む。
「ぐっ……重いな、おい!」
「加減はしてるけどね。死なれちゃぁ困るからねー」
「あはは! 心配すんなよ。あたしは『不死身』なんだ。どれだけ壊したって、死ねやしないのさ!」
妹紅の言葉に、心音の瞳がわずかに揺れた。
不死身。自分と同じ、あるいはそれ以上の「終われない存在」。
そこから始まったのは、幻想郷の住人が見れば戦慄するような「殺し合い(遊び)」だった。
キックが妹紅の肋骨を砕き、妹紅の炎が心音の軍服を焼く。だが、心音には外じゃ死ねなかった回復力がある。数秒後には傷が塞がり、再び拳を叩き込む。
一時間後。
二人は竹林の開けた場所で、ボロボロになりながらも並んで座っていた。
「……はぁ、……あんた、最高だ。こんなに本気で殴り合える相手、霊夢以外に初めてだぜ」
妹紅が笑いながら、新しい煙草に火をつけた。
「……私も、驚いてるよ。……舩坂さんよりも、しぶとい」
心音は、破れた軍服の袖を直しながら、ネームプレートをそっと撫でた。
「……藤原さん。一つ、聞いてもいい」
「なんだよ」
「……死ねないというのは、……辛いか?」
妹紅は煙を吐き出し、空を見上げた。
「さあな。昔はそう思ってたけどさ。……あんたみたいな面白い奴に会えるなら、長く生きてるのも悪くないかもな」
心音のポーカーフェイスが、少しだけ緩んだ。
彼女はこの楽園で、初めて自分の「異常性」を共有できる友を得たのだ。
「……また、遊んでくれますか。加減なしで」
「ああ。いつでも来な。銃声が聞こえたら、迎えに行ってやるよ」
心音は立ち上がり、いつものポーズを決めた。
両手をポケットに入れ、体を右に向けて、左目で妹紅を見下ろす。
「……君じゃあ私には勝てないよ。……次も、私が勝つから」
「ふん、言ってろ。次はあたしがそのプレート、ひっくり返してやるよ」
夕暮れの竹林に、二人の奇妙な友情の火が灯る。
かつて日本に仕え天皇第一の日本兵の、幻想郷での新しい人生が、生まれる




