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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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06

 人間、やろうと思えば意外とどうとでもなる。

 それを実地で学んだのは、拠点を移動させた時だった。


 以前、住んでいた町は田舎なこともあって、住民は少なかった。それに応じて、立ち寄る傭兵や冒険者も少なく、ある意味常に人不足だったと言える。例え冒険者がやってきたとしても、何日も滞在することは稀だし、特別に強い、凄腕、ということもない。


 その点、私は子供の元に早く戻りたいからとうっかり実力を発揮してしまったし、子連れで簡単に移動できないだろう、と足元を見られたのか、明らかに「他の人でもいいけど、ニーアの方が早いから、ニーアに任せちゃお」という感じの依頼をガンガン持ってこられたのだ。

 私へ依頼するために派遣する乳母(という扱いだったのかな?)の人件費を差っ引いても、仲介手数料が美味しかったのだろう。

 

 確かに不慣れな育児を手伝ってもらえてたのは助かるが、だからと言って私はこのままこの町に定住するつもりはなかった。それに、ガンガン依頼を持ってこられたおかげで、しばらくは働かなくて十分な生活費は稼げてしまった。


 なので、サクッと今まで借りていた部屋を解約して、次の町に移動することにしたのだ。



『ニ、ニーアさん、本当に行っちゃうんですか!?』

『うん。元々この町には一時滞在のつもりだったし。この家も毎月、都度契約にしてたのもそれが理由だし』


リートをおんぶして、リンデを抱っこして。必要のないものは処分して、必要最低限の旅支度をして最後にギルドに顔を出すと、職員一同、というわけではないが、何人かに悲壮感たっぷりに引き留められた。


『そ、そんなぁ。じゃあ、これからは誰に依頼をすればいいんですか!?』

『え、知らない』


 というか、元々、冒険者が仕事を求めていないのに、直接これを受任してほしい、なんてギルドからは言わない。

 本来、町を住みやすく発展し、住民の困りごとを解決するのは領主の仕事だ。その領主が対応しきれない仕事を、ギルドが請け負っているに過ぎない。欲しい素材があるなら商人に頼るべきだし、その商人が買い付けできないなら諦めるべきなのだ。

 あるいは、腕のいい商人を招けない領主が悪い。


 この町の領主って誰だったかな、と脳内貴族名鑑を開くが、オルトマン家と接点がなくて全然分からなかった。規模もそんなに大きくない町なので、男爵か子爵あたりだとは思うが、伯爵領の片隅という線も捨てきれない。

 いずれにせよ、この町は我が家の領民ではないし、貴族としても、領民としても、私が面倒を見る必要はないのだ。


 そんなわけで、さっさとギルドを後にして、隣町まで行く乗合馬車へ向かう。そのまま隣町まで馬車に揺られていると、抱っこしているリンデが目が覚めて、あたりをきょろきょろと見回していた。

 こんなに小さくても、いつも見ている風景と違うって分かるのかな?

 リートも起きたのか、もぞもぞと動いているのが背中越しに伝わった。


 馬車には私以外にもいるので、二人がいつ泣き出してもいいよう、念のため周囲に防音の魔法をかけておく。完璧に音を遮る遮音魔法も使えるが、防音魔法より知名度も高くないし、使える人も多くないので、明らかに子供が泣いているのに全く音が聞こえないと不審がられる可能性があるのだ。


「可愛いわね。双子ちゃんかしら。少し小柄だけど、三ヵ月くらいかしら?」

「ありがとうございます。はい、三ヵ月です」

「ぱっちりとしたお目目が可愛いわねー。お父さん似かしら?」


 幸いなことに、同乗者には女性が多く、リートとリンデの二人も温かい目で見守ってくれた。


 更に二人が一斉に泣き出すと、


「あらあら、おなか減ったのかしら」


 なんて、言いながら、こちらが何も言っていないのに、さりげなく移動しておっぱいの時間には壁になってくれた。

 おかげで、二人とも空腹のまま泣き続ける、という最悪の事態にはならなくて本当に助かった。

 

 認識阻害の魔法をうまく展開すれば、もしかしたら私が何をしているのかも認識できないかもしれないが、その「もしかしたら」にかけて人前で胸をはだけるのも嫌だし、そもそも認識阻害されていても見知らぬ男性に見られるのは死んでもゴメンだ。

 こういうときのために、目くらましの魔法を覚えるしかないかな。なかったら創るしかないかもしれない。


 片田舎の道は当然整備なんてされてなく、さらに乗合馬車は当然ながら「動けばいい」という程度なので、非常に揺れる。ガタガタと音を立てて動く度に、その衝撃がお尻に直接くる。


 正直、めっちゃ痛い。

 実家の馬車でさえ、整備されてない道だと痛いなと思っていたのだから、当然と言えば当然なんだけど!

 今まで、長距離移動は転移魔法を使っていたので、こんなにお尻が痛いなんて、知らなかった。


 少しでもその衝撃を軽くするために、お尻の下に空気の層を作ってみると、意外と悪くない。座面に触れていないので、衝撃は当然来なくなる。

 問題は、既存の魔法ではなく、その空気の層を作り続けている状態なので、魔力消費がとてもエグいこと。

 この場で新しく作り出すにはちょっと環境が良くない。壁になってくれたお姉様方にもこの魔法を使ってあげたい気持ちはあるが、自分の分で精一杯だった。


 今度、時間に余裕ができたら正式な魔法として作るのもいいかもしれない。応用すれば、馬車事業とかに需要がありそうだ。


 お尻の痛みが楽になると、それだけ心にも余裕が出てくる。

 今後の動きをぼんやりと考えながら、半日以上馬車に揺られて、ようやく隣町に着いたのだった。


 うん、三ヵ月の双子連れでも、移動はできた。次は、この子達を連れて簡単な依頼から着手できるか、かなー。自動姿勢補正も、保護魔法も、思ったよりも強固かもしれない。

 ……実は母上の手作りだったりする?

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