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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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05

「うーん……リートもリンデも、もしかしたら父親似……? ますます、認識阻害をかけ続けないとだめだなぁ」


 生後三ヵ月を迎え、子供たちの顔立ちが少しはっきりとしてきた。生まれたときは目も「ちゃんと開いてる?」と思うこともあったけれど、今ではしっかりと目を開けている。目に見える世界が珍しいのか、動かせる範囲で頭ごと動かして、あたりをキョロキョロと見回している。

 腕を上げて「あー」と声を上げる様子はとても可愛い。

 ふくふくとしたほっぺは至高の手触りで、つい人差し指で軽くツン、と押すと、私を見て笑うのだ。喜怒哀楽があるかわからないので、本当に楽しくて笑っているのかはわからないけれど、可愛いのでよし。

 さらに、ほっぺをつついている私の人差し指を掴んで離してくれない、なんてこともあるが、もう何時間でも握っていてほしい。ママは、あなた達にメロメロです!


 可愛いが、やはり、二人とも、私よりもミハエル殿下に似ている気がする。

 殿下と同じ髪色と目の色で、殿下似の子供を連れた、元婚約者。うーん、確実に、殿下の子だと邪推されるなぁ、これは。


 そういえば、未だに殿下が婚約解消された、という話は聞こえてこない。

 確かに田舎、それも平民にまで情報が行き届くには時間はかかるものだが、私が出奔してから既に一年が経過している。

 王家に関する情報は、慶事も弔事もすぐに広まる。婚約解消はどちらとも言えないが、そもそも、実家からも何も連絡がないので、婚約解消はされていないのかな。


 ベッドで眠る二人の可愛い我が子を見つめながら、ミハエル殿下のことを想う。

 殿下は今頃、何をしているんだろう。焦っていたとはいえ、サヨナラも何も言わずに出てきてしまったことを、今は少しだけ後悔している。

 もし私が殿下の立場なら……泣くな? 間違いなく。


 殿下のことは、防波堤、姉代わり、絶対的な味方のつもりで接してきていた。だから、どれだけ可愛がっていても、それはあくまでも親愛、友愛の感情だと思っていたのだけれども……

 あの日のことは、今でも思い出すと顔が熱くなる。直後は「やばい!」ということしか頭になかったが、改めて思い返すと、とても恥ずかしい。

 酔っていたときの記憶は残るタイプであるが、あの時の記憶は、後半の方は流石に記憶も朧気だ。殿下がなにか言っていた気もするけれど、そのあたりはもう記憶に残っていない。


 最近、ふと思うのだ。

 ――私は、殿下のことをどう思っていたのだろう、と。

 あの時、酔った勢いで、調子に乗っていつも以上に猫可愛がりをしていた自覚はある。それによって、殿下に火が着いたことも理解している。

 殿下に食べられるように口づけられたのも、ベッドで横たわって殿下を見上げたのも、素肌に触れられたのも――殿下を受け入れたのも。

 何一つ、嫌だと思わず、私が殿下を拒絶する要素はなかった。


 ……つまり、私は殿下を弟ではなく、親友でもなく、異性として見ていた?

 もしかして、もしかしなくても、私は殿下を好きだった??


 今更ながらに、自分の気持ちを理解する。しかし、今更すぎる自覚だ。


 もう少し、うまく動けたら良かったのだけど……あのときはあれが最善だと思っていたし、多分、あの時に戻ったとしても、同じように出奔するだろう。


「パパに会わせてあげられなくてごめんね」


 殿下にも、こんなにも可愛い子たちを紹介できないのが、少しだけ寂しい。もちろん、自分で選んだ道だから、これからもしっかりと隠し通すけれど。


 今は沈静化しているとは言え、いずれまた勃発するであろう王位継承争いに、オルトマン辺境伯の娘では、中央にいる殿下の力にはなれない。

 前王妃殿下の母親は、前オルトマン辺境伯だった祖父の妹、つまり私の大叔母様だ。大叔母様は中央にある我が家の家門に嫁ぎ、その娘である前王妃殿下が陛下の下へと輿入れされた。しかも政略結婚ではなく、望まれての婚姻だったという話だ。

 お子様になかなか恵まれず、泣く泣く現王妃である側室を迎える事になったそうだ。そのため、ミハエル殿下が生まれたときは、第一王子が生まれたとき以上の慶事として国中が祝福の声を上げたらしい。


 そういう経緯があるため、殿下にはやはり、中央で力を持つ貴族の後ろ盾が必要なのだ。

 確かに我が家の存在は国防に関わるため無視はできないが、中央政治には本当に疎いのだ。

 成人した殿下を王都に呼び戻したことを考えると、陛下はミハエル殿下を王太子への指名を考えている可能性が高い。それを踏まえると、やはり中央貴族を妃に選ぶべきだ。


「二人は、どんな子に育つかなー?」


 私に似ても、殿下に似ても、おそらく魔法は得意だろう。正確な検査を受けていないから魔力総量はわからないし、これからの成長幅もあるので未知数ではあるが、両親共に、魔法が得意なのだ。きっと、この子達も素晴らしい魔法の使い手になるだろう。

 平民としてこれからも生きていくのであれば、魔法が使えるのはあらゆる箇所で優位に働く。


 辺境伯領で育った私達はどちらかというと戦闘に特化した魔法の使い方だけど、できれば生活魔法も幅広く使えるようにあってほしいなぁ。

 そうしたら、成長して、自立した後も自分で認識阻害魔法で姿を誤魔化し続けることができる。

 白銀の髪も紫水晶の瞳も、陛下から殿下に受け継がれた色だし、第一王子と第二王子が持たぬ色だ。血の繋がりを示す色ではあるが、隠し続けるに越したことはない。

 だって、絶対に面倒なことになるし。


「ニーアさーん、またお願いしたい依頼があるんですけどー!」


 そうして、束の間の癒しタイムは、ギルドの受付嬢が依頼を持ってきたことによって終了した。

 最初に、難易度高いとされる依頼を夕方までに終わらせるという仕事ぶりを見せてしまったのは間違いだったかもしれない。


「この町も、そろそろ切り上げどきかな」


 二人の首も座り始めてきたし、母上からもらった保護魔法のかかったおんぶ紐と抱っこ紐があれば、移動くらいは問題ないだろう。

 思いの外強い力でリートに掴まれていた指をそっと解きながら、予定外の訪問客を招き入れた。


見切り発車でストックなし連載のため、明日(2026/1/17)は更新をお休みします。

18日か19日には更新再開予定です。間に合えば17日に更新します。

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