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復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!  作者: 鈴宮(すずみや)
【1章】幼女に復讐は難しい〜ピュアすぎる兄ができました〜
8/12

8.王都とお城とゼリックと

 王宮にはすぐに到着した。わたしが知らなかっただけで、我が家は王都のすぐ近くにあるらしい。



「すごい! 人がこんなにたくさんいる……!」



 窓の外を見ながらそう言うと、ゼリックはそっと目を細めた。



「リビー、見て。あのお店、リビーが大好きなケーキ屋さんだよ」


「え? あそこが?」



 王太子の側近候補になってから、王都に出かけるたびにゼリックはわたしへお土産を買ってきてくれた。ケーキや花束、ドレスやリボンなどなど。寂しい思いをさせたお詫びってことなんだけど、改めて考えてみるとめちゃくちゃ甘い。パパやママよりもよほど財布の紐が緩い気がする。



「帰りにお店で食べて帰ろうか?」


「え? いいの?」



 外食なんて生まれてこの方(前世を含めて)したことがない! わたしが瞳を輝かせると、ゼリックがよしよしとわたしを撫でた。



「せっかくリビーと街に来れたんだし、どうせなら楽しく過ごしたいからね」


「嬉しい……! ありがとう、お兄様!」


「ケーキを食べ終わったら、一緒にお洋服を見ようね。本屋さんでもいいよ。リビーが好きなところに連れて行ってあげる」



 わたしは思わずゼリックに抱きつく。なんだか俄然王都滞在が楽しみになった。



(……いや、違う違う)



 わたしの目的は王太子! 王太子に気に入られて、妃候補になれる可能性を増やすことだ。ゼリックとのお出かけはあくまでオマケ。オマケではあるんだけど――正直言ってめちゃくちゃ魅力的だ。



 王都に入ってから馬車に揺られること三十分、わたしたちは王宮に着いた。馬車から降りると、ゼリックは慣れた様子で城の入口に進む。



「ゼリック様、お待ちしておりました」



 と、出迎え役の男性がやってきた。サラリーマン風のきっちりした格好をした若い男性だ。王太子の世話役か、国王の側近だろうか――わたしはゼリックと一緒に深々と頭を下げる。



「そちらのご令嬢は?」


「妹です。僕と離れたくないと言ってついてきてしまって」


「お兄様……恥ずかしいです」



 照れたように笑うゼリックの袖を引きつつ、わたしは言う。この男性が王太子に近しい存在だとすれば、わたしが妃に選ばれる可能性が下がってしまうから、そういうことは言わないでほしい! わたしの復讐計画が台無しになってしまう!



「そうでしたか」



 けれど、男性は目を細めてわたしたちを見つめると「こちらへどうぞ」と案内してくれる。真面目で堅物そうだけど、案外優しい人のようだ。



(よかった)



 わたしを勝手に連れてきたことでゼリックが怒られたらどうしようって思っていたけど、取り越し苦労だったみたい。ホッと胸を撫で下ろしていると「あの……」とゼリックが手をあげる。



「妹は別室で待たせていただくことは可能でしょうか?」


「ええっ!?」



 いったいなにを言い出すかと思えば! せっかくここまで来れたのに、王太子に会えないなんてあんまりだ。



(ひどいよゼリック)



 驚くわたしをよそに、男性が「それはもちろん可能ですが」と返事をする。



「アインハード殿下も、たまには同年代の方と交流をしたほうがいいでしょう。よろしければ妹様もご一緒に……」


(いいぞいいぞ!)



 思わぬ形で援護してもらえたわたしは、心のなかでついつい興奮してしまう。



「しかし、妹は淑女教育を受けはじめたばかりですし、殿下に対して粗相があってはいけませんから」


「大丈夫ですよ。私が拝見したところ、妹様は年齢相応のマナーを身につけていらっしゃいますし、まだまだ幼くていらっしゃる。なにがあっても責任は私が取りますのでご安心を」



 どうやらこの男性は王太子とわたしを引き合わせたいらしい。



(やっぱり可愛いから?)



 ……なんて自惚れたくなるけど、多分理由は違っている。完璧聖人ゼリックの妹ならば大丈夫だという謎の安心感が働いているのだろう。ありがたい……ゼリック様さまだ。だけど、当のゼリックはわたしと王太子を会わせたくないらしく、やんわりと断り続けている。



(かくなる上は)


「お兄様、わたしも一緒に行きたいです」



 わたしはゼリックの腕に抱きつきながら思い切り甘えた。ゼリックはムッと唇を尖らせ、うーんとしばらく頭を捻る。



「……今回だけだよ」


「はい! ありがとうございます」



 わたしはゼリックに見えないようにガッツポーズを浮かべた。



 城内はとても広く、美しかった。一応わたしも姫だけど、城が襲撃されたのが赤ん坊の頃だったため、サウジェリアンナ城内の様子はほとんど知らない。多分、わたしの部屋やお父様やお母様の部屋ぐらいしか入ったことがなかったと思う。……というか、かなりの時間を眠って過ごしていたから覚えていなくて当然だ。


 とはいえ、国が違えば文化が違うということは、この一瞬で実感した。造りとか装飾とか雰囲気とかが絶妙に違うもの。学がないせいで、どこがどうって表現はできないけど。



「こちらでございます」



 わたしたちは城の中央にある部屋の前へ案内された。重厚感のある両開きの大きな扉が開かれて中に入ると、大きなソファが目に留まる。



「遅いじゃないか、ゼリック」



 そして、すぐに幼い声が聞こえてきた。おそらく王太子のものだろう。



「すみません殿下。少し事情がありまして」


「事情? 俺より優先する事情なんてないだろう?」


(なにを?)



 ゼリックに対してなんて偉そうな! ……いや、身分的には王太子のほうが上だけど、超優秀で純粋なわたしの大事なお兄様にこんな口をきくなんて許せない!



(いったいどんな顔をしてるんだろう?)



 どうせ碌でもない容姿に違いない。というか、そうであってほしい!

 そう思いつつ、ゼリックの背中からヒョコリと顔を出して覗いたわたしはヒュッと思わず息をのんだ。


 サラサラの金の髪に、切れ長の青い瞳、彫刻のように整った超絶美形の男の子がそこにいた。

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