第88話:オロオロ鳥の卵
異世界、神の島の自宅。
10個で銀貨5枚の高級卵を買って帰宅した俺。
居間でくつろぐユガフ様とルカたちに「ただいま」と声をかけて、すぐキッチンに向かった。
(まずは菌類のチェック……っと。お、日本の卵と同じくらい清潔だ)
鑑定魔法で調べてみると、野生の鳥の卵とは思えないくらい外側も内部も清浄で、生食可という結果が出た。
これはもう白飯にかけて食べるしかないね!
ユガフ様やルカたちは、卵焼きの方が好みだろうから焼いてあげよう。
食器棚から木の椀を取り出して、卵を3つ割り入れる。
オロオロ鳥の卵は、サイズも割ってみた感じも鶏卵にソックリだ。
安物の白い卵みたいな水っぽさは無く、器の中でしっかりと盛り上がっていて、新鮮で高品質な卵という感じがする。
菜箸で黄身と白身をほぐして混ぜ合わせると、トロリとしたクリーミーな卵液になった。
卵焼き用の四角いフライパンは、現実世界から持ち込んだ物。
火の魔石を仕込んだコンロは、IHコンロに似ている。
加熱の温度調整も今や慣れたもので、俺は難無く卵焼きを焼き上げた。
調味料不使用だけど、無塩バターを焼き油に使ったので、良い香りが漂っている。
猫たちが食べやすいように切り分けた後、端っこの部分を少し味見してみた。
(おぉ! 調味料使ってないのにほんのり甘くて美味い!)
思った以上に美味しくできた卵焼きを小皿に分配した後は、卵かけごはんの用意。
白飯はまとめて炊いて1食分ずつ小分けして異空間倉庫に保管している。
1食分の白飯を取り出して茶碗に入れ、卵を1つ割り入れて、醤油を回しかけたら後は混ぜるだけだ。
サラダもまとめて作って小分けして異空間倉庫に入れてあるから、それを1つ取り出せばOK。
異世界の自炊は、現実世界よりも楽に済ませられるよ。
「ごはんだよ~」
「おぉ、卵焼きじゃな」
「みっ、みみっ」
「みぃ~」
「み~っ」
居間の扉を開けると、キッチンからの匂いで空腹度UPした猫たちが大騒ぎしている。
猫たち1匹1匹の前に小皿に盛ったキャットフードと卵焼きを置いてあげると、みんな飛びつく勢いで食べ始める。
ソファに座って待つユガフ様も、卵焼きを受け取ると嬉しそうに目を細める。
ユガフ様は猫の手なのに器用にフォークを持って、卵焼きを刺して口に運び始めた。
「この甘みはオロオロ鳥じゃな。やはり美味いのぅ」
「うん。今が大繁殖期で毎日新鮮なのが入荷するって言ってた」
満足そうなユガフ様の隣に座り、俺はサントルの卵屋で聞いた話を伝える。
その後は、卵と醤油と白飯を箸で混ぜ合わせて、高級卵で作った卵かけごはんを味わう。
初めて食べるオロオロ鳥の卵は、生でも甘みと旨味があって美味しかった。
「ん~美味い! 明日の卵採集、やる気出てきた!」
「サントルの森へ行くんかの? 自殺鳥には気を付けるんじゃぞ」
「自殺鳥???」
「オロオロ鳥の異名じゃよ。奴等はすぐパニックを起こして色んなところへ突っ込むからのぅ」
「そういや、サントルの商店のオヤジが『自分が何してるか分からなくなって突っ込んでくる』とか言ってたよ」
「うむ。木や岩に激突して死んだり、冒険者が咄嗟に構えた剣に突っ込んで死んだりするぞい」
「だから自殺鳥なのか……」
オラオラ鳥よりも厄介なオロオロ鳥。
俺は上手く卵を採れるだろうか?




