第87話:卵屋さん
サントルの商店街。
卵が描かれた看板を掲げる店の扉を開けると、様々な大きさと色合いの卵がズラリと並んでいた。
棚には干し草を円形に編んだ籠が並んでいて、それぞれに卵が5~6個ずつ置かれている。
ウズラの卵みたいに小さい卵もあれば、ダチョウの卵みたいに大きい卵もある。
俺が見慣れたオラオラ鳥の卵もあった。
(お~凄い、まるで卵博物館だ)
興味津々で店内を見回した俺は、店の奥のカウンターテーブルで店主と話すセーヤがいることに気付いた。
テーブルの上に置かれているのは、1つ1つ仕切られた箱に詰められた薄青色の卵。
店主はそれを1つ1つ丁寧に取り出して、天秤のような道具で重さを量っている。
「やあクルス、買い物かい?」
「へいらっしゃい! 採れたて新鮮な卵が入ってるぜ」
セーヤはドアベルの音で入ってきた俺に気付いて振り返り、気さくに話しかけてくる。
卵の検品をしている店主も顔を上げて、愛想よく声をかけてきた。
「うん。オロオロ鳥の卵ってあるかな?」
「それならほら、これがそうだよ」
セーヤはオロオロ鳥の卵を採ってきたらしい。
箱詰めされた卵は、ロティエル様に届けた物と同じくらいの大きさで、殻の薄青色は少し濃い色をしていた。
「オロオロ鳥は今が大繁殖期で、毎日新鮮な卵が入荷するからオススメだよ」
「じゃあ、10個下さい」
「あいよっ、銀貨5枚だよ」
オロオロ鳥の卵は、2個で銀貨1枚らしい。
銀貨1枚は日本円で千円くらいなので、日本のスーパーの鶏卵に比べると凄い高級卵だ。
養鶏とは違い、冒険者が森の中を探し回って見つけてくるんだから、原価もそれなりにお高いんだろう。
近くの棚に並ぶオラオラ鳥の卵の方が安いのは、親鳥の取り扱い難易度的な理由だろうか?
「まいどあり~!」
店主の威勢のいい声に送り出されて、俺は卵を異空間倉庫に収納して店を出た。
日本だったら五千円も払って卵買わないけど、異世界の俺は渡し屋が繁盛しているおかげで懐に余裕がある。
荷馬車10台を移動させられる渡し屋は希少な存在なので、辺境伯様のところ以外にも頻繁に依頼がくるんだ。
商業ギルドの登録渡し屋になって以来、俺はすっかり裕福になっていた。
(高級卵ゲット! オムレツもいいけど卵かけごはんもいいな)
初めて食べるオロオロ鳥の卵にワクワクする。
そういえば、日本以外では生卵はサルモネラ菌が危ないんだっけ?
卵かけごはんにするなら、分離で卵に付いてる菌類を除去した方が良さそうだ。
まあ、仮にサルモネラ菌みたいなのがいたとしても、世界樹の葉を食べておけば食中毒にはならないけどね。
「クルス、ちょっと待って」
「ん?」
店を出て少し歩いたところで、セーヤに呼び止められた。
セーヤは納品を済ませた後、店を出て俺を追いかけてきたらしい。
「オロオロ鳥の卵、クルスなら自力で採れると思うよ。明日一緒に行ってみるかい?」
「え? いいの? じゃあ是非」
「OK。明日の日没前にうちへ来てくれたら案内するよ」
セーヤは卵採集に連れて行ってくれると言う。
サントル周辺の森には入ったことがないから、行ってみたいな。
御厚意に甘えて、俺は卵採集に同行させてもらうことになった。
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