第84話:巣荒らしオス
異世界、神の島。
俺は食料調達のため、オラオラ鳥にタイマン勝負を挑んでいる。
炎を纏う鶏冠とフラミンゴみたいな薄紅色の体色が特徴のオラオラ鳥。
その平均的なサイズはダチョウくらい。
しかし、今こちらを睨んでいる奴は、ダチョウ2羽分くらいのビッグサイズだ。
「お前だな? 他の奴の卵を全滅させてるのは……」
「……」
問いかけても、勿論返事は無い。
代わりに、奴の足元に転がる卵の殻と、嘴に付いた黄身が全てを物語っていた。
オラオラ鳥の卵は、成鳥の大きさに比べて随分と小さい。
鶏卵よりは大きい卵も、2倍サイズの奴と比較すると、更に小さく見えた。
生物界では、オスが他のオスの子を殺してしまうことがある。
自らの遺伝子を残して他を排除しようとする本能によるものらしい。
自然の摂理だから、まあしょうがないといえばしょうがないんだけど。
卵、全部食うな!
俺も食べたいんだよ!
というわけで朝ごはんの卵確保のため、ついでに肉も確保するため、俺は2倍サイズのオラオラ鳥にバトルを挑んだ。
奴も受けて立つ気で、首周りの羽毛を膨らませる。
直後、ダンッ! と地面を蹴り、巨体が突進を始めた。
「オラオラオラオラ~ッ!」
その名の通りな雄叫びを上げて、奴が来る。
俺はその場から動かず、待ち構えた。
「オラ~ッ!」
ダチョウよりデカイ鳥の蹴りが飛んでくる。
俺はその足裏に拳を叩き込んで応じる。
ガシイッ! という手応えと共に、奴の蹴りを止めた。
「コオォ~」
得意の蹴りを止められて、奴はイライラし始めたらしい。
体格差があって低い位置にある俺の頭目掛けて、嘴が振り下ろされる。
俺はその嘴を、もう片方の手で掴んで止めた。
「今度はこっちからいくぞ」
オラオラ鳥の2種類の攻撃を止めた後は、こちらから反撃だ。
俺は奴が押す力に合わせてスッと身を屈めた後、薄紅色の羽毛に覆われた股間に強烈な蹴りを食らわせた。
「ゲエッ!」
奴の足が右拳から離れると同時に、嘴を掴んでいた左手を離す。
巨体が仰け反り、白目を剥いた奴が倒れていく。
(金的蹴り、有効打ではあるけど、同じオスとしてはあまり使いたくないなぁ)
俺は心の中で呟きつつ、仰向けに倒れて泡を吹きながらピクピクしている奴をしばし眺める。
それから、手近な蔦を取って巨鳥の足に縛り付けた。
オラオラ鳥の股間には、羽毛に隠れて目立たないが睾丸があるんだ。
繁殖に重要な部位であり、オスの急所でもある。
そこを蹴り上げられた奴は、完全に目を回していた。
とはいえ、奴は死んだわけではない。
俺は奴が失神して無抵抗のうちに、大木の枝に蔦をかけて引っ張り上げる。
吊り下げた後は異空間倉庫から剣を取り出して、頭と身体をオサラバさせた。
これで奴は気絶状態から死亡状態に変わった。
(こうなってしまえば、もう普通の食材だな。美味しく食ってやるから恨むなよ)
しばらく吊り下げて血抜きを終えた奴を異空間倉庫に突っ込むと、俺は空間の入口を開けたまま生活魔法【解体】を放った。
収納したオラオラ鳥が、各素材と各部位の肉に分かれて異空間に保管された。
これでしばらくの間は肉に困らない。
しかし奴が全ての卵を食い荒らしてしまったので、卵は1つも残っていなかった。
こんな状態になったら、親鳥たちは巣を放棄するだろう。
(卵は……しばらく手に入りそうにないなぁ)
俺は卵の採集を諦めて帰宅した。




