エンディング
(砂時計の最後の砂が落ち切り、静寂がスタジオを包む。4人の「裏切り者」たちは、長い議論の疲労と、ある種の充実感を顔に浮かべている)
あすか:「皆様、本当にお疲れ様でした」(クロノスを手に取り、今日の議論のハイライトを空中に投影する)「2時間にわたる激論...いかがでしたか?時空を超えて、同じ『裏切り者』という烙印を押された者同士が語り合う。これは歴史上初めての試みでした」
光秀:(静かに微笑む)「不思議な体験でした。まさか、西洋の方や、異なる時代の武将たちと、このような深い議論ができるとは」
ブルータス:「同感です。私も、東洋の忠誠観や、時代を超えた普遍的な苦悩について、多くを学びました」
呂布:「ふん、理屈っぽい話ばかりで疲れたが...」(少し照れくさそうに)「まあ、無駄ではなかったな」
アーノルド:「初めてですよ、こんなに真剣に、偏見なく話を聞いてもらえたのは」
あすか:「皆様の間に、ある種の理解が生まれたようですね。最初は互いを批判し合っていましたが...」
光秀:「そうですね。最初、呂布殿を見た時は、ただの野蛮人かと思いました。申し訳ない」
呂布:「はっ!俺もお前を、じめじめした陰謀家だと思っていた」
ブルータス:「私は、アーノルド殿を単なる金銭目当ての裏切り者だと...失礼しました」
アーノルド:「いえ、私もブルータス殿を、現実を知らない理想主義者だと決めつけていました」
あすか:「しかし、議論を通じて、それぞれの真実が見えてきた」
光秀:「呂布殿は、確かに粗野に見えるが、実は非常に正直で、真っ直ぐな方だ」
呂布:(顔を赤くして)「お、おい、急に褒めるな」
ブルータス:「アーノルド殿の苦悩も、よく理解できました。功績が認められない辛さは、私も経験があります」
アーノルド:「ブルータス殿の理想主義も、単なる夢想ではなく、深い哲学に裏打ちされていることが分かりました」
あすか:「そして、光秀様は?」
呂布:「あいつは...まあ、俺とは正反対だが、それなりに筋は通っている」
ブルータス:「東洋の『義理』という概念、非常に興味深かった。理屈を超えた人間関係の深さを感じました」
アーノルド:「最も計画的で、冷静な判断をされていたと思います。三日で終わったのは、運が悪かっただけでしょう」
光秀:(頭を下げる)「過分なお言葉、恐縮です」
あすか:「では、改めて伺います。今日この場で話し合えて、どんな感想をお持ちですか?」
光秀:「他の時代、他の文化の『裏切り者』と語れて、非常に興味深かった。我々は皆、時代の転換点にいた。そして、苦悩していた。その苦悩を共有できたことが、何より価値があった」
ブルータス:「哲学的な議論ができて満足です。特に『忠誠とは何か』という問いについて、これほど深く考えたことはありませんでした。東洋の忠誠観は、私の共和主義とは異なりますが、人間の本質的な部分では通じるものがある」
呂布:「面倒くさい話だったが...」(ぶっきらぼうに)「まあ、お前らも苦労したんだな、ということは分かった。俺だけが裏切り者じゃない。皆、それぞれの理由があった」
アーノルド:「初めて、偏見なく話を聞いてもらえた気がします。200年以上、私は『売国奴』としてだけ記憶されてきた。しかし、今日は一人の人間として、その選択の理由を語ることができた」
あすか:(クロノスを操作し、視聴者のコメントを表示)「視聴者の皆様からも、多くの反響が寄せられています。『裏切り者にも事情があったんだ』『歴史の見方が変わった』『単純な善悪では判断できない』...」
光秀:「それは、ありがたい。我々の真意が、少しでも伝わったなら」
ブルータス:「しかし、だからといって、我々の行為が正当化されるわけではない」
呂布:「まあな。殺したものは殺した。それは変わらん」
アーノルド:「そう、事実は変えられない。ただ、その背景を理解してもらえれば」
あすか:「理解と許容は違う、ということですね。では、もし皆様が現代に生きていたら、どんな職業に就いていたと思いますか?少し軽い話題ですが」
光秀:(考えながら)「私は...おそらく外交官か、国際調停の仕事でしょうか。話し合いで解決する道を探したい」
ブルータス:「私は哲学者か、政治学者になっていたでしょう。理想の政治体制について研究したい」
呂布:「俺か?格闘家だな。あるいは軍人。やはり戦いが性に合っている」
アーノルド:「私は起業家になりたい。自分の才能を正当に評価してくれる環境を、自分で作る」
あすか:「なるほど、それぞれの個性が表れていますね」
呂布:「おい、一つ聞きたいことがある」
あすか:「何でしょう?」
呂布:「この『クロノス』とやら、本当に時間を操れるのか?」
あすか:(神秘的な笑みを浮かべる)「さあ、どうでしょう。物語の声を聞く装置ですから...過去も未来も、全ては物語かもしれません」
ブルータス:「哲学的な答えですね」
光秀:「まるで、夢か現か分からない...本能寺の炎の中で見た幻のようだ」
アーノルド:「でも、この対話は現実だった。そう信じたい」
あすか:「現実かどうかは、視聴者の皆様が判断することです。さて、そろそろお別れの時間が近づいています。最後に、皆様から視聴者へ、メッセージをお願いします」
光秀:(立ち上がり、深く一礼)「現代を生きる皆様へ。歴史を学ぶ時、勝者の視点だけでなく、敗者の視点からも見てください。そこには、別の真実がある。そして、暴力ではなく対話で解決する道を、常に探してください。私のような過ちを繰り返さないために」
ブルータス:(立ち上がる)「理想は大切です。しかし、理想のために手段を選ばないのは間違いです。目的が手段を正当化することはありません。私の失敗から、それを学んでください」
呂布:(腕を組んだまま立つ)「強さは必要だ。しかし、強さだけでは何も守れない。信頼、仲間、家族...それらを大切にしろ。俺のように孤独に死ぬな」
アーノルド:(最後に立ち上がる)「自分の価値を正当に評価されないと感じても、短絡的な行動は避けてください。時間をかけて、別の道を探す。そして何より、家族を大切に。彼らを巻き込んではいけません」
あすか:「ありがとうございます。重みのある言葉です。それでは、時空の彼方へお帰りいただきましょう」
(スターゲートが再び青白く輝き始める)
あすか:「まず、明智光秀様」
光秀:(振り返って)「皆様、良き議論でした。特に呂布殿、あなたの率直さから多くを学びました」
呂布:「ふん...まあ、お前も悪くなかったぜ」
光秀:「では、これにて...」(深く一礼し、スターゲートへ消える)「願わくば、歴史が繰り返されませんように...」
(光秀の姿が光に包まれ、消えていく)
あすか:「ブルータス様」
ブルータス:(他の3人と握手を交わす)「素晴らしい議論でした。時代も文化も超えて、人間の本質は変わらないことを実感しました」
アーノルド:「お互い、理想に殉じた者同士ですね」
ブルータス:「さらば、諸君。願わくば、より良き未来のために」(トーガを翻してスターゲートへ)
(ブルータスも光の中へ消える)
あすか:「呂布様」
呂布:(照れくさそうに)「なんだ、この妙な気分は...別れが惜しいなんて、俺らしくない」
アーノルド:「それは友情というものですよ、将軍」
呂布:「友情か...悪くない」(豪快に笑う)「じゃあな!今度会う時は、酒でも飲もうぜ!」
(方天画戟を担ぎ、豪快にスターゲートへ飛び込む)
あすか:「最後に、アーノルド様」
アーノルド:(一人残され、スタジオを見回す)「不思議な体験でした。初めて、同じ立場の人間と話せた」
あすか:「孤独だったのですね、ずっと」
アーノルド:「ええ...でも、今日で少し救われました。ありがとう、あすか」(敬礼)「そして、視聴者の皆様も」
(アーノルドも光に包まれ、消えていく)
あすか:(一人残されたスタジオで、カメラに向かって)「『裏切りは悪か?』...2時間にわたる議論でも、明確な答えは出ませんでした。しかし、それでいいのかもしれません」
(クロノスを手に、ゆっくりと歩き始める)
あすか:「歴史は繰り返します。これからも、新たな『裏切り者』が生まれるでしょう。しかし、過去から学ぶことで、より良い選択ができるかもしれません。暴力ではなく対話を、憎しみではなく理解を、断罪ではなく考察を」
(砂時計を手に取る)
あすか:「時間は止まりません。しかし、過去と対話することで、未来は変えられる。今日の4人の『裏切り者』たちが教えてくれたのは、そういうことかもしれません」
(照明が徐々に落ち始める)
あすか:「単純な善悪で人を判断しないこと。背景にある苦悩を理解しようとすること。そして、同じ過ちを繰り返さないこと。これが、歴史を学ぶ意味ではないでしょうか」
(最後にカメラに向かって微笑む)
あすか:「次回の『歴史バトルロワイヤル』では、また新たな歴史上の人物たちをお招きし、永遠の問いに挑みます。私は物語の声を聞く案内人、あすかでした。ご視聴、ありがとうございました」
(照明が完全に落ち、最後にクロノスだけが銀色に光る。その画面に「裏切りは悪か?」という問いが浮かび上がり、ゆっくりとフェードアウトしていく)




