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17.捜査二日目 ⑥公爵令嬢再び


なんでこんなことに?


グレイ殿はウェストウッド殿とのアポイントを覚えていてくれて、わざわざブラックモア侯爵家まで俺を迎えに来てくれた。


そして、お嬢さま念願の南京錠も持って来てくれたのだ。

貸し出しの許可がおりて本当に、ほんっとうに良かった。


でも、ウェストウッド殿から聞いた話は、正直当てにならなそう。

なんか、すっごい動揺しちゃって、言ってることが支離滅裂だったし。


本当はウェストウッド殿とのアポイントの後はお嬢様に言われたとおり、商会の聞き込みに行くつもりだったんだけど、なんでもサム・リドルが俺に話したいことがあるだとかで、グレイ殿と一緒に王宮に向かうことになった。


で、俺は今、王宮の一室でお茶をいただいている。


ジュリアナ・ケンウッド公爵令嬢と一緒に。


もう夕方も過ぎて、あたりも暗くなってきてるんだから、早く帰った方が良いんじゃないですか?


とは、言えないので、おいしいお茶を一口含む。

あー。染みわたるー。


「あの、あの、エドモンド様は、ブラックモア家で働いているんですよね?」


「はい。そうです。」


「あの、そのー…どうしてですか?」


どうしてって…関係ないだろ!

とは、言えないので、当たり障りなく答える。


「縁がありまして、ブラックモア侯爵家に拾っていただいたんです。」


「そうなんだ…。あの、侯爵令嬢が何かしたとか、そういうことはないですか? その…私、あなたが大変な環境だったって知ってて…」


何が言いたいんだ? この子。


2年前。お嬢様と出会った時のことを思い出す。


『とりあえず、うちで見習いでもしたらどうだ? 何もしないよりはためになるだろう。』


黄金にオレンジ輝きを煌めかせたお嬢様の瞳。

最初見た時は、太陽みたいだなって思ったな。


いけない、いけない。

センチメンタルになってしまう。


「おっしゃっていることが良くわかりませんが…自分は普通に孤児院の出ですし、お嬢様とはそこで縁あって知り合っただけです。採用を決めてくださったのは、旦那さまです。」

そ、言うことになっている。

先代の執事さんにさんざん仕込まれた、俺の設定だ。


「本当のことが言えないのはわかってます。でも、そのー…気を付けてください! あの、侯爵令嬢、取り巻きのモブのくせに、ハーレムを狙っている可能性がありますから!」


何言ってんの? この子。

ハーレムって何?


「それは、どういう意味でしょうか?」

「だから、そのイケメンの心を掴んで、ちやほやされようとしてるんですよ! ウィリアム王子も、なんか侯爵令嬢のこと褒めてたし。絶対、そう!」

そう言って、彼女はうんうんと納得するようにうなずいた。


「あの「なんか、おかしなこととか言いませんか?普通だったら知らないことを知っていたり、変に頭がいいとか、そんなことないですか?」


人の話遮んないでよ。

でも、お嬢様が変なこと知ってるとは事実なんだよなー。

わけわかんなけど、この子よりは100倍はまし。


「お嬢様は、ご年齢の割に優秀すぎるところはありますが、それはお嬢様の努力によるものです。読書が好きで、新しい知識が好き。そういう方なんです。」


これはほんとのことだ。最新技術とかには、ほんとに目がなくて、海外から難しい論文なんかを取り寄せたりしている。

それを読むために、言語の勉強も一生懸命やってた。

単に変で賢いってだけの知識じゃない。


俺がちょっと強い口調で返したからか、彼女はぽけーっと呆けてこっちを見ている。


誤る必要ないよね?

え? 謝る?


「やっぱ、かっこいーーーーー」


ぽけーっとしていた彼女が呟いたと、思ったら、身を乗り出してきた。

お行儀悪いよ。


「あの! うちで働きませんか? 私の従者で! 侯爵家よりお給料も良くしますし! あんな、王子も狙ってるようなやつのところにいる必要ないですよ! 私、大事にしますので!」


顔に張り付けている外行用の笑顔が剥げそう…

別に給料で働いてるわけじゃないし。

お嬢様は王子殿下なんか狙ってないし。

大事には…されてないかもだけどー。

必要とされているはず。

たぶん。


と言うか、彼女についてる侍女は何も思わないの?

あそこに控えてる人、王宮の制服とは違う制服着てるし、彼女の侍女だよね?

その侍女さんは鉄仮面なのかってくらい無表情を貫いていた。


「いえ…。ありがたいお誘いですが、自分の一存では何とも。」

そう言って濁す。

使用人っていうのは立場が弱いんだ。

主人じゃなくても、権力持ってる人に否定はできないんだから。


「わかりました!!」

なんかすごく気合を込めてそう言った彼女は、彼女は席を立った。


帰るのかな?


「待っててください。私が必ず、幸せにしますから。」


そう言って小さな手で俺の手を握った彼女は、決意を固めた目をしていた。


頼んでないって。今幸せだし。


俺が返事をする前に、彼女はパッと手を放して、

「今日はありがとうございました。」

と言ってカーテシーをしたかと思うと部屋を後にした。


何だったの? あの子?


お読みいただきありがとうございます。

前のエピソードすべて大幅に改編していますので、ご注意ください。

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