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5、side アダン

「……寝たようだな」



 安らかな寝息を立てているエーヴァを横目に、アダンは残っていた紅茶を飲み干す。


 この街に地上の人間が降りてきたのは、二千年振りだった。

 

 ここは先程彼が言った通り、女神デューデの加護を持つ国。遙か昔、女神によって作られたのがこの街だ。

 街は女神の加護があるために、生物は不老不死……特に人間はある程度まで老化は進むが一定の年齢になると老化は止まるようになっている。

 

 そして全ての無機物は劣化しない。 

 そのため、今アダンが暮らしている城……地上で言い換えるなら、女神デューデが降臨する際に使用される大聖堂のようなものなのだが、この城は創世時のまま保たれているそうだ。


 他にも様々な加護がかけられているのだが、その全容は彼も知らない。


 ちなみに、その事を教えてくれたのは、アダンが管理している城の書庫で書物を管理しているセファーと言う男。

 アダンも二千年ほど街で暮らしているが、大体百年に一度のペースで顔を合わせる彼は、女神デューデの眷属である天使と呼ばれる存在だ。

 街の人たちは彼を崇拝しているからか、頭を下げられるのが苦手だと言ってセファーは滅多に外に出てくることはないが。

 

 アダンもこの事実を最初は信じる事ができなかった。だが、この街に降臨した女神デューデの存在により、信じざるを得なかったのだが。

 

 実は二千年前にこの場所へと辿り着いた人物、それがアダンだ。

 彼もある事情からこの街の人間に助けられた後、女神デューデによって街の維持を依頼され、城の管理と街の管理を一手に引き受けていた。

 穏やかな人々に囲まれ過ごした事で彼が地上の時に受けた心の傷は既に癒えている。

 そう、彼もエーヴァのように虐げられていたのである。


 だから彼女の瞳に警戒心が宿っている事も気づいていたし、今も素直に話をしてくれているが、表情が全くない事をアダンは痛ましく思っている。

 この街に降りてきた時の己と同じだったからである。

 

 そして彼女が泉へ入水するところを見ていた事もアダンの気持ちに拍車をかけていた。

 

 

 彼が暮らしている城……ジュリザレン城には、合言葉を唱える事で泉周辺で現在起こっている事が見える時見の鏡というものがある。

 実はそれを管理しているのもセファーなのだが、エーヴァが入水する数日前に彼がその鏡を持ってアダンの元に訪れたのだ。

 「神託だ」と言われて大聖堂へセファーと共に向かえば、そこに女神デューデが降臨。


 話を聞けば、「神託とは異なる人物が泉へ入水するかもしれない」という。

 

 もし神託とは異なる人物が入水した場合、助けるよう女神デューデはアダンに伝えた。

 そしてもう一人……セファーに話したのは書庫の奥にある宝物殿に入る事を許可する、と言う言葉だ。

 

 セファーに伝えられた言葉にアダンは首を傾げる。書庫の奥に宝物庫など、彼は聞いた事がなかったからだ。

 

 いつの間にか女神は消えており、セファーに連れられアダンは書庫の奥にある、ある本棚の前に立つ。

 セファーが一番上にある書物を前に倒すと、ごごご、という大きな音が鳴り、本棚が扉のように手前に開いたのである。


 二千年住んでいて知らないことがあるとは、と呆気に取られるアダンに対して、セファーは



「ここは僕の領域だからさぁ〜。隠蔽するのは得意なんだぁ」



 とのんびり欠伸をしながら話し出す。ポカンと口を開けているアダンを尻目に、彼は光で先が見えない扉に近づき、手を伸ばした。

 光の中から彼が手を戻すと、そこには青い光を宿した大きな宝石がついている首飾りが握られている。どのような仕組みになっているのかと首を傾げるアダンにセファーは笑いながら言った。



「まあ、ここには入れないと思うけどさぁ、入らないように気をつけてよぉ〜? 入ったら出て来られないからねぇ〜。ああ、でも、もうアダンにはそんな機会はないかもね」



 「どういう事だ」と尋ねようとしたアダンだったが、その前に背後から「アダン!」と呼ばれたため、彼は訊く事を辞めて首飾りを受け取ると、声の方へ背を向ける。

 どうやら地上の世界で動きがあったらしい。

 

 女神デューデの言葉がアダンの元へ降りてきた時、彼は警備していた者へ伝言を頼み、自分が図書館にいる事を伝えていた。それだけではなく、時見の鏡で地上を見るようにと伝えていたのだ。

 時見の鏡とは女神の泉限定ではあるが、合言葉を唱えればその場で起きている事が見える鏡であり、女神デューデからはるか昔に与えられたものだと聞いている。

 

 

「アダン! 赤い光だった!」

「なんだって!」



 周囲はその言葉を受けて騒々しくなる。

 赤い光、というのは、巫女になる人物が違う、警告の色だ。

 

 もし、彼女が泉に飛び込むのであれば、助けに行かなければならない。それが女神の意思であった。すぐにアダンが時見の鏡を覗き込むと、無表情で石の上に立っている女性がいる。

 奥には現国王夫妻と思われる人物や、教皇であろうと推測される人物が悲しそうな表情をして彼女を見ていた。

 だが、その後ろに立つ三人は周囲に見えないよう気を配ってはいるようだが、石の上に立つ彼女に対して嘲笑を送っている。

 


「成程、今回の巫女はあの両親の娘か……だが、非常によく似ているな。双子か?」

「この情景だけでは判断ができませんね……あっ!」



 時見の鏡の番人が声を上げた瞬間、鏡の中の女性は泉へと一歩踏み出した。その瞬間、アダンは走り出す。


 

「アダン! 女性が飛び込んだ!」



 その言葉を受けて、彼は女神の加護区域である街を抜けて彼女の元へ駆け出し、アダンはエーヴァを助けたのだ。

 女神の名前を修正しました。

誤 ディーデ → 正 デューデ

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