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13、断罪②

 次に目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。

 奥に王城らしきものが見えることから、城下町にある広場だと当たりをつける。

 

 目の前には沢山の人々がおり、彼らは怒声を上げている。

 エーヴァとアダンは二人で顔を見合わせた。

 この先で何かが起きている、と目で話し合った二人は、身体がすり抜ける事を良い事に、喧騒の一番前へと躍り出た。


 そこで見たのは、三人が十字に括られた木に磔られた姿だった。

 三人の髪は薄汚れていて、特にエーヴァに自慢していたリリスの金髪はくすんでいる。

 肌艶もなく、何かの麻袋を服として身に纏っているようなボロボロの姿にエーヴァは驚いた。


 三人は何かを叫んでいるが、周囲が騒々しいため彼らの声はかき消されている。

 

 その騒動を鎮めるかのように、彼らの左側から大きな音が鳴り響く。

 アダン曰く、それはトロンバという楽器らしい。

 

 トロンバの音に驚いた見物人たちは、一斉に静かになる。その隙をついて「静粛に!」と宰相が声を上げた。

 

 

「国王陛下のお言葉である!」


 

 椅子に座っていた陛下は、その場に立ち上がる。

 そして未だに騒々しい三人に絶対零度の視線を送ると、宰相へ目配せする。


 その瞬間、三人の口には布が巻かれた。



「この度、原因不明の病が流行しておる。この件に関して、先日女神デューデ様よりお言葉をいただいた……この病の原因は、ここにいる三人である」



 集まった人々は口々に「どういう事だ」と顔を見合わせる。



「以前女神デューデ様から神託が降りた、と発表した。そして儀式を無事終えた、とも。……だが、それは間違いだった。神託で巫女と指名された娘はリリス、という名前だった。だが! 実際に巫女となったのは、リリスの姉であるエーヴァという娘だった! それにより原因不明の病が発生し、大厄災が引き起こされてしまった、とデューデ様よりお言葉を頂いた。その入れ替わりを実行したのが、この三名である。この諸悪の根源であるこの三名を、国家反逆罪として極刑とする」


 

 その言葉に地を震わすような声が上がる。

 声量に身震いしたのが、磔になっている三名だ。


 観衆全員が彼らの敵に回り……怒りの視線が彼らへと注がれる。

 その恐怖に三人とも顔が青褪め、リリスに至っては足元に水溜りができていた。


 陛下は椅子に座り、その言葉を引き継いだのは宰相だった。


 

「この者たちは二日後に火炙りで処刑とする。その前に……ここへと晒しておく。この者たちは犯罪者だ。逃す、殺す、以外の何をしてもかまわん。では、また二日後に」



 そう言うと、王侯貴族たちはその場から立ち去る。

 その後すぐに三人に向かって罵声が飛び交う。

 

 そして途中から石が投げられるようになり、最終的に火炙りとなった際は、顔が投げられた石のせいでパンパンに腫れていた。


 彼らは二日後火炙りの刑を執行され、その火は彼らが燃え尽きるまで二日間燃え続けた。

 それを見届けたエーヴァはアダンの手の温もりを感じながら目を閉じた。

 



 

「その後毒霧が弱まるまで時間がかかったよ。と言っても一年位だけどね。やっと地上は人が住めるところまで回復したんだ。もう人選は終わっているから、あとは君たちだけだよぉ」


 

 セファーの声でエーヴァは目を覚ます。

 隣にはベッドに座り彼女の手を握っているアダンがいた。

 


「エーヴァ、もう大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です」



 スッキリした表情をしているエーヴァにアダンは微笑む。



「そろそろ地上へとセファーが送り届けてくれるらしい」

「エーヴァちゃんの恐怖も無くなった事だし〜。もう大丈夫だよねぇ?」

「はい」



 エーヴァとアダンはセファーの案内で歩いていく。

 たどり着いたのは教会内にある礼拝堂。普段であれば椅子が等間隔に置かれているのだが、今は端へと寄せられている。



「これが魔法陣になっているんだよぉ。これを使えば、僕だけでも地上へと送る事ができるからねぇ」



 エーヴァは既に魔法陣の中にいる人たちを見つめる。老若男女様々なメンバーだ。



「……地上に行ったら、この街で住んでいた記憶はなくなり、違う記憶が埋め込まれる。だから、僕とはここでお別れだ……二人に会えて楽しかったよ、アダン、エーヴァ」

「こちらこそありがとう」

「セファーさん、私の背中を押してくれてありがとう」

「いいよぉ、これが僕の仕事だからね。またね」



 セファーはその言葉を最後に、小声で何かを呟いた。それと同時に床から発せられた光が周囲を取り囲む。

 彼の姿が光に包まれて見えなくなる前に、セファーは何かを叫んだ。

 

 既に彼の声は聞こえなかったが、アダンとエーヴァは彼の言葉を理解した。

 そのまま二人は光に包まれ、光が無くなった頃には全ての人間がその場からいなくなっていたのだった。




 ――気がつくと泉のほとりにいた。

 エーヴァはなんとなく、見た事があるような場所だと思ったが、記憶を辿っても当てはまるものはないようだ。


 船に乗ってやっと人のいない地に辿り着いた。

 途中で船が難破し、目が覚めたら砂浜で倒れていたエーヴァたち。

 水と食料を求めてここまで来たが、水は確保できそうだ。


 ここから全員で助け合って生きていかなくてはならない。


 生きている幸せを感じたエーヴァは隣に立っていた最愛の人(アダン)と笑い合う。その瞬間、湖が光り輝いた。

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