悪役令嬢は提案する
「で。まずはお嬢ちゃんの取り引きの内容を教えてくれ」
デュランが優秀だと思う理由の一つに切り替えの早さがある。
決めたからには客としてちゃんと扱うということだろう。
「私はあなたの欲しい情報を持っていますわ。その情報をお渡しする代わりに、今後私が望んだらいつでも情報提供と情報操作をしていただきたいの」
「それはまた随分欲張りな内容だな」
「そうかしら。たとえこの条件を呑んででもあなたは私の持つ情報が欲しいのではなくて?」
「お嬢ちゃんの情報が正しいという保証は無いだろう?」
まぁたしかに。
ここで疑いもせずに信じられたら、それはそれでギルドの情報の精度が心配だ。
「おっしゃることはもっともだわ。ではこうしたらどうかしら。私はあなたの望む情報を持っている、そのことが証明できたらあなたは私の希望を叶える」
どう?と小首をかしげて言ってみる。
美少女の上目遣いのお願いの効果はいかに。
「証明の方法を聞かなければ何とも言えないが…。それに情報提供はまだしも、情報操作は内容によっては頷けない。無条件にお嬢ちゃんの希望通りに情報操作をすれば他の客に対するこちらの信用にも関わってくるからな」
うーん。
効果があったかどうかはわからないわね。
「そうね、では情報操作に関しては、私に不利益になるものに限り、という条件をつけるのはいかが?」
「不利益になるものに限りというのに加えて、こちらでの検討を考慮した上でとつけてもらおう。お嬢ちゃんの希望は最大限考慮するが、どうしても頷けないものに関してはこちらの意見も加味してもらいたい」
無条件にならないのはちょっと気になるところではあるけれど…。
でも疑いもせずにこの条件を頷かれるよりいいのかも?
それだけ有能と思うべきか。
「わかりましたわ。ではそれで」
「じゃあ、まずはお嬢ちゃんの持っている情報を教えてもらおう」
デュランが話をまとめようとしたところで気づく。
いけない、もう一つ大事な取り引きがあったんだった。
「お待ちになって。取り引き内容はもう一つありますの」
「なんだって?」
デュランにしてみれば既に破格の取り引きだったのだろう。
その顔にはこれ以上何を望むのかと書かれている。
「あら嫌ですわ。あなたにとって私の持っている情報はそれだけ重要なものでしょう?」
苦虫を噛み潰した顔ってこういう顔のことを言うのかしら。
デュランの表情を観察しながら思う。
まぁ、たくさん望みすぎかなと思わないでもない。
でもとりあえず今の私にはここにツテを作るのが一番手っ取り早い方法なのだ。
なんといっても時間が無いので。
「もう一つの取り引き内容に移ってもよろしいかしら?」
だから容赦せずに続ける。
もちろん、笑顔はオプションでつけたわよ。
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