悪役令嬢は入学する
とうとうこの日がきた。
オルコット学園の入学日である。
とりあえずこの3ヶ月間でやれることは思いつく限りすべてやったし、これからの1年間がどうなるのか、勝負はこれからなわけだけど…。
ここにきて気づいてしまった。
私、ぼっちだわぁ。
なんと、エレナには友だちと呼べる相手がいなかったのである。
考えてみれば当たり前だ。
幼少期に王太子の婚約者になり、その後は王城に通ってひたすら王太子妃になるための勉強、勉強が一区切りついたら今度は公務に駆り出されて日々を忙殺されるという、子どもにあるまじき生活をしていたのだから。
他の貴族令嬢がお茶会などを開いて交友関係を築いていても、そこに参加するだけの時間が無かった。
王太子妃になるのであれば貴族社会での立ち位置も重要なので、普通に考えれば令嬢同士の交流にも参加した方が良いに決まっているが、なんといっても王太子が無能だったせいでしわ寄せがすべてエレナにきていた。
えええ…友だち…と呼んでもいいのかは微妙だけど、いや、あえて言おう。
友だちはティミード家のマリー嬢だけである!
…言っていて虚しいわ。
マリー嬢にとって私は弱みを握っている脅迫者のようなものだし。
それにしても、エレナはどれだけ人生を搾取されていることか。
決めたわ。
ここで宣言しよう。
私は学園で友だちを作る!
「お嬢さま、変な行動を取ると悪目立ちしてますます友だちができなくなりますよ」
こころの中で胸を張って宣言していたら、横からダグラスの突っ込みが入った。
ダグラス、なぜ私に友だちがいないことを知っているのだ。
そしていい加減心を読むのはやめてちょうだい。
基本的に学園内ではすべての生徒は平等とされている。
自分のことは自分でやる姿勢を基本としているため、侍女や護衛も連れてくることはできない。
しかし、とはいっても貴族の学園である。
高位貴族というのは親が重要な地位についていればいるほど、その子どもはさまざまな理由で狙われる。
そのため、ごく一部の貴族に関しては護衛の帯同が許されていた。
当然、公爵令嬢であり王太子の婚約者でもあるエレナには護衛が許可されている。
そこでダグラスだ。
彼は学園内でもエレナの護衛にあたるらしい。
まぁ、ダグラスも攻略対象だから学園内にいる必要があるもんね。
ぼっちの私は仕方ないので一人でクラスに向かって歩く。
そういえば、前世でも私は友だちが少なかった。
というのも、奨学金を維持するために勉強の手は抜けなかったし、大学では生活費も稼ぐ必要があったからとにかく時間が無かったからだ。
あれ?
考えてみたらエレナはお金持ちの貴族令嬢で、生活のことは何も気にすることは無いわけで…。
私、友だちを作るだけでなく、学校生活を楽しめるんじゃない?
よし。
友だち100人とは言わない。
何人かでいいから仲の良い友だちを作って、イベントごとも参加して、学校生活を楽しむぞ!
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