表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/205

悪役令嬢は現状を把握する

体調がすぐれないことを理由に部屋で少し遅めの朝食を済ませた後、私は休むからと人払いをしてソファに腰掛けた。

メアリが入れてくれた紅茶をお供に頭の中の整理と今後の対策に勤しむ。


そもそも『黄昏の時にあなたを想う』は典型的な悪役令嬢断罪系の話だった。

ヒロインは平民として育ちながらも男爵家の娘であったことがわかる少女であり、その少女と身分違いの恋に落ち、後に添い遂げることになるのがこのグラント国の王太子であるライアンだ。


そしてご多分に漏れず、二人の邪魔をして恋のスパイスをふりかけた後断罪されて退場するのがライアンの婚約者でもある悪役令嬢のエレナ。


そう、つまり私である。


いわばなんの捻りもない話ではあるが、わかりやすい話というのは往々にして支持されやすい。


物語は男爵家の娘であることがわかったヒロインがオルコット学園へ入学し、さまざまなイベントののちに年度最後の舞踏会で悪役令嬢を断罪して王太子の婚約者におさまるまでが描かれている。


美麗なイラストも相まって爆発的な人気を博し、次はアニメ化予定というニュースを聞いたところまでは覚えていた。


現在エレナは14歳。

オルコット学園は15歳から18歳までの貴族令息と令嬢が通う学園であることを考えても、今度の4月から一年間が物語の舞台となることは必須だった。


つまり、対策を立てようにもあと3ヶ月しか時間が無い。


「ううう…」


詰んだ…。


覚えている限りのことを書き出したノートを前に、私は美少女にあるまじきうめき声を上げながら項垂れた。


3ヶ月。

3ヶ月かぁ。


いやいや、項垂れている場合ではない。

断罪されたら先はないのだから。


ヒロインがどのヒーローのルートを選ぶかで多少の違いはあるが、断罪後のエレナは良くて修道院行き、悪ければ死罪だ。


えええ…。

人を殺したわけでも誰かに傷を負わせたわけでもないのに死罪。


現代日本に暮らしていた前世の記憶がある身としては信じられない罪状だ。


最悪国を追放されるとかならいいんだけど。

貴族令嬢の経験しかなければ難しいだろうが、今の私ならなんとか暮らしていけそうな気がするし。


それともいっそのことそうなるように目指す?

いやいや、なんで何も悪いことをしていないのに断罪されないといけないのよ。


…無理。

無理無理。

納得できない。


ああ。

何だかムカついてきたわ。

やりたい放題のやつらをそのままにしておいてもいいのか、という気持ちが拭えなかった。


とりあえず対策を練ろう。

まずはできることをやり切ってから、それでもダメなら次善策を考えるしかない。


そう心を落ち着かせると、私はノートを閉じた。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


少しでも続きが気になりましたら、ブックマーク登録や評価などしていただけるととても励みになります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ